更新日: 2022.05.02 遺言書

遺贈寄付とは? 相続人以外に遺産を贈り社会貢献する方法を解説

遺贈寄付とは? 相続人以外に遺産を贈り社会貢献する方法を解説
遺贈とは、民法で定められた法定相続人ではない人に遺産を贈ることをいいます。
 
これに対し遺贈寄付とは、社会貢献などの目的で非営利組織(NPO)や大学などに遺贈することをいいます。
 
本記事では、遺贈寄付を行う際の手続きや税金について説明します。
宮本建一

執筆者:宮本建一(みやもと けんいち)

2級ファイナンシャルプランニング技能士

遺贈寄付とは

遺贈寄付と一般の相続とは、どのような違いがあるのでしょうか。
 

遺贈寄付とは社会貢献などの目的でNPOや大学などに遺贈すること

遺贈寄付とは、亡くなられた方の遺産の一部、または全部を社会貢献などの目的でNPOや大学などに遺贈することをいいます。
 

相続と遺贈との違いは法定相続人ではない人に遺産を贈るかどうか

相続とは、亡くなった人の財産(債権、債務)を特定の人に引き継ぐことです。
 
特定の人とは、民法で定められた法定相続人を意味し、主に親、子、配偶者、兄弟姉妹を指します。
 
遺贈とは、遺言による贈与のことをいい、民法964条では「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」と定められています。
 
遺贈は贈与の一種ではありますが、「遺留分を侵害することはできない」などのルールがあり、法的性質が通常の贈与とはやや異なります。
 

遺贈についての意識度は

一般社団法人日本財団が全国の60代、70代の男女2000名を対象に 2021年1月5日に示した「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査」によりますと、終活について、半数以上の58.2%の人が興味を持っています。
 
図表1

興味があり やや興味がある あまり興味がない 全く興味がない 合計
17.0% 41.2% 28.6% 13.3% 100%

日本財団 遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査 より筆者作成。
 
・遺言書でできることを知っているかの認知
 
図表2

社会貢献団体などへ寄付すること 家族以外の人へ財産を託す(遺贈する)こと 生命保険の受け取り人の指定・変更 未成年後見人の指定、後見監督人の指定 婚外子の認知
知っていた 61.6% 55.7% 49.3% 42.1% 40.8%
知らなかった 38.5% 44.3% 50.8% 57.9% 59.3%

日本財団 遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査 より筆者作成。
 
遺言書で「社会貢献団体などへ寄付すること」(61.6%)、「家族以外の人へ財産を託す(遺贈する)こと」(55.7%)については、半数以上の人が知っていました。
 
・遺言書準備状況
 
図表3

既に公正証書遺言書を作成している 1.3%
既に自筆証書遺言書を作成している 2.1%
まだ遺言書は作成していないが、近いうちに作成しようと思っている 13.9%
まだ遺言書は作成していないが、エンディングノートは作成した 4.7%
まだ遺言書は作成しておらず、しばらく作成するつもりはない 35.4%
遺言書は作成しておらず、今後も作成しない 42.7%

日本財団 遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査 より筆者作成。
 
実際に遺言書を作成している人は3.4%で、作成予定または意向のない人が78.1%もいる結果となっています。
 
遺贈寄付をするためには遺言書が必要であることは認識しているものの、遺言書の作成を考えていないことが伺えます。
 

遺贈寄付を行うには

遺贈寄付を行う順序は、専門家と相談して遺贈寄付する団体を検討し、遺言書の作成、遺言の執行となります。
 

専門家と相談

今まで生きてきた人生を振り返り、どのような団体に遺贈するか、また、遺言書作成について家族はもちろん、弁護士や司法書士などの専門家に相談します。
 

遺贈寄付する団体の情報収集

ひとつの団体にとらわれず、さまざまな団体を検討することをおすすめします。
 
問い合わせることはもちろんですが、実際にボランティアやイベントなどに参加することも、遺贈寄付先を決める重要な要素のひとつです。
 

財産配分の検討

次に保有財産を精査し、相続人、団体への寄付といった財産の配分を考えます。
 
寄付を第一に考えるのでなく、家族を優先して財産を配分することで、円満な相続が行われます。
 

遺言書の作成

専門家のチェックを受けて遺言書を作成します。
 
遺言書については、自筆証書遺言や公正証書遺言などがありますので、作成方法を相談されると同時に、誰を遺言執行者にするかについても相談されることをおすすめします。
 

遺言の執行、遺贈寄付

遺言者が亡くなると遺言執行者が遺言書を開示し、相続、遺贈の手続きを行います。
同時に遺贈団体に寄付が行われます。
 

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遺贈寄付にかかる税金等は?

相続とは異なる遺贈寄付には、どのような税金がかかるのでしょうか。
 
寄付先によっては、非課税となる場合と課税となる場合があります。ただし、いずれの場合も相続税の申告期限までに寄付した場合に限ります。
 

法人に寄付の場合、原則非課税

特例として次の3点があげられます。
 
・国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人
ここでいう「特定の法人」とは、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる公益を目的とする事業を行う特定の法人をいい、独立行政法人や社会福祉法人などに限定され、寄付の時点ですでに設立されている必要があります。
 
・認定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した場合
認定NPO法人とは、特定非営利活動促進法で、一定の基準を満たすものとして、所轄庁(都道府県知事または指定都市の長)の認定を受けたものです。
 
・特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合
受託者が信託会社で、公益信託が、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められるなど、一定のものである場合です。
 

特例の適用除外

ただし、例外もあります。主に次の3点です。

●寄付を受けた日から2年を経過した日までに特定の公益法人、認定NPO法人、特定の公益信託に該当しなくなった場合
●特定の公益法人、または認定NPO法人が、公益を目的とする事業の用、または特定非営利活動に係る事業の用に財産を使っていない場合
●寄付または支出した人、あるいは寄付または支出した人の親族などの相続税、または贈与税の負担が、結果的に不当に減少することとなった場合

 

まとめ

遺贈寄付の特徴について説明しました
 
遺贈寄付は家族でなく世間への最期の社会貢献です。寄付する側、される側双方にとって、有意義な寄付であるようにしたいものです。
 

出典

e-Gov法令検索 民法
日本財団 遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査要約版 2021年1月5日
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき
 
執筆者:宮本建一
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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