「遺言書」のつくり方とは? 遺言の種類やその執行について解説

配信日: 2022.12.06

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「遺言書」のつくり方とは? 遺言の種類やその執行について解説
遺言は、被相続人(遺言者)が自己の財産について誰に何を残したいのか、自分の最終意思を表示するもので、遺言の内容は相続人をはじめとした利害関係人や社会公共の利益にも大きな影響を与える重要な行為です。遺言には大きく分けて「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2種類があり、一般的には「普通方式遺言」が利用されています。
 
さらに普通方式遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、本記事では実務上よく利用される「自筆証書遺言」(民法968条)と「公正証書遺言」(民法969条・969条の2)の2種類について、その作成と執行方法について解説します。
山崎和義

執筆者:山崎和義(やまざき かずよし)

2級ファイナンシャル・プランニング技術士

遺言能力について

遺言は誰でも作成できるわけではなく、遺言能力が求められます。遺言能力とは遺言の内容を理解して、自分の死後にどのようなことが起きるかを認識することができる能力のことです。
 
遺言能力の有無の判断基準として、15歳に達した者であること、意思判断能力があることが必要で、意思判断能力は遺言作成時に存在しなければなりません。遺言能力の有無は、精神上の障害の存否・年齢・遺言前後の行動や状況・遺言の内容などを考慮し、精神鑑定の結果や主治医等の診断も踏まえ判断されます。
 

自筆証書遺言

遺言者が自筆で遺言の内容を書面にする方式です。紙や筆記用具には条件はなく、遺言内容の全文、作成日付および氏名を自筆し押印すれば足り、遺言者が一人で作成することが可能です。なお、財産目録は自筆の必要はなく、パソコンなどで作成した財産目録を添付し、遺言書の本文にて財産目録の番号等を指定することで有効な遺言書となります。
 
ただし、パソコンなどで作成した財産目録には、すべてのページに署名押印が必要です。
 

自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言には次の特徴があります。
 

〈メリット〉

●遺言者一人で作成でき手軽
●遺言書作成費用がほとんどかからない
●遺言者は生前、遺言書の存在や内容を秘密にできる

 

(デメリット)

●法律に定められた方式に従っていないと無効になる
●紛失や改ざんの恐れあり
●遺言者が遺言書作成時に判断能力があったのか、相続人間で争いになる場合がある

 
上記の通り、手軽とはいえ全文自筆するのは手間がかかる上に、保管の仕方によっては遺言書が発見されないリスクがあります。また、遺言者の死後に相続人間での争いに発展する可能性が高い方法であり、弁護士や税理士などの専門家は後述する「公正証書遺言」を勧める傾向にあります。
 

法務局による自筆証書遺言の保管制度

自筆証書遺言のデメリットの一部を回避するために、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用する方法があります。この制度にのっとり法務局に遺言書の保管申請をすれば、法定の形式に適合しているかのチェックが受けられ、遺言書は原本に加え画像データとしても長期間適正に管理されます。
 
法務局に預けることによって、遺言書紛失の恐れや、隠匿・改ざん等を防ぐことができ、将来の争いを回避する有効な手段です。なお、法務局の保管申請手数料は3900円です。
 

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公正証書遺言

遺言書を公証人がパソコンなどで作成の上、原本を公証役場で保管する方式です。公証人は、裁判官や検察官などを長く務めた法律実務の経験があり、法務大臣に任命された準国家公務員です。
 
公正証書遺言は、公証役場にて2人以上の証人の立ち会いのもと公証人が内容を口頭で読み上げ、遺言者が記載内容で間違いないかどうかを確認・承認して、遺言者と証人2人と公証人が最後に署名・押印をして完成します。
 

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言には次の特徴があります。
 

〈メリット〉

●公証人が作成するので、法的に有効な遺言書が作成できる
●遺言者の遺言能力の有無に関する争いが起きにくい
●遺言書の紛失・改ざんが防げ、相続人の求めに応じ写しが交付される

 

〈デメリット〉

●公証人に対する手数料が発生する
●親族以外の証人を2人立てる必要があり手間がかかる
●証人に財産の状況が知られてしまう

 
なお、公証人手数料は遺言の目的である財産の価額に対応する形で、図表1のとおり定められています。
 
図表1
 

 
出典:日本公証人連合会 公証人手数料令第9条別表
 

公正証書遺言の手続代行サービスについて

法的に有効な遺言書が作成できる公正証書遺言方式ですが、一般の方が自ら主体的に公証人と各種調整を行うのは難しいこともあります。そのような場合、行政書士法人などに遺言内容の相談から公正証書遺言書の作成サポートを依頼することも可能です。戸籍謄本や不動産登記簿謄本の準備もすべて代行してくれますので、効率的に手続きを行いたい方にはお勧めです。
 

遺言執行の流れ

遺言者の死後、遺言の内容を実現する手続き(遺言執行)が進められます。自筆証書遺言の場合、家庭裁判所において検認の作業が必要となります。検認とは遺言書の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言書を提出して相続人などの立ち会いのもとで、遺言書の内容を確認することです。
 
検認は相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、検認の日現在における遺言書の内容を明確にすることで、その後の遺言書の偽造・変造を防止するために必要とされています。
 
ただし、自筆証書遺言書保管制度を活用した場合、検認は不要となります。また、公正証書遺言の場合も検認は不要で、すぐに相続手続きが可能です。遺言書に遺言執行者の記載がある場合は当該執行者が、記載がない場合は相続人全員が相続内容の実現をめざします。
 

遺言書の内容は余裕を持って相談

このように、遺言は非常に重要な役割を果たす法律行為ですが、被相続人が健在時には、相続対応について相続人からはなかなか話題にしづらいものです。ただ、被相続人が突然、遺言能力を失うリスクもあります。お正月やお盆の時期などゆっくり話ができるタイミングで将来の遺言方法について相談してみるのはいかがでしょうか。
 

出典

民法 第968条(自筆証書遺言)・第969条(公正証書遺言)・第969条の2(公正証書遺言の方式の特則)

法務局 自筆証書遺言書保管制度

日本公証人連合会 公証人手数料令第9条別表

 
執筆者:山崎和義
2級ファイナンシャル・プランニング技術士

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