更新日: 2022.02.09 相続

認知症の親が作成した遺言状。納得いかないけど諦めるしかないの?

執筆者 : 新井智美

認知症の親が作成した遺言状。納得いかないけど諦めるしかないの?
遺言によって相続財産を被相続人の思うとおりに分けることができますが、遺言にはいくつかの種類があり、さらにそれが有効とみなされるための要件があります。では、認知症の親が作成した遺言に効力はあるのでしょうか?
 
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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遺言能力とは

自筆証書遺言で、かつ親が認知症だった場合、その遺言が有効かどうかは、遺言書を作成した時点で遺言作成のための適切な能力があったかどうかで決まります。この能力のことを遺言能力といいますが、その判断基準は「遺言によって相続人にどのような影響が及ぶか」ということが認識できていればよいことになっています。
 
認知症などで後見人がついている場合、その行動内容によっては制限を受けますが、遺言については制限対象外となっています。したがって、認知症の親が作成した遺言は一概に無効であるとは言い切れません。
 

認知症の親が作成した遺言書が無効になるケースとは?

では、どのようなケースが無効と判断されるのでしょうか。
 

■意思能力

認知症の親が作成した遺言書が有効と認められるためには、最低限の意思能力が必要とされています。この最低限の意思能力が認められない場合、その遺言書は無効と判断されます。
 

■事実との相反性および合法性

遺言書にかかれている相続人の名前が異なる、もしくは存在していない財産や人物についての記載など、事実と異なる内容が記載されていた場合、その遺言書は無効とみなされます。また、遺言書の内容が公序良俗に違反するような内容だった場合も、その部分もしくは全部について無効とみなされます。
 

■その他

その遺言書がそもそも本来の要件を満たしていない場合は、当然無効となります。例えば、子どもが代筆して作成したものや、自筆の署名がないなど、自筆証書遺言として成立するための要件が1つでも欠けていた場合は有効な遺言書としては認められません。
 

医師の判断だけで無効になることはない

認知症と認められるためには医師の診断が必要ですが、医師から認知症と判断されたからといって遺言書が無効となるわけではありません。あくまでも判断基準は遺言書が作成された時点の意思能力です。
 
また、その遺言書の内容から判断することもあります。意思能力の程度からみて、あまりにも複雑な内容だった場合は無効となるケースがある反面、簡潔な内容であれば認められる可能性もあります。
 

■遺言が有効かどうかの判断基準

認知症の親が作成した遺言書が有効かどうかは、作成時の意思能力と、遺言書の内容によって判断されます。
 
内容については、複雑なものではないかどうかを判断すると同時に、合理的なものか、不自然な点はないかなどもあわせて総合的に判断します。意思能力については認知症の判断によく利用される「長谷川式簡易知能評価スケール」を用いて判断するケースが多く見られます。
 

最終的には裁判所の判断を仰ぐ必要も

相続人同士での意見がまとまらず、遺言の効力を最終的に判断するためには、裁判所に依頼する必要があります。
 

■調停

その遺言書が有効か無効かを判断する際に最初に申し立てるもので、家庭裁判所に仲介を願い出ます。相続人同士で遺言書が有効か無効かの意見が分かれる場合、相続人と家庭裁判所の調停委員とで話し合い、それでもまとまらない場合は、次の段階(訴訟)に移ります。
 

■訴訟

訴訟の段階になると、管轄は地方裁判所です。無効であると主張する人は、その証拠を明らかにする必要がありますが、無効と認められれば、遺言書は最初からなかったことになります。そして、最終的にどのような割合で分割するかを相続人同士で話し合うことになります。
 

まとめ

認知症の親が作成した遺言の有効性が問われるのは自筆証書遺言のケースが大半です。したがって、遺言書を作成するにあたっては、必ず自分の意思能力がはっきりしている時点で行う必要があります。さらに遺言の効力を高めるためにも、公正証書遺言で行っておくとよいでしょう。
 
また、親が認知症と診断された場合は、日記で日々の状態を記録しておくほか、医師の診断書や検査結果を保存しておくことを心がけておきましょう。そうすることで、もし、認知症の状態で遺言書が作成されたとしても、その作成時の意思能力がどうだったかを日記で知ることができますし、内容によっては最終的に有効と認められる可能性もあります。
 
遺言書の内容が有効か無効かについて調停や訴訟に発展すると、時間がかかりいつまでたっても遺産分割協議に進めないという事態を招きかねません。さらに裁判費用も考慮する必要があるでしょう。認知症の問題は、遺言だけでなくさまざまな分野にも影響することからも、そうなった場合を想定し、早めに行動することが大切です。
 
出典
(※)e-Govポータル
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員 

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