相続人でなくても遺産相続できる特別縁故者とは?

配信日: 2022.10.31

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相続人でなくても遺産相続できる特別縁故者とは?
最近、一人暮らしのお年寄りが増えてきているようです。配偶者に先立たれて一人で暮らしていても、子どもや兄弟などの相続人がいれば、亡くなった後には相続人の間で財産は相続されます。しかし、相続人となる人が誰もいない場合は、残された財産はどうなるのでしょうか? 今回は相続人でなくても遺産を相続できる特別縁故者について説明します。
村川賢

執筆者:村川賢(むらかわ まさる)

一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

早稲田大学大学院を卒業して精密機器メーカーに勤務。50歳を過ぎて勤務先のセカンドライフ研修を受講。これをきっかけにお金の知識が身についてない自分に気付き、在職中にファイナンシャルプランナーの資格を取得。30年間勤務した会社を早期退職してFPとして独立。「お金の知識が重要であることを多くの人に伝え、お金で損をしない少しでも得する知識を広めよう」という使命感から、実務家のファイナンシャルプランナーとして活動中。現在は年間数十件を越す大手企業の労働組合員向けセミナー、およびライフプランを中心とした個別相談で多くのクライアントに貢献している。

身寄りのないAさんが亡くなった。相続人でないBさんはAさんの遺産をもらえるの?

Aさんはずっと独身を通し、定年退職してからもアパートに一人で暮らしていました。Aさんは、近所に住むBさん夫婦ととても仲が良く、家族ぐるみの付き合いをしていました。一緒に旅行に行ったり、家庭菜園でとれた野菜で料理を作りあって食べたりしていました。
 
そんなある日、Aさんが突然脳梗塞で倒れ、近くの病院に担ぎ込まれました。一命はとりとめたものの後遺症が重く、退院後は自宅でほとんど寝たきりの状態となってしまいました。一人暮らしのAさんだったので、Bさん夫婦は毎日Aさんのアパートに行き、身の回りの世話をしていました。しかし、Bさん夫婦の介護もむなしく、先日Aさんが亡くなりました。
 
Bさん夫婦はAさんについていろいろ調べてみましたが、相続人は見当たりません。ところが、Aさんには2000万円の預貯金があることが分かったのです。Aさんは生前に「Bさん夫婦にはいつもお世話になっているので何か恩返ししたい。」と言っていましたが遺言書は書いてありませんでした。そんなこともあり、Bさん夫婦はAさんのお金がすべて国庫に納まってしまうのかと思うと、残念で悔しい思いがしました。
 
そこで、相続に詳しいファイナンシャルプランナーに相談したところ、所轄の家庭裁判所から「特別縁故者」と認められれば、Aさんの遺産の一部または全部を相続できるのではないかと知らされたのです。
 

相続人不明の相続財産はどうなるの?

相続人が不明の場合でも、これを放置しておくわけにはいきません。亡くなった被相続人の財産はプラス財産だけとは限らないからです。負債などのマイナス財産があるかもしれません。誰かが被相続人の相続財産を整理して清算する必要があります。
 
このような場合には、利害関係者(債権者や特別縁故者となりうるような人)または検察官が被相続人の所轄する家庭裁判所に申請して、相続財産管理人を選任してもらいます(※1)。この相続財産管理人が家庭裁判所の監督の下で所定の手続きに従い、相続人の捜査をおこなうとともに、被相続人の相続財産を清算します。
 
その手続きについて簡単に説明します。
 
相続財産管理人はまず選任の公告をおこない、戸籍などをたどりながら相続人の捜査をします。捜査が開始されてから一定期間(死後10ヶ月程度)たっても相続人が判明しない場合には、相続人不在を確定します。(これ以後、相続人が現れても権利を主張できません。)
 
相続人不在の確定から3ヶ月以内に、特別縁故者は財産分与の申し立てを家庭裁判所におこないます。家庭裁判所の審判を経て、相続財産管理人から被相続人の財産が特別縁故者へ分与されます。
 
相続財産管理人が被相続人の債務の弁済などをおこない、特別縁故者への財産分与も終わったあとで、最終的に残った財産は国庫に納められます。
 
相続財産管理人への報酬は、被相続人の相続財産から行われます。もし相続財産が少ない場合は、申立人から相当額を裁判所に納めてもらい、それを報酬として充てる場合があります。
 

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特別縁故者になるための条件とは

特別縁故者となるには次のような条件が必要です。(※2)
 

●内縁の妻など被相続人と生計を同じくしていた。
●被相続人を献身的に介護などして療養看護に努めた。
●その他として被相続人と特別に縁故があった。

 
相続人不在が確定したときから3ヶ月以内に、以下のように書類をそろえ被相続人の所轄する家庭裁判所に財産分与の申し立てを行います。3ヶ月を過ぎると申し立てが受理されない恐れがあるので注意が必要です。
 

●申し立てに必要な費用・・・収入印紙800円と連絡用の郵便切手
●申し立てに必要な書類・・・所定の申立書と申立人の住民票または戸籍附票

 

終わりに

今回紹介したように、相続人が誰もいない場合では、特別縁故者として被相続人の財産を分与できる方法があります。しかし、もし20年以上も会っていないような疎遠の相続人であっても、相続人が見つかったとしたら、その人に遺産相続する権利があります。一人身の場合はそのようなケースも想定されるので、遺言書を書いて死後自分の財産をどのようにしたいかを明確にしておくことが望ましいと言えるでしょう。
 

出典

(※1)裁判所 相続財産管理人の選任
(※2)裁判所 特別縁故者に対する相続財産分与
 
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

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