更新日: 2022.05.23 遺言書
【No争続】遺言書にはどんな種類があるの? それぞれ特徴をチェック
ここでは遺言書の内容や効力の有無、遺言書の種類ならびに内容、それぞれのメリット、デメリットについて解説します。
執筆者:宮本建一(みやもと けんいち)
2級ファイナンシャルプランニング技能士
遺言書とは? 法的効力は?
遺言書にはどのようなことが書かれているのか、また、法的効力や無効となる事例について説明します。
遺言書の内容
遺言書とは、被相続人自身が保有する財産に関しての意思を記したものです。意思を記すことで、相続人の間で発生しうるもめ事を回避できます。
特に遺言書に明記された内容に関しては、民法に定められている相続割合(法定相続分)よりも優先されるといった特徴があります。また、法定相続人でない人に対して、財産を取得させること、つまり遺贈もできます。
また、遺言書がある場合は、相続人は遺産分割協議をせずに相続手続きを行えます。
一方で、遺言書は所定の方式で作成しなければならず、途中開封などを行うと無効になるので注意が必要です。
効力はあるのか?
遺言書に何を書いてもいいのでしょうか? 遺言書は特に、民法や法解釈などによって限定的な解釈になります。
基本的に法的な効力が認められる内容として、
●相続に関する内容
(例:相続分の指定やその委託、遺産分割方法の指定など)
●財産処分に関する内容
(例:信託の設定、包括遺贈及び特定遺贈など)
●遺言執行に関する内容
(例:遺言執行者の指定やその委託、特定財産の遺言執行に関する特別の定めなど)
があげられます。
遺言書の種類及び特徴
遺言書を書いても正しい方法で記載を行わないと認めてもらえません。
民法第967条(普通の方式による遺言の種類)において、「遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。」と書かれています。
ここでは、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の特徴について説明します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は民法第968条に定義されています。
主な特徴は次のとおりです。
●遺言者は、全文、日付および氏名を自書して、かつ押印の必要があるため、パソコンなどでの作成は無効となります。ただし、押印に使用する印章は実印である必要はありません。
●相続財産目録を添付する際には自署の必要はありませんが、その場合、各頁に自書、押印が必要です。
●加筆や削除など修正を行う場合、修正箇所に二重線などを引き、変更した箇所にその旨を付記し署名して押印する必要があります。
例えば、4文字加筆の場合、吹き出しを示して文書を入れ、余白部分に「4文字加筆」と書き押印するという具合です。規則通りの修正方法でなければ自筆証書遺言は無効となるので注意が必要です。
公正証書遺言
自筆証書遺言は民法第969条に定義されています。主な特徴として次のようなものがあります。
●証人2名以上の立ち会いが必要です。
●遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人が、遺言者の口述を筆記、遺言者および証人にこれを読み聞かせたり閲覧します。
●遺言者および証人が、筆記の正確なことを承認した後、それぞれがこれに署名し、印を押します。遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることが可能です。
●公証人が、その証書が法律に則った方式で作ったものである旨を付記して、署名し、押印します。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は民法第970条に定義を示しています。主な特徴として次のようなものがあります。
●遺言者が、その証書に署名、押印します。その際、押印した印章で封印します。
●遺言者が、公証人1人および証人2人以上の前に封書を提出し、自分の遺言書である旨および筆者の氏名および住所を申述します。ただし、公証実務では通常、証人が3名以上になることはなく、証人2名で作成されています。
●公証人が、その証書を提出した日付および遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者および証人とともにこれに署名し、押印します。
また、秘密証書遺言は自筆証書遺言とは異なり、必ずしも自筆である必要がないため、パソコンなどで文章を作成しても、第三者が筆記したものでも問題ありません。
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遺言書それぞれのメリット・デメリット
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言それぞれのメリット及びデメリットにはどういった点があるのでしょうか。図表1にまとめました。
図表1
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
自筆証書遺言 | ・費用が掛からない ・証人が不要 ・遺言内容を秘密にできる |
・家庭裁判所での検認が必要 ・紛失や盗難など管理に難点がある ・修正や加筆がある際、決まりどおりに行わないと無効となる |
公正証書遺言 | ・法的に確実な遺言書 ・開封手続きが不要 |
・費用が掛かる ・遺言内容が漏れる場合がある |
秘密証書遺言 | ・パソコンでの作成も可能 ・内容が漏れにくい |
・検認が必要 ・費用が掛かる ・不備があればもめる恐れがある |
まとめ
遺言書には主に3種類ありますが、パソコンで文書作成をしても問題ないものやそうでないもの、費用の掛かるもの、掛からないものなど性質が異なります。
自身の財産である遺産を、もめごとなく次の世代に引き継げるように、遺言書についても正しく認識しておきましょう。
出典
e-Gov法令検索 民法
日本公証人連合会 公証事務より1 遺言
法務省 自筆証書遺言に関するルールが変わります。
執筆者:宮本建一
2級ファイナンシャルプランニング技能士