更新日: 2022.05.17 相続税
親が所有している賃貸アパート。相続の際に気をつけることは?
例えば、所有者である親がその賃貸アパートを残したまま亡くなった場合、基本的には子どもが相続しますが、その際に気をつけるべきこととはどのようなことなのでしょうか?
そもそも、賃貸アパートの所有が相続税の対策になるのかどうか、などもあわせて解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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賃貸アパートは相続税対策になる
単に不動産を保有しておくよりも、それを投資物件として賃貸に出し、収入を得ることは相続税対策になる面があります。実際、相続税対策を目的とし、賃貸アパートを所有している人もいます。
■賃貸アパートが相続税対策になる仕組み
まず、財産を現金ではなく不動産で持つこと自体が、相続税対策です。なぜなら、相続税額の算出の際、相続財産の評価額によって、その額が算出されるからです。
現金はそのままの額が評価額ですが、不動産の場合は以下のとおり評価額が減額されるため、そこにかかる相続税額も圧縮(少なく)されることになります。
土地……公示価格の約80%
建物……固定資産税評価額
さらに、貸し付けの目的で保有していた土地の場合で、小規模宅地(200平方メートルまでの部分)については、50%の減額率が適用されます。建物の評価額は貸し付け目的であろうと自宅用であろうと、評価額は変わりません。
しかし、総じて建物よりも土地の評価額の方が高いケースが多いため、賃貸アパートなどを立てて保有しておく方が、相続税対策になるというわけです。
賃貸アパートを相続する際の注意点
相続税対策として賃貸アパートを経営していたとしても、それを相続するにあたっては注意すべき点があります。
■小規模宅地の減額率(特例)
上記で、小規模宅地の場合、それを貸し付けていると、50%の減額率が適用される特例がありますが、これについては、賃貸経営を相続が発生する前3年以内に始めた場合は適用外となります。
そのため、賃貸アパートを購入し、経営を始めたとしても、それから3年以内に亡くなった場合は特例が使えず、相続税対策の恩恵を最大限受けることはできない点に注意が必要です。
■ローン残高がある場合はそれも相続の対象となる
相続財産には、プラスの財産もあればマイナスの財産も存在します。亡くなった人の債務は、そのまま相続人に引き継がれます。ローン残債の額によっては、相続したくないという人も出てくるでしょう。その場合は、相続放棄、もしくは限定承認の手続きを行わなければなりません。
相続放棄とは、プラスの財産、そしてマイナスの財産すべての相続を放棄することで、相続人が1人で家庭裁判所に申し立てることで行うことができます。マイナスの財産がプラスの財産を上回る際に多く用いられます。
一方で、限定承認は、プラスの財産の範囲内しかマイナスの財産を相続しない方法で、ほかの相続人全員の同意が必要です。
また、相続放棄、そして限定承認は相続が開始されてから3ヶ月以内に家庭裁判所にて手続きを行う必要があり、それを過ぎてしまうと、相続財産すべてを相続する意味の単純承認を選択したとみなされるため、注意しておきましょう。
■賃貸契約を途中解約することが難しい
賃貸アパートにおける賃貸借契約の内容は、それを相続した人にそのまま引き継がれます。人によっては、賃借人に退去してもらい、売却することを考えることもあるでしょう。
しかし、現在の民法の契約では、貸主よりも借り主を守る借地借家法が適用されるため、相続があったからといって、それを理由に退去を求めることは難しいでしょう。
ただし、契約期間が決まっている「定期契約」であれば、契約期間が終了した後は退去を求めることができます。相続の際には、賃貸アパートの契約がどのようになっているのかを確認することが大切です。
■準確定申告の必要がある
亡くなった方がその賃貸アパート経営で収入を得ていたならば、亡くなった日までの収入を確定申告しなければなりません。これを「準確定申告」といい、亡くなった日の翌日から4ヶ月までに行わなければならないことになっています。
そのためにはそれまで母親がどのように確定申告をしていたのか(税理士に依頼していたのか、自分で行っていたのか)で対応が異なります。
税理士に依頼していたのであれば、そのまま依頼することで対応できますが、自分で行っていたならば、その作業を相続人が行わなければなりません。
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まとめ
賃貸アパートを相続する際には、相続に関する手続きや、その後の賃貸アパートをどのように経営するかを考えなければなりません。
特に、その後の賃貸アパート経営を引き継ぐとなれば、契約内容を確認するほか、敷金を預かっている場合は、その額なども把握する必要があります。
自宅を相続するケースとは扱いが異なり、考えなければならないことや手続きも多くなりますので、親が賃貸アパートを経営している場合は、相続について事前にきちんと話し合っておくことが大切です。
出典
(※)国税庁 財産を相続したとき
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員