更新日: 2023.02.07 その他相続

相続争いの芽を摘む処方箋 不動産分割など早めに問題解決を

執筆者 : 黒木達也 / 監修 : 中嶋正廣

相続争いの芽を摘む処方箋 不動産分割など早めに問題解決を
誰かが亡くなり親族が相続を進める際、相続人同士の意見が異なるとトラブルに発展しかねません。遺産分割をめぐる調停の内容は、(1)相続財産のほとんどが不動産、(2)故人の遺言状がない、(3)故人から特別利益を受けた相続人がいる、といったケースが見られます。すべて争いの要因となるため、その原因を取り除く努力が必要です。

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黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

土地と住宅以外の資産がない

亡くなった方の遺産を点検すると、銀行預金や株式の保有はほとんどなく、住んでいた住宅と土地だけの場合、分割が困難なためトラブルも起こりがちです。特に子どもが多いなど相続人が複数いると、問題解決が難しくなります。誰か1人が相続しその家に住む場合は、他の相続人はほとんど恩恵を受けられません。
 
子どもの1人が故人と同居しており、故人の遺言状があったとしても、他の相続人も相続権があるからです。仮に不動産以外のわずかな遺産を配分しても、他の相続人の同意は得られないと思います。
 
このようなケースで解決策はあるでしょうか。仮に故人と誰も同居しておらず、誰か1人がこの住宅に住み続けることを希望したとしても、この不動産を売却して相続人同士で分配することが望ましい解決策です。不動産市況が悪く、現在が売却の時期でないと相続人同士で合意すれば、売却の時期については様子を見ながら実施すればよいと思います。
 
「親が住んでいたから」「思い出の家だから」といった理由で、相続人同士で共有する方法は避けるべきです。なぜなら、固定資産税等の税金や家屋の維持費をどのように負担するか、売却を早期に希望する相続人が出た際はどうするかなど、新たなトラブルになりかねない要因が潜んでいるからです。
 
故人と同居していた家に住み続けたい、土地と住宅を処分せずに相続したい、という希望をもった相続人がいる場合は、その方が、他の相続人の相続額相当分を「代償金」として用意し支払うことです。すぐに準備できれば問題はないのですが, 準備できない場合は、金融機関から資金を借りる、毎年決められた金額を合意の上支払う、といった方法をとる必要があります。
 
いずれにしても、相続が近いと考えられる時期に、相続人同士で話し合い方向性が決まっていれば、トラブルになることは少ないと思います。例えば、高齢の親が施設に入っているために空き家となっているケースでは、可能な限り空き家を売却し現金化しておくことが、賢明な選択になると思います。今後は空き家を放置していても、高く売却できる可能性は低いと考えましょう。
 
相続人同士が疎遠で、いざ相続が発生した段階で、それぞれ自分の主張をし始めると、問題解決が難しくなることは確実です。早めの準備が大切です。
 

遺言状がなく故人の意志を確認できない

相続人が少数で親しく付き合いもある場合は、仮に遺言状がなくても話し合いによって財産の分割協議はまとまるかもしれません。故人が生前、相続人を集め意向を伝達していた場合も同様です。
 
ところが、相続人の数が多い、故人が意志を伝えていない、相続人同士の仲が悪いといったケースでは、遺言状がないと大変なことになります。「土地を受け継ぐことを故人と確認している」「故人の世話をしたので多くの遺産が欲しい」「私は故人に認知されている」といった人が何人も出てくると収拾がつかなくなります。故人が遺言状を作成するつもりで、間に合わなかったときなども、この状態に該当します。
 
ご高齢で、ある程度の財産があり相続人も多い場合は、自分の死後トラブルが予見できると思います。それに備えるために、遺言状は用意しておきたいものです。できることなら、正式な「公正証書遺言」を作成しておくと安心です。
 
少なくとも自筆の証書遺言は作成しましょう。自筆の場合は、書式の不備(例えば日付の記載がない)がないよう注意します。本人の意向も反映させ、多少の遺産配分状態が、法定相続の配分とは異なっても構いません。異なる場合は理由をわかりやすく表記し、一方で相続人の権利である「遺留分」は侵害しない注意が求められます。
 
また、認知機能の衰えが大きく進むと文面も作成できなくなり、遺言状自体が有効と認められないケースも生じてきます。高齢となり認知機能の衰えを感じる前に、早めに家族信託や任意の後見人制度を利用する知恵も必要です。
 

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生前に特別な援助を受けていた

例えば故人から、1人だけ住宅の購入資金を援助してもらっていた、1人だけ医学部の学費を出してもらっていた、などといった特別に恩恵を受けていた相続人がいるケースがこれにあたります。
 
そのため、ほとんど援助を受けていない他の相続人から不満が出てくる可能性があります。もし故人の生前に多額の援助を受けていた方が、他の相続人と同様の法定相続分の権利を主張すると、話がまとまらないかもしれません。
 
他の相続人に比べ、より多くの援助を受けていた場合は、これを「特別利益」とし、相続財産として加える考え方です。「10年以上前の話だから関係ない」などという主張は、他の相続人からの同意は得られないかもしれません。
 
受益のあった相続人は、ある程度の金額は相続財産として認める姿勢が大切です。すでに援助を受けていた金額を相続財産に計算し、他の相続人に不満が起きないように相続を行います。
 
他方、故人に対して特別に尽くしてきた方がいる場合、その方に対し通常の相続分に加算して配分することができます。例えば、故人の生前に献身的な介護を行ったなどが、その代表例といえます。これらを考慮し加算した額を「寄与分」といいます。
 
寄与分があると他の相続人の本来受け取れる相続分が減額されるため、寄与分をなるべく少なくしたいと考える傾向があります。そのため、一定の寄与分を認めたうえで、誠意をもって相続人同士が話し合う、家庭裁判所の過去の調停額を基準にして寄与分を算定する、などの方法で解決を図ることが望まれます。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。