更新日: 2022.05.23 相続税

【相続税対策】事業の法人化がハイリターンな理由とは? リスクはどれくらいある?

【相続税対策】事業の法人化がハイリターンな理由とは? リスクはどれくらいある?
相続税対策をしないと、3世代先には資産がすべてなくなると言われています。もちろん、これは誇張のため財産がすべてなくなることはありません。しかし、3世代先になると資産が大きく目減りするのは事実です。そのため、多くの人が相続税対策をします。代々受け継いできた資産をなくすわけにはいけない、という思いの方も多いでしょう。
 
そのような方へ、本稿では相続税対策の1つ、事業を法人化し、相続税を節税する方法をメリットやデメリットを挙げて解説します。
八木友之

執筆者:八木友之(やぎ ともゆき)

宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター

相続税とは

まず、相続税の基本的な説明をします。
相続税とは、亡くなった個人の財産(相続財産)を、受け取る人に課税される税金です。亡くなった人、つまり財産を相続される人を「被相続人」、財産を受け取る側の人を「相続人」と呼びます。
 
相続税には基礎控除があります。基礎控除額は、「3000万円+(法定相続人の数×600万円)」の計算式で算出します。相続財産がこの範囲内に収まる場合は、相続税は課税されません。
 
例えば、相続財産が4000万円で、法定相続人が2人いる場合について考えてみましょう。基礎控除額は、3000万円+2×600万円=4200万円となります。相続財産の4000万円より基礎控除額が大きいですから、この場合は相続税は課税されません。
 

相続税対策としての「事業の法人化」とは

相続税は、個人の相続財産を、個人に相続させることにより課税されます。
相続人が経営する法人に相続財産を移転した場合は、被相続人が亡くなっても、相続税は課税されません。なぜなら、法人には相続という概念がないためです。
 
被相続人の相続財産を、相続人が経営する法人へ、現金以外の物を提供する現物出資を行い、代わりに法人から被相続人が株を取得するという方法を取ります。
 
相続人の法人へ相続財産の現物出資をすることで、相続税の課税が抑えられます。
この方法で相続税の節税を受けることを、事業の法人化による相続税対策と呼びます。
 
なお、事業の法人化で相続対策をする場合には、早目に相続財産の移転を行うようにしましょう。相続開始の3年以内に贈与した相続財産は、相続税の課税対象となってしまいます。そのため、被相続人が高齢になってから相続財産の移転を行うと、事業の法人化による相続税対策の効果を得づらくなるかもしれません。
 

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事業を法人化することのメリット

賃貸住宅から継続的に得られる賃料も、相続税の課税対象になります。しかし、法人に賃貸住宅を現物出資しておけば、賃料収入は会社の売り上げになり、相続人は役員報酬として賃料収入を受け取ることが可能です。
 
また、現物出資をする際に、被相続人に対して発行される株式は、一般的に現金よりも相続税の課税評価が落ちます。株は会社の財務状況が良いと価値が上がるという性質があります。会社で借り入れを起こし、株の評価を下げることも可能です。このとき、被相続人が受け取った株や現金などの相続財産が、先述の相続税の基礎控除内に収まっていれば、相続税の課税はされません。
 

事業を法人化することのデメリット

法人を設立するので、設立に伴う煩雑な手続きや費用が発生します。また、法人の会計方法は、個人の会計方法より詳細に申告しなければいけないため、税理士など専門家に委託する必要があります。
 
事業を法人化することにより相続トラブルは減りますが、経営に関するトラブルには注意が必要です。被相続人に株式を発行することにより、株主として経営に関与する余地が与えられるからです。
 

事業の法人化は慎重に

事業の法人化はメリットがある一方、デメリットも無視できません。メリットは、相続税の節税です。デメリットは、法人化したことで生じる経営上のトラブルが生じるリスクです。いわば、ハイリスク、ハイリターンな節税方法であるとも言えます。
 
事業の法人化で節税をお考えの方は、専門家との綿密な打ち合わせや助言のもとで行い、当初の目的である節税につなげてください。
 

出典

国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和4年度版)
 
執筆者:八木友之
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター

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