更新日: 2022.05.19 相続税
相続税の非課税財産 ― 公益を目的とする事業に関連するもの
この記事では、前回取り上げた以外の非課税財産について説明していきたいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
非課税財産とは?
相続財産は原則すべてが相続税の対象となりますが、中には相続しても相続税の対象とならないものがあり、それらを非課税財産と呼んでいます。
今回説明するのは非課税財産の中でも、公益を目的とする事業を行う個人が遺産の全部または一部を相続または遺贈した場合などは、その財産については相続税が非課税となるというものです。非課税の対象となるのは公益を目的とする事業のほか、国や地方公共団体への寄付も含まれます。
また、心身障害者扶養共済制度に基づく給付金のように、障害者が恩恵を受けるものについても非課税となっています。以下、具体的に説明していきたいと思います。
公益事業を行う個人が取得した公益事業用財産
宗教・学術・技芸・慈善、その他公益を目的とする事業を行う個人が、相続または遺贈によって取得した財産で、その公益事業の用に供されることが確実なものは、相続税の非課税財産となります。
これは民間公益事業の保護・育成を図ろうという意図があり、公益事業とは次のような事業をいいます。
1. 社会福祉事業、更生保護事業、学校教育法1条による学校(小学校・中学校・高校・大学および幼稚園など)を設置・運営する事業
2. 宗教・慈善・学術その他公益を目的とする事業で、その事業活動により文化の向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業
しかし、本人やその親族、その他特別な関係がある人に、その事業に関して特別の利益を与える場合は、非課税財産から除かれます。
「特別な関係」とは、例えば、公益事業を行う者に対して財産を贈与した者、当該事業を行う者、または贈与者の親族などが、その公益事業にかかる余裕資金を生活資金に利用したり、その施設を居住の用に供している場合が挙げられます。
また、財産を取得した後2年以内に、その公益事業の用に供されない場合は相続税がさかのぼって課税されます。
国、地方公共団体へ贈与した財産
国・地方公共団体に遺産を寄付すれば、その遺産には相続税はかかりません。主な要件は、取得した財産を相続税の申告書の提出期限までに寄付することです。
特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
公益信託とは、宗教・学術・技芸・慈善などの公益的な活動を支援する信託をいいます。
具体的には、学生への奨学金の支給、社会福祉、自然環境の保全、自然科学分野での研究費の助成などの活動が挙げられますが、それらの活動に使う目的で信託銀行に信託する(預ける)財産のことを、公益信託の信託財産といいます。
特定公益信託とは、そのうち、一定の要件を満たすものとして主務大臣が認めたものを指し、特定公益信託を設定した人が亡くなった場合、その信託の権利の価額はゼロとなり、相続税は非課税となります。
ただし、この仕組みを使って不当に相続税を回避することを防止するため、以下のような制約が設けられています。
・信託終了時における信託財産が、その財産に係る信託の委託者に帰属しないこと
・相続税の申告書の提出期限までに、信託する財産を支出しなければならない
心身障害者扶養共済制度に基づく給付金
心身障害者扶養共済制度とは、地方公共団体の条例に基づき心身障害者を扶養する人が加入者として掛け金を納付し、その加入者が亡くなった後に、地方公共団体が心身障害者の扶養のための給付金を定期的に支給する制度をいいます。
この制度の加入者の死亡によって心身障害者が受けることとなる給付金は、相続税の非課税財産とされています。
まとめ
公益を目的とする事業に財産を遺贈した場合や、障害者などの弱者が恩恵を受ける場合には相続税は非課税となりますが、一方で、こうした制度を利用して不当に自らの利益を増やそうとする行為を防ぐための制約もあります。
前回と今回の記事で、相続税の非課税財産に関する概要の説明はお伝えできたと思います。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断