「マイナス」にならない相続方法!?「限定承認」の方法やメリット・デメリットもあわせて解説

配信日: 2022.06.20

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「マイナス」にならない相続方法!?「限定承認」の方法やメリット・デメリットもあわせて解説
相続を行う場合、普通に相続する単純承認や相続を拒否する「相続放棄」のほかに「限定承認」という相続方法があります。限定承認とはプラスの財産を限度としてマイナスの財産を相続することです。
 
「単純承認」や「相続放棄」とはどのような点が異なっているのか、また限定承認を行う手続きについて、また、限定承認を選択した場合のメリット、デメリットについて説明します。
宮本建一

執筆者:宮本建一(みやもと けんいち)

2級ファイナンシャルプランニング技能士

限定承認とは相続方法のひとつ

相続が開始しますと、相続人は次の3つの方法より相続する方法を選ぶ必要があります。限定承認とは、相続を行う方法の1つです。他に単純承認、相続放棄があります。ここではそれぞれについて説明します。
 

限定承認とは

限定承認とは、相続人が受け継いだ資産の範囲内で負債を支払い、資産を超える負債に関して責任を負わないという相続です。
 
限定承認を行う場合、相続があったことを知ってから3ヶ月以内に相続を放棄する者以外の相続人の全員が家庭裁判所に申し立てる必要があります。限定承認の意思表示を行うと原則として撤回はできません。
 

単純承認とは

単純承認とは、亡くなった人、つまり被相続人の財産(資産、負債)を全て無条件で相続をすることです。単純承認は裁判所への申し立てをする必要がありません。
 
注意点として、被相続人に負債がなくても第三者の連帯保証人になっていた場合、相続人は連帯保証人も相続することになるので注意が必要です。
 

相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人の財産の相続を拒否することで、放棄した者は初めから相続人でなかったとみなされます。相続放棄をするには、相続を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所への申し立てが必要です。他の相続人と相談する必要はなく、単独で相続放棄ができます。
 

限定承認の手続き

限定承認は相続財産のうち資産の範囲内で債務を相続し、それ以上の債務については相続しないという相続です。では、限定承認を行うのにはどのような手続きが必要なのでしょうか。
 

相続人の確認、財産のチェック

限定承認は相続人全員で申し立てるため、相続人の確認を行う必要があります。ただし、相続人の中で相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったものとします。被相続人の財産も確認します。申立書類に遺産目録を提出するためです。
 

家庭裁判所へ申し立て

相続人および相続財産の確認が終わると限定承認を選択する旨を家庭裁判所へ申し立てを行います。
 

除斥公告の実施

限定承認を選択した場合、相続人は5日以内に相続債権者および受遺者に対し除斥公告を実施する必要があります。その際、官報(政府が発行している機関紙)にて限定承認を選択した旨を公告し、公告期間は2ヶ月以上と定められています。
 
つまり、相続人は官報で「限定承認を行いました。債権のある方は申し出てください」といった内容を伝えなければなりません。また、申し出期間は2ヶ月以上に定めて公告します。
 

債権者に弁済する

除斥公告期限を過ぎれば優先権を持っている債権者から弁済します。例えば、相続財産に設定されている抵当権などを有している債権者などが該当します。債務が資産を超える場合、資産に応じて案分して弁済します。
 

相続人が受け取る

債務を全て弁済し終えて資産が残った場合、限定承認を行った相続人が受け取ります。
 

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限定承認のメリット、デメリット

限定承認の申し立てから相続財産の受け取りまでの流れを説明しましたが、限定承認のメリットおよびデメリットにはどういった点があるのでしょうか。
 

メリット

限定承認のメリットには次の3点があります。
 

・資産の範囲以上の債務を相続する必要がない

相続でも単純承認であれば、資産より負債が大きい場合でも全て相続しますが、限定承認では、資産額の範囲内での負債を相続しますので、それ以上の負債を相続する必要がありません。
 

・先買権(さきがいけん)の行使が可能である

先買権とは、相続資産である不動産が競売にかけられた場合、相続人が優先して競売のかかった不動産を購入できる権利です。相続人は先買権を行使することで、購入資金は必要になりますが、優先して不動産を購入できるため、不動産が第三者の手に渡ることはありません。
 

・不動産を手元に残せる

限定承認で不動産を相続した場合、不動産の価格に相当する負債を弁済すれば不動産を 相続することが可能です。逆に、相続した不動産の価格に相当する負債を弁済できない 場合、不動産を売却しなければなりません。
 

デメリット

主なデメリットについては以下の通りです。
 

・相続人全員が同意し申し立てる必要がある

限定承認は相続人全員が同意して申し立てを行う必要があるため、相続人のうち1人で も限定承認に反対する相続人がいると限定承認の申し立てはできません。
 

・譲渡所得税を支払う可能性がある

限定承認において、相続した資産を売却して負債を弁済することが一般的です。相続資産を売却した金額が、当初取得するためにかかった費用より高い場合、つまり売却益が出た場合、譲渡所得税が発生する可能性があります。
 

・申し立てから清算まで時間がかかる

限定承認を申し立て、排除公告を行い、官報で限定承認を選択した旨を伝え、債権者に 対し2ヶ月以上の申し出期間を設け、債務の弁済、弁済後の清算までかなりの日数がかかります。
 

まとめ

限定承認は相続手続きの方法の1つで、資産以上の負債を負う必要はなく、相続放棄と違い相続不動産を手元に残せるといった点が特長です。一方、相続人全員の同意が必要であったり、清算に時間がかかったりするといった面もあります。相続人が後悔しないよう相続方法には注意を払って選択することが大切です。
 

出典

e-Gov法令検索 民法
裁判所 相続の限定承認の申述書
 
執筆者:宮本建一
2級ファイナンシャルプランニング技能士
 

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