更新日: 2022.04.07 その他相続
家は長男が相続?民法と照らし合わせ家制度を解説
ほかにもお子さまはいるのですが、家は長男に相続し、ほかの財産を長男以外の子どもたちに、と考えられているケースもあります。
現在の民法では、子どもの法定相続割合は同じなのですが、筆者のご相談者さまには「家を長男に相続する」という昔の家制度の名残ともいえる考えをお持ちの方がいらっしゃいます。
今回は、家制度とはどのようなものだったのかを確認し、今の民法と照らし合わせていきたいと思います。
執筆者:藤井亜也(ふじい あや)
株式会社COCO PLAN (ココプラン) 代表取締役社長
教育カウンセラー、派遣コーディネーター、秘書等、様々な職種を経験した後、マネーセンスを磨きたいと思い、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。
「お金の不安を解決するサポートがしたい」、「夢の実現を応援したい」という想いからCOCO PLANを設立。
独立系FPとして個別相談、マネーセミナー、執筆業など幅広く活動中。
<保有資格>
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ファイナンシャルプランナー(AFP) 、住宅ローンアドバイザー、プライベートバンカー、相続診断士、日本心理学会認定心理士、生理人類学士、秘書技能検定、日商簿記検定、(産業カウンセラー、心理相談員)
<著書>
「今からはじめる 理想のセカンドライフを叶えるお金の作り方 (女性FPが作ったやさしい教科書)」※2019年1月15日発売予定
家制度とは?
家制度(いえせいど)とは、明治憲法下の民法において規定された日本の家族制度です。明治民法では、戸主権と長男単独相続の家督相続とに支えられた戸主を家長とする制度で、家族制度あるいは家制度と呼ばれていました。
家制度における「家」とは、現在の核家族のような家とは概念が異なります。
「家」は「戸主」と「家族」から構成され、戸主は家の統率者であり、家族は家を構成する者のうち、戸主でない者をいいます。また、1つの家は1つの戸籍に登録されました。
皆さんも田舎へ行った際、「本家」や「分家」などの言葉を聞いたことがあるかもしれません。分家とは、ある家に属する家族がその家から分離して新たに家を設立することをいいます。もともと属していた家は「本家」と呼びます。
家やお墓は戸主が守り、引き継いでいきます。戸主を引き継げるのは原則、長男と決まっていました。男の子が生まれると、跡取りができたと喜んでいたのは、この家制度が背景にあったのです。
家制度は1947年に廃止されましたが、1947年は和暦では昭和22年となります。昭和22年生まれの方は現在75歳、つまり75歳以上の方にとって家制度は身近なものであり、今もなお、その習慣や価値観は根強く残っているのかもしれません。
相続人の範囲と法定相続分
現在の民法では、相続人の範囲と法定相続分が定められています。死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は次の順序で配偶者とともに相続人になります。
第1順位:死亡した人の子ども
第2順位:死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
第3順位:死亡した人の兄弟姉妹
法定相続分は以下のとおりです。
・配偶者と子どもが相続人である場合
配偶者2分の1 子ども(2人以上のときは全員で)2分の1
・配偶者と直系尊属が相続人である場合
配偶者3分の2 直系尊属(2人以上のときは全員で)3分の1
・配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者4分の3 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)4分の1
例えば、死亡した人の家族構成が配偶者と子ども2人(A、B)だったとします。法定相続分は配偶者が2分の1、子どもAは4分の1、子どもBは4分の1です。現在の民法では子どもの相続分は長男など関係なく人数で割ることになります。
もちろん、遺言などで相続内容を定めていた場合、この法定相続分よりも遺言が優先されます。
あくまで法定相続分は、遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずしもこの割合で遺産分割をしなければならないというわけではありません。
しかし、遺言で「誰か1人に相続する」といった内容で遺(のこ)された場合、ほかの相続人の生活が困窮してしまう場合もあります。
相続人においては最低限の取り分が決められており、それを遺留分といいます。相続人は、遺留分が侵害されていた場合は、遺留分を侵害した人に対して、遺留分に相当する金銭の支払を請求できます。
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最後に
現在の民法では子ども間での相続割合は同じなのですが、家制度の価値観などがいまだに残っている家庭もあり、そういった家庭では「家は長男に」といった思いは根強い場合があります。
遺言者の思いを尊重しつつも、遺された子ども間でもめごとにならないよう、現在の法定相続分や遺留分に配慮していく必要があります。
新旧の制度を理解し、相続対策を立てていくことで、遺されたご家族が「争続」にならないよう参考にしてほしいと思います。
執筆者:藤井亜也
株式会社COCO PLAN (ココプラン) 代表取締役社長