亡くなった夫が前妻の子と数十年音信不通だった場合、遺産はどうするの?
配信日: 2022.05.19
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
相続人になる人の範囲
法律上、相続人になれる人の範囲は決まっています。基本的には、亡くなった方の配偶者が相続人となります。そして、亡くなった方に子がいれば配偶者と一緒に子が相続人になります(子が亡くなっている場合は孫、孫が亡くなっていればひ孫が相続人になります)。その際の相続人は配偶者と子とで2分の1ずつとなります。
子がいない場合、配偶者と共に直系尊属である父母(父母が亡くなっていれば祖父母)が相続人となり、その際の相続分の割合は配偶者が3分の2、直系尊属である父母が3分の1となります。祖父母が存在しない場合は配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となり、その際の相続分の割合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。
相続順位 | |
---|---|
常に相続人となる | 配偶者 |
第1順位 | 子(子が亡くなっていれば孫、孫も亡くなっていればひ孫) |
第2順位 | 父母(父母が亡くなっていれば祖父母) |
第3順位 | 兄弟姉妹 |
※筆者作成
数十年音信不通だった前妻の子は相続人となるか
まず、亡くなった夫の前妻は相続人とはなりません。相続人となれる配偶者は原則、現在法律上婚姻関係にある配偶者に限られているからです。
では、前妻との間の子はどうでしょうか。こちらは亡くなった夫の子として相続人となります。たとえ前妻と離婚して現在は一緒に生活していなくとも、相続人となります。
最後に、数十年音信不通という場合や、前妻と離婚してから一切会っていないような子はいかがでしょうか。この場合も、子として相続人になります。つまり、音信不通であろうと離婚していようと、子であれば前妻との間の子であっても他の子たちと共に相続人になるということです。
例えば、亡くなった夫には、現在の妻である自分の他、自分と亡くなった夫との子、そして前妻との間に数十年音信不通であるが1人の子がいるという場合、相続人は自分と子、そして前妻との子が相続人となります。
その際の相続分は下記となります。
●自分(現在の妻)…4分の2
●子…4分の1
●夫の前妻との間の子…4分の1
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前妻との間の子に相続財産を渡さないことはできるのか
原則として、亡くなった夫の前妻との間の子にのみ、相続財産を渡さないということはできません。意図的に前妻との間の子を除いて遺産分割を行った場合、その遺産分割は無効なものとなってしまいます。
また、子には遺留分という、最低限保障された相続分が与えられています。この遺留分は遺言書での相続分の指定や、当事者間での遺産分割などによっても奪うことができないものとなっています。
そのため、相続財産については数十年音信不通だったとしても前妻との子に一切相続財産を渡さないということは基本的にできないことになります。
前妻との子であっても共に相続人として遺産を分けることになる
夫の前妻との間の子も、夫の子であることには変わらず、現在の妻である自分や自分と夫との間の子と共に、相続人となります。
たとえ長年音信不通であったとしても相続人であることには変わりません。もし、亡くなった夫に前妻との子がいたとしても、相続が起きたときは連絡を取り、同じ相続人として誠実に話し合い、遺産を分け合うようにしてください。
出典
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
執筆者:柘植輝
行政書士