更新日: 2022.05.31 相続

もし相続人が認知症だったら? 円滑な相続を行うために必要な対応を解説!

執筆者 : 宮本建一

もし相続人が認知症だったら? 円滑な相続を行うために必要な対応を解説!
相続の際には遺産分割協議書など署名が必要となる書類があります。相続人に認知症の方がいる場合は、ほかの相続人が代筆すればいいのでしょうか? 第三者を立てるのでしょうか?
 
ここでは認知症の方が相続人となった場合の周りの取るべき対応について解説します。
 
宮本建一

執筆者:宮本建一()

2級ファイナンシャルプランニング技能士

認知症の相続人がいる場合、代理人が必要

相続が発生すれば書類に署名するなどさまざまな手続きが必要となる場合があります。しかし、相続人に認知症の方がいる場合、どのような手続きをする必要があるのでしょうか。
 

何もしない場合は? 代わりに署名は? 相続放棄をしたい場合は?

認知症の相続人がいる場合、注意すべき点についてそれぞれの事例で説明します。
 

●遺産分割協議書に署名捺印を行わない場合
 
●遺産分割協議は相続人全員が参加する必要があります。認知症であるからといって相続権が消滅するわけではないので、認知症の相続人が外れている遺産分割協議書は無効となります。
 
●認知症の本人が署名できないからといって別の相続人などが代わりに署名した場合、遺産分割協議書は無効になるどころか「私文書偽造」の犯罪が成立する恐れもあります。(刑法159条1項)
 
●認知症の相続人に意思能力が失われている場合、相続放棄はできません。
なぜなら、相続放棄も法律行為であり、意思能力が失われている状況では内容を理解しているとはいえないからです。

では、認知症の相続人はどうすればいいのでしょうか。
 

成年後見制度の利用

判断能力が不十分な認知症の相続人には本人に代わり代理人を立てます。ここでは成年後見人を立てるときの手続きなどについて説明します。
 

・成年後見制度とは

成年後見制度とは、財産の管理や介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議の必要があっても判断能力の不十分な人たちを保護、支援する制度のことです。
成年後見制度には

●任意後見制度  本人の判断能力のある間に将来に備え任意後見人を選任する制度
●法定後見制度  本人の判断能力が不十分である場合、家庭裁判所によって選任される制度

があり、法定後見制度には、さらに本人の判断能力に応じて「後見」「補佐」「補助」の3つの制度があります。
 

・申し立てから選任、確定まで

では、成年後見人の利用を検討する場合、どのような手続きが必要でしょうか。
 
・申し立て

本人の住所地の家庭裁判所に後見開始の審判等を申し立てる。
 
・審理

申し立て書類を精査した家庭裁判所は、後見人候補者との面談による調査を行います。また、本人の陳述聴取なども行われます。
 
・法定後見の開始審判・成年後見人等の選任

審理による結果をもとに家庭裁判所は成年後見人を選任します。
 
・審判の確定

成年後見人が確定されます。
 
申し立てから審判の確定までは、多くの場合4ヵ月以内に確定します。
 

・注意点

以上が成年後見人申し立てから確定までの流れでしたが、次のような注意点があります。
 

・必ずしも希望した人が成年後見人になるとは限らない

成年後見人は家庭裁判所が本人との関係、経緯など総合的に判断し選任します。
 

・本人が死亡するまで原則変更できない

原則正当な理由がない限り途中で変更することはできません。
 

・親族以外(弁護士や司法書士など)が成年後見人に選任された場合、費用がかかる

成年後見人は本人の財産管理などを行うため、親族以外(弁護士や司法書士など)が選任された場合は基本的に報酬が発生します。
 

成年後見人を立てないで相続する方法は?

認知症の相続人がいる場合、代理人を立てる必要があることについて説明しました。では、代理人を立てずに相続する方法はあるのでしょうか。
 

・遺言

遺言書を作成することで代理人を立てずに相続することが可能です。その際、注意する点として、
 
・遺言書で遺言執行者を指定する

遺言執行者の指定、つまり遺言に書かれている内容を実現する人を記載しておくことで認知症の相続人であっても名義の書き換えなどが可能となります。
 
・公正証書遺言を利用する

遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、公正証書遺言は公文書として作成されるため信用性の高い遺言書です。
 

まとめ

認知症の相続人がいる場合、基本的には代理人を立てる必要があることをご理解いただけたかと思います。高齢化社会の我が国において、相続人が認知症であるケースは今後増加していくものと考えられます。相続が開始されても慌てることのないよう準備をしておきましょう。
 

出典

法務省:成年後見制度
日本公証人連合会:公正証書遺言
 
執筆者:宮本建一
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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