更新日: 2022.05.18 相続税
相続税の対象者は相続人の1割弱!? 突然の相続税納税、延納や物納はできる?
具体的には、相続財産が「3000万円+600万円×相続人」を超えると相続税が発生します。相続税の対象は、土地、建物、現金および預金、保険、有価証券など、金銭に換算ができるものすべてが対象となります。このすべてを加算した金額が上記の「3000万円+600万円×相続人」を超えると納税義務が発生します。
特に都市部に自宅を保有している方などは、自宅の土地の評価だけで多くの金額を占めることもあり、注意が必要です。
執筆者:高畑智子(たかばたけ ともこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者
相続税対象の割合は?
令和2年の相続人のうち、相続税の課税対象となったのは相続が発生した件数の8.8%(※1)でした。令和元年が8.3%ですので、8~9%の人が相続税の対象です。8~9%と聞くと少ないと思う人もいらっしゃるかもしれませんが、いい換えれば、相続をした人のうち1割弱が相続税の対象となります。
平成27年以前は、相続税の控除額が「5000万円+1000万円×相続人」でした。平成27年から控除額が「3000万円+600万円×相続人」に変更になったために、対象者が4%台から約2倍の8%台になりました。
令和2年の相続人1人あたりの課税対象額は1億3619万円で、相続税額は1737万円でした。課税対象額の1億3619万円を高いと見るか安いとみるかは、ご覧になっている人の状況に左右されると思います。
相続財産の金額の推移をみると、大きな割合を占めるのが土地と現預金です。相続財産のうち34.7%を土地が占め、次いで現預金が33.9%を占めており、土地と現預金で68.6%と約7割を占めています。
相続財産の構成比の推移をみると、年々、土地の占める割合が小さくなってきています。これは、土地の評価額が上昇していないせいか、もしくは、相続財産の推移や構成比の占める割合において現預金が増えてきていることから、土地を売却して現金化しているのではないかとも考えられます。
相続税の申告と納付
相続税の申告および納付は、相続があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となっています。
相続税の納付(※2)は現金で一括納付することが原則ですが、納期限までに一括納付が困難な場合は、例外的に延納または物納が認められています。延納と物納にはそれぞれ要件があります。
延納の要件は次のとおりです。
(1)相続税額が10万円を超えていること。
(2)金銭納付を困難とする事由があり、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
(3)期限までに申請書および担保提供関係書類を提出すること。
(4)延納税額に相当する担保を提供すること。
また、延納した場合は延納利子税を払う必要があります。
物納の要件は次のとおりです。
(1)延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。
(2)申請財産が定められた種類の財産であり、かつ、定められた順位によっていること。
(3)納期限までに申請書および物納手続関係書類を提出すること。
(4)物納適格財産であること。
また、物納することができる財産の種類が区分されており、物納できる順位があります。
第1順位は、
(1)国債、地方債、不動産、船舶
(2)不動産のうち物納劣後財産に該当するもの
第2順位は、
(1)社債、株式(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含む)、証券投資信託または貸付信託の受益証券
(2)株式(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含む)のうち物納劣後財産に該当するもの
第3順位は、
動産
となっており、物納後に現金化しやすい順位となっています。
物納に充てることのできる財産は、納付すべき相続税の課税価格の計算の基礎となった相続財産で、その所在が日本国内にあるものに限ります。また、相続時精算課税に係る贈与によって取得した財産は、対象とならないため注意が必要です。
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まとめ
相続は思いがけないタイミングでくるものです。相続に関する話題はデリケートな部分もありますが、日ごろから身内の方と相続に関する話をする機会などを持っていただき、不幸があった場合に相続税の対象になるのか、事前に確認しておくことをお勧めします。
その際に、相続税の納付対象者となるなら、納付するお金をどのように準備するのかなども、事前に相談できるとよいですね。
出典
(※1)国税庁 令和2年分 相続税の申告事績の概要 令和3年12月
(※2)国税庁 3 相続税の納付
執筆者:高畑智子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者