更新日: 2022.05.27 贈与
学費の支払いのため、貯金を親名義の口座から子ども名義の口座へ。贈与税はかかる?
今回は、学費の支払いで親名義の口座から子ども名義の口座への資金移動の際の贈与税の取り扱いについて解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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教育費や生活ための仕送りなどは非課税となる
親の口座から子どもの口座への資金移動については、学費はもちろんのこと、生活費などの仕送りのための資金であれば、贈与税の課税対象とはなりません。これは相続税法(※1)にも規定されています。
■贈与税の非課税財産
相続税法では、贈与税の非課税対象となる財産について以下のとおり定められています。
1.法人からの贈与(贈与税ではなく、所得税の対象)
2.扶養義務者相互間における生活費または教育費にあてるために行った贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められるもの
3.宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で、政令で定める者が贈与により取得した財産のうち、該当の公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
4.特定公益信託で、学術に関する顕著な貢献を表彰するもの、もしくは顕著な価値がある学術に関する研究を奨励するものとして財務大臣の指定する者から交付される金品のうち、財務大臣の指定するもの、学生、生徒に対する学資の支給を行うことを目的とするもの
5.条例の規定により、地方公共団体が精神または体に障害のある者に関して実施する共済制度で、政令によって定めるものに基づき支給される給付金
6.公職選挙法の適用を受ける選挙における公職の候補者が選挙運動に関し、贈与によって取得した金銭や物品、その他の財産上の利益のうち、選挙運動に関する収入および支出の報告書の提出の規定に基づく報告があったもの、などです。
学費の支払いのために行った贈与については、上記の2に当てはまります。このほかにも、直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、一定の要件を満たすものが贈与税の非課税対象として挙げられます。
教育資金の一括贈与の非課税制度(※2)の活用
2023年3月31日までであれば、受贈者が30歳未満の場合で、親や祖父母など直系尊属から教育資金を受け取った場合、1500万円までが非課税となる制度「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」を利用できます。
ただし、この場合は金融機関などと一定の契約を結び、教育資金用口座の開設を行う必要があるほか、「教育資金非課税申告書」を金融機関を通して税務署に提出しなければなりません。また、教育資金として口座からお金を引き出した際には、後日、領収書などを金融機関に提出する必要があります。
このように手続きが面倒ではあるものの、まとまったお金を移したい場合や節税対策を考えるなら、この非課税制度を検討するのもよいでしょう。
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学費を子どもの口座に移す際の注意点
上記で解説したとおり、扶養義務のある親から子どもへの教育費用および生活費用の資金移動であれば、年間110万円以上の贈与であっても贈与税は発生しません。ただし、「通常必要と認められるもの」である必要があり、さらにその目的以外には利用できません。
例えば、学費の支払いのための金額を子どもの口座に入金したにもかかわらず、そのまま預金していたり、有価証券の購入やギャンブルなどに使っていたりした場合は、贈与税の対象です。
したがって、お金を子どもの口座に移す際には、その資金の用途を子どもに伝え、そのとおりに使ってもらう必要があります。できれば、学費を支払った際の領収書や、生活費としての用途(簡易的な家計簿)を残しておくことをおすすめします。
まとめ
親子の間には扶養義務があり、教育費用の負担も扶養義務の範囲に含まれます。そのため、学費の支払いの目的で親名義の口座から子ども名義の口座に貯金を移しても贈与税の課税対象とはなりません。これは親子の間のみならず、祖父母と孫や兄弟間でも同じです。
ただし、教育費として認められるものは「学費の支払い、教材の購入」などで、生活費として認められるものとしては「家賃や生活費としての仕送り」です。
また、学費の支払いのための資金移動なら、その時期にも注意する必要があります。学費の支払いの都度、子どもの口座に貯金を移すならよいのですが、まとめて移す場合は預金期間が発生するため、贈与税の対象となる可能性があります。そのため、まとめて移すならば「教育資金の一括贈与の非課税制度」を利用するようにしましょう。
その際の制度の利用にあたっては、必要な手続きを踏まなければならないことや、受贈者である子どもが30歳になった時点で教育資金用口座の中に使い切れていない残高がある場合は、その残高に対して贈与税が課税されることもあわせて覚えておくことが大切です。
出典
(※1)国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
(※2)国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員