みなし相続財産って何? 本来の相続財産とどう違うの?
配信日: 2022.03.30 更新日: 2022.03.31
今回はみなし相続財産について分かりやすく説明します。
執筆者:村川賢(むらかわ まさる)
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)
早稲田大学大学院を卒業して精密機器メーカーに勤務。50歳を過ぎて勤務先のセカンドライフ研修を受講。これをきっかけにお金の知識が身についてない自分に気付き、在職中にファイナンシャルプランナーの資格を取得。30年間勤務した会社を早期退職してFPとして独立。「お金の知識が重要であることを多くの人に伝え、お金で損をしない少しでも得する知識を広めよう」という使命感から、実務家のファイナンシャルプランナーとして活動中。現在は年間数十件を越す大手企業の労働組合員向けセミナー、およびライフプランを中心とした個別相談で多くのクライアントに貢献している。
みなし相続財産とは
「みなし相続財産」とは、被相続人が生前から持っている本来の相続財産とは異なり、亡くなることで初めて発生する財産や権利のことで、生命保険金や死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金などがあります。
みなし相続財産の特徴としては、相続税法上では相続財産の一部と見なされ、非課税枠(500万円×法定相続人の数)を超えた分について相続税がかかるのですが、民法上では受取人固有の財産と見なされ、遺産分割協議の対象にはならないことです。
注意点は、相続人でない人が被相続人の生命保険金や死亡退職金を受け取ったときは、非課税枠は適用されません。非課税枠の計算上では、法定相続人の数に相続放棄をした人も含めます。また、相続放棄した人でもみなし相続財産である生命保険金や死亡退職金は受け取ることができます。
みなし相続財産には他にどんなものがあるの?
みなし相続財産には、生命保険金や死亡退職金の他に、定期金に関しての権利や生命保険契約に関しての権利があります。
●定期金の権利……定期金とは一定期間に定期的に受け取るお金で、その受け取る権利を定期金の権利と言います。
例えば、被相続人が個人年金保険で年金として年間120万円を受け取っていたが、亡くなって相続人が代わりにその年金を受け取ることになった場合などがあてはまります。定期金の権利は、相続税の課税対象となります。また、年金の給付が開始されていなくても課税対象となるので注意が必要です。国民年金や厚生年金はみなし相続財産になりません。
●生命保険契約に関しての権利……生命保険契約に関しての権利とは、自分が契約者で被相続人が保険料を払っていた生命保険で、解約して解約返戻金を受け取ったり、満期保険金を受け取ったりした場合です。これらの解約返戻金や満期保険金は相続税の課税対象となります。
例えば、自分が契約していた生命保険で保険料1000万円を被相続人に負担してもらっていたが、被相続人が亡くなったので、その生命保険を解約して800万円を受け取った場合などがあてはまります。
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終身保険を使った相続対策とは
相続対策として、終身保険を使ったものがありますので、二つ紹介します。
●保険金が非課税限度額内となる一時払い終身保険に加入することで、課税対象となる相続財産を減らすことができます。
例えば、妻と子二人の合わせて三人が相続人である場合、500万円×3人=1500万円の一時払い終身保険に加入して、1500万円を保険料として支払うことで相続財産を減らしておきます。受取人を妻などの相続人にしておけば、亡くなったときに相続人が受け取る1500万円は相続税の課税対象となりません。(注:一時払い終身保険には、かなり高齢でも健康告知もなく加入できるものがあります)
●亡くなったときに、ある特定の相続人にお金を渡したい場合、その相続人を受取人とする終身保険に加入します。被相続人が亡くなると、受け取った保険金はその相続人固有の財産となるので、遺産分割協議の対象となりません。
例えば、長男家族と同居している母親が、長男に自分の家を継がせたいが、家以外に分ける財産が少ないとします。そのような場合には、長男を受取人とする終身保険に加入しておきます。そうすることで、母親が亡くなり、相続人の間で遺産分割協議を行う際に、長男は家を継ぐ代わりに他の相続人に代償金を支払う必要が出てきたとしても、受け取った保険金を使うことができます。
終わりに
「みなし相続財産」とは、聞きなれない言葉かもしれませんが、その種類や仕組みを知ることで、相続税を節約したり特定の相続人に有利な遺贈もできます。みなし相続財産は他にもたくさんあるので、詳しくは税理士や弁護士などの専門家に相談してみてください。
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)