更新日: 2022.11.02 相続税

相続財産にはどんなものがある? 代表例を紹介

執筆者 : 仁木康尋

相続財産にはどんなものがある? 代表例を紹介
相続財産には、相続税算出時と遺産分割時とで評価方法が異なるものもあります。また、相続税の計算時にのみ相続財産とみなして課税する財産もあります。
仁木康尋

執筆者:仁木康尋(にき やすひろ)

日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

人事部門で給与・社会保険、採用、労務、制度設計を担当、現在は人材会社のコンサルトとして様々な方のキャリア支援を行う。キャリア構築とファイナンシャル・プランの関係性を大切にしている。

相続財産の代表例

 
【居住用の土地・建物】
まずは、相続財産の代表格の居住用の土地・建物です。
 

《土地の評価方法》

居住用の土地は、相続税算出時と遺産分割時とで評価方法が異なります。
 
イ)相続税算出時の評価
国税庁が毎年7月に発表する「路線価」をもとに算出します(※1)。なお、配偶者や同居親族がその宅地を相続する場合には特例があります。
 
居住用の土地の面積が330平方メートルまでは評価額を80%減することができ、20%に抑えることができます。この特例は「小規模宅地等の特例」というものです。適用を受けるには要件があります(※2)。
 
ロ)遺産分割時の評価
「時価」での評価になります。相続税算出時の評価より高くなります。
 

《建物の評価方法》

建物は、「固定資産税評価額」で評価します。相続税・遺産分割共通です。
 
【生命保険(死亡保険金)】
死亡保険金は特殊で、「みなし相続財産」としての扱いになります。「みなし相続財産」とは、民法上は相続財産ではないのですが、相続税を計算する際は相続財産とみなして相続税を課税する財産のことです。死亡退職金も同様に扱われます。


・相続税  → 相続財産とみなして課税の対象になる
・遺産分割 → 相続財産には含めない

 

《相続税計算上の非課税枠》

死亡保険金には非課税枠があります。「500万円×法定相続人の数を乗じた額」を死亡保険金から差し引くことができます。
 

(例)相続人が配偶者と2人の子、生命保険の死亡保険金が5000万円の場合


・法定相続人の人数  : 配偶者と子が2人ですので合計3人
・非課税限度額の計算 : 500万円×3人=1500万円
・課税の対象となる額 : 生命保険金5000万円-非課税限度額1500万円=3500万円

このケースでは、3500万円に相続税が課税されます。
 
※生命保険金の金額が非課税額以下であれば、相続税は課税されません。
※死亡退職金等にも、生命保険金と別枠で同様の非課税限度額があります。
 
【上場株式・有価証券】
上場株式・有価証券は、「時価」で評価します。相続税・遺産分割共通です。
 
【預貯金】
こちらも「時価」で評価します。相続税・遺産分割共通です。
 
【借入金】
借入金などの債務は、相続税計算上遺産総額から差し引くことができますので、相続税を抑える効果があります。ただし、遺産分割においては注意が必要な点があります。
 
相続人の協議で遺産分割しても、債権者の承認がないと無効になってしまいます。借入金などの債務は、相続開始の時点で、法定相続分に応じて相続することになる可能性があると思っていたほうが良いでしょう。
 
遺産分割や遺言によって相続人間の債務割合を決めていたとしても、遺族間で合意されただけのことで、債権者に対しては、遺産分割の内容や遺言の内容を一方的に主張はできないからです。
 
【連帯保証債務】
保証債務も相続開始の時点で、法定相続分に応じて相続されることになります。この場合、連帯保証人という地位が相続人に法定相続分で引き継がれるかたちになります。
 
ただし、保証債務は原則として債務控除の対象とならなりません。保証債務は、保証債務を履行が発生してはじめて債務額が確定する性質を有するため、確実な債務とはいえないからです。
 

まとめ

相続財産の中には土地・建物のように単純に分割することができないものや、借入金のように額によっては遺族の今後の生活にも影響をおよぼしてしまう場合もあるかもしれません。
 
各財産の特徴に留意しながら自身の財産の洗い出しをしていただき、相続税対策に役立てていただければと思います。
 

出典

(※1)国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
(※2)国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務
国土交通省 地価・不動産鑑定/令和4年地価公示
 
執筆者:仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

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