更新日: 2022.10.11 その他相続
【相続土地国庫帰属制度】相続した土地を国に委ねられるって本当!? どんな手続きが必要? 費用は?
所有者不明土地が増加していることについては、国も問題視しており、その解決策として「相続土地国庫帰属制度」が設けられることになりました。今回は、これから始まるこの制度についての概要を解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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相続土地国庫帰属制度とは?
相続などにより、土地を取得した人は、法務大臣に対してその土地の所有権を国に帰属させることについての承認を申請できます。その土地が複数人での共有の場合は、共有者全員で申請を行わなければなりません。
法務局は、承認にあたって審査が必要と判断した際には調査を行うことができ、その土地が国に帰属できる要件を満たしていることが確認できた場合に、承認を行います。
承認を受けた人は、10年分の土地管理費用相当額の負担金を納付し、土地を国に帰属させることができます。
<申請者>
相続土地国庫帰属制度の申請ができるのは、相続もしくは遺贈によって土地を取得した人です。土地の共有者も、共有者全員が申請をすることで、この制度を利用できます。
<帰属できない土地がある>
相続土地国庫帰属制度は、申請すればすべての土地が帰属できるわけではありません。さらに、申請できないケースもある点に注意が必要です。
<相続土地国庫帰属制度において承認されない土地>
その土地の上に建物がある場合は、申請できません。また、担保権が設定されている土地も申請できないことになっています。そのほか、ほかの人が利用することが予定されていたり、土壌が汚染されていたりする土地、境界が明らかではない土地などは、申請できず、仮に申請しても却下されます。
また、申請が通ったとしても、調査によって以下のことがわかった場合は、承認されません。
●一定の高さの崖があるなど、通常に管理もしくは処分するにあたって必要以上の費用や労力がかかる
●土地の管理や処分を阻害する有体物が地上にある、もしくは、地下に除去しなければならない有体物がある
●管理や処分に隣接する土地の所有者との訴訟が必要である
審査の際に手数料がかかる
法務局が申請を受け、その土地が帰属できるものかどうかの審査が必要と判断した場合には、審査を行いますが、その審査を行うにあたり手数料が発生します。具体的な金額はまだ発表されていませんので、今後の動向をチェックしておきましょう。
■負担金
最終的に国に帰属させる際には、負担金の支払いが必要です。2022年9月時点では「10年分の土地管理費用相当額」としていますが、まだ正式決定ではありません。
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そのほかの制度利用における注意点
相続土地国庫帰属制度はまだ施行されていません。しかし、施行された後でも、相続によって取得した土地であれば、制度の対象です。ただし、対象となるのは土地のみです。建物は対象となりませんので注意してください。
また、相続によって取得した土地が対象ですので、売買によって取得した土地は対象外です。相続した土地のなかには、農地や森林もあるでしょう。農地や森林であっても、承認の要件を満たすものであれば、帰属制度の対象になります。
制度が創設された背景(※1)
この「相続土地国庫帰属制度」が創設された背景には、土地を相続したものの、手放したいと思う人が増加していることや、取得を望んでいなかったために土地を管理することに対する負担を感じ、実際に管理がおろそかになっている土地が増えていることが挙げられます。
実際に、国民の意識調査によると土地の所有に負担を感じたことがあると答えた人の割合は約42%に上っており、さらに、相続土地国庫帰属制度が創設された際、利用を希望する世帯は約20%となっています。
まとめ
相続土地国庫帰属制度の施行は2023年4月27日からです。そのため、まだ制度の内容について不明瞭な部分がありますが、今後明確化していく予定です。
所有者不明土地の増加については、社会的な問題となっており、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(※2)」によって、自治体が所有権を所有する仕組みや、使用権を設定し、公共事業や地域福利増進事業への利用が行われています。また、相続土地の登記が義務化されたことも、所有者不明土地の増加を防ぐ目的が含まれています。
今後、相続によって土地を所有する予定があり、その土地の活用に悩んでいるなら、相続土地国庫帰属制度を利用し、国に帰属することも考えてみましょう。
出典
(※1)法務省 所有者不明土地の発生を予防する方策
(※2)国土交通省土地・建設産業局 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(所有者不明土地法)について
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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