父の再婚相手の連れ子。相続権が発生するのはどんなとき?
配信日: 2022.02.06
近年では、婚姻状況で見ると離婚や再婚が多くなってきています。再婚では当事者2人のどちらかに連れ子がいれば相続人となる方が増えて、相続でもめる原因にもなると思ってしまいますが、連れ子に相続権が発生するのは一体どんなときなのでしょうか。
執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)
夢実現プランナー
2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている
1960年からの婚姻の状況
厚生労働省による「人口動態調査」(2020年)の結果を見てみると、婚姻件数は減少傾向にあり、初婚同士の婚姻件数も減少しています。しかし、夫婦ともに再婚か、どちらかが再婚での婚姻件数は、2020年は減少しているものの、1960年からの件数で見ると増加傾向にあります。
※厚生労働省 「人口動態調査」より筆者作成
※左側の単位(件)は棒グラフ、右側の単位(件)折れ線グラフに対応するものです。
上記の棒グラフの「夫婦とも再婚又はどちらか一方が再婚」というケースでは、どちらも単身という婚姻もあると思いますが、どちらかに子ども(連れ子)がいることもあるでしょう。
年代別でも連れ子が関係してくる
前項では夫と妻のどちらも、またはどちらか一方が再婚というケースが増えているというデータを確認しましたが、再婚して連れ子に相続権が発生するのは、年齢にもよって変わってきます。
以下のグラフは同じく人口動態統計より、結婚生活に入ったときの年齢別に見た再婚の夫の年次別婚姻件数になります。
※厚生労働省 「人口動態調査」より筆者作成
※左側の単位(件)は棒グラフ、右側の単位(件)折れ線グラフに対応するものです。
この統計からは、全体的に30代の再婚が多いことが見て取れますが、次いで40代、2000年以降では50代も多くなっています。
30代の再婚の場合は、まだ子どもがいないケースもあるでしょうし、子どもがいる場合でも未成年である割合が高いと思います。逆に50代や60代での再婚の場合は、子どもがいても成人している割合が増えるのではないでしょうか。
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相続権が発生するケース1
これまで現在の再婚の状況を見てきましたが、再婚したときの連れ子は自動的に相続人になる訳ではありません。再婚した夫婦は戸籍上の配偶者として双方が相続権を有しますが、配偶者以外の相続人は亡くなった人の子どもや親兄弟といった血族となります。
例えば、再婚同士の夫婦にお互いに連れ子がいる場合で夫が亡くなると、再婚相手である妻(配偶者)と亡くなった夫の子どもには相続権が発生しますが、配偶者の子どもには相続権はありません。よくあるケースとして、妻の連れ子が未成年で、再婚相手の夫と養子縁組を行った場合には相続権が連れ子にも発生します。
また、前述の50代や60代の再婚で子どもが成人している、または独立していると、養子縁組をしないというケースも多いのではないでしょうか。こういった場合は、再婚相手の子どもには相続権は発生しません。
ただし配偶者には相続権があり、相続財産の2分の1、または1億6000万円のいずれか少ない額を相続することができますので、この相続財産を連れ子が二次相続する権利は発生します。
相続権が発生するケース2
連れ子に相続権が発生する1つのケースとしては、前述のように再婚相手と養子縁組をすればいいことになりますが、養子縁組をしない場合でも相続権を与えることは可能です。
正確には相続ではなく、遺贈ということになりますが、法的な効力が認められるように遺言書を残しておくことです。遺言書の場合は、「自筆証書遺言書」や「公正証書遺言書」に遺贈させたい財産を記載しておけばいいのですが、実子がいる場合、遺留分という法定相続人に保障された相続分を侵害しないようにすることも大切です。
まとめ
再婚した場合の相続については、再婚時の子どもの年齢や状況で相続権が発生しない場合もあります。再婚相手の子どもに財産を相続させたいときには、養子縁組をするか、遺言書によって財産を残すことも可能です。
財産を残したい相手に確実に相続させるためには、早めに対策を打っておくことも必要でしょう。
出典
厚生労働省 「人口動態調査」
内閣府男女共同参画局 「結婚と家族をめぐる基礎データ」
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー