更新日: 2022.06.22 相続税
成人年齢18歳引き下げと相続税・贈与税への影響
今回は、相続税・贈与税で、成人年齢の引き下げが影響してくる代表例を解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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相続税への影響
相続税への主な影響を確認しましょう。
<未成年者控除>
相続人が未成年者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引きます。未成年者控除の額は、その未成年者が満「20歳」になるまでの年数1年につき、10万円で計算した額です。
「20歳」とありますが、2022年4月1日以後の相続、または遺贈については「18歳」です。
これにより、相続人に未成年者がいる場合、これまでよりも適用できる未成年者控除額は、減少することになります。
<遺産分割協議>
税金面の話題ではありませんが、遺産分割協議にも影響が出てきます。
例えば、遺族が配偶者と未成年の子どもである場合、家庭裁判所を通じて、子どもに特別代理人を選任する必要があります(民法826条1項)。
今後は18歳・19歳も成人となりますので、この年齢の本人が直接分割協議に参加できるようになるため、家庭裁判所において特別代理人の選任を受ける必要はありません。
配偶者と子どもが遺産分割協議をするとなると、子どもにとって不利になる可能性があります。
贈与税への影響
贈与税への主な影響を確認しましょう。
<相続時精算課税制度>
相続時精算課税の制度とは、原則60歳以上の父母もしくは祖父母から、「20歳」以上の子または孫に対し、財産を贈与したケースで選択可能な贈与税の制度です。
この制度を選択後、通算2500万円まで非課税で贈与でき、超えた分には一律20%の税率をかけた贈与税がかかります。
「20歳」とありますが、2022年4月1日以後の贈与については「18歳」です。
相続時精算課税の制度を選択すると、撤回はできない、暦年贈与を利用できないなどの不利益があります。また、贈与税は免れても相続税の負担が生じる場合がありますので、よく検討して利用しましょう。
<その他>
父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定額が非課税になる制度があります。
受贈者は 贈与を受けた年の1月1日において、「20歳」以上でしたが、「18歳」以上に緩和されました。
結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合、贈与税非課税制度の受贈者の年齢要件も「20歳」以上50歳未満から、「18歳」以上50歳未満に緩和されました。
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暦年贈与の特例税率
贈与税の計算は、その年の1月1日~12月31日までの1年の間に、贈与によってもらった財産の価額を合計し、基礎控除額110万円をその合計額から差し引き、その残りの金額に対して税率を乗じて税額を計算することになります。
贈与税の税率には、「一般税率」と「特例税率」の2種類に区分されます。
一般税率は、特例税率の対象とならない受贈者(財産を受けた人)に適用する税率です。例えば、兄弟間における贈与、夫婦間における贈与、親から子に対する贈与で子が未成年の場合などに用います。
一方、特例税率は、贈与により財産を取得した者(贈与を受けた年の1月1日において「20歳」以上)が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受けた場合に用います。
例えば、祖父から孫への贈与、父から子に対する贈与などに用います。一般税率よりも特例税率のほうが税率は低くなっています。
「20歳」とありますが、2022年4月1日以後の贈与については「18歳」です。
今まで受贈者が18歳・19歳の場合は特例税率の対象外でしたが、これからは利用できるようになります。
出典
(※1)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4103 相続時精算課税の選択
(※2)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
(※3)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
(※4)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。