更新日: 2023.02.22 その他相続

なぜ危険? 「老老相続」の落とし穴とは?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

なぜ危険? 「老老相続」の落とし穴とは?
日本の少子高齢化進行にともない、「老老相続」の件数が近年急速に増加し、新たな問題が増えています。
 
相続は人が亡くなったときに発生し、亡くなった人は「被相続人」、相続する人は「相続人」と呼ばれますが、老老相続とは、その被相続人と相続人がどちらも60歳以上の高齢者である相続のことです。
 
この記事では、老老相続の落とし穴や問題点と、トラブルを起こさずスムーズな相続をするための対策について解説します。
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老老相続が増えている背景

総務省統計局が発表した2021年10月1日現在の人口推計によると、75歳以上の人口が全体の14.9%で過去最高となりました。範囲を広げて65歳以上人口は全体の28.9%となり、日本は約3人に1人が65歳以上の長寿・高齢社会となっています。
 
これにより、老老相続の件数も急速に増えているといわれています。今後、少子高齢化がさらに進行すれば、老老相続の可能性はますます高まると推測されます。
 

老老相続の問題点とは?

老老相続の一番の問題点は、相続人の意思能力欠如により、相続手続きに支障をきたすリスクがあることです。
 
相続を受ける「相続人」自身も高齢者のため、認知症などを発症して判断能力が低下するケースが多くあります。そうすると、仮に子どもや兄弟などほかに相続人がいても、相続人の間での話し合いで遺産を分割する遺産分割協議ができず、法定相続割合での相続しかできなくなる可能性があります。
 
特に遺産に不動産が含まれていれば共有名義となり、売却が難しくなる可能性が高まります。
 
ほかにも、被相続人より先に相続人が亡くなり、相続人の子どもや孫が相続する「代襲相続」や、被相続人が亡くなった後に遺産分割協議をしないうちに相続人が亡くなり、次の相続が開始される「数次相続」などが発生し、相続関係が複雑になって手続きに時間や手間がかかるリスクも考えられます。
 

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老老相続の対策

老老相続によるトラブルを防ぐためには、どのような対策があるのでしょうか? ここでは大きく分けて2つの対策を紹介します。
 

成年後見制度を利用する

成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下した方を保護・支援する制度です。本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が成年後見人等を選定する「法廷後見制度」と、本人が判断能力のあるうちに、自ら成年後見人(任意後見人)選んでおく「任意後見制度」があります。
 
制度を利用することで、成年後見人が代理で本人のために相続手続きを行えるため、相続手続きをスムーズに進めることができます。
 
ただし、被相続人本人の判断能力が不十分になってから制度を利用する場合は、「法定後見制度」を利用することになり、家庭裁判所が選任した弁護士などの専門家が後見人となる場合がほとんどのため、月々の報酬が発生する可能性があります。
 

事前に遺言書を作成する

事前に遺言書を作成し、遺産の分配方法を明示する方法があります。遺言には「自筆遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
 

●自筆遺言は
自分で遺言を作成する方法です。証人も不要でコストをかけず作成できますが、不備があると被相続人の死後に無効と判断されるリスクがあります。
 
●公正証書遺言
遺言者が公証人へ口頭で遺言内容を伝え、公証人が遺言を作成し、遺言書の原本を公証人に管理してもらう方法です。家庭裁判所での検認が不要となり、一番相続手続きをスムーズに進めることができますが、公証人への手数料などコストが発生します。
 
●秘密証書遺言は
公証人と証人2人以上に遺言書の存在を証明してもらいながら、本人以外には内容を秘密にできる方法です。手間やコストがかかる上、記載不備で無効になる可能性もあり、現在はあまり用いられていません。

 

なるべく早く老老相続に備えよう

老老相続には、相続手続きの複雑化など、さまざまな問題があります。対策として紹介した成年後見制度の利用や遺言書の作成は、被相続人・相続人の意思能力が備わっている段階で行うことが大切ですので、老老相続対策はなるべく早いうちから始めましょう。
 

出典

総務省統計局 人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)

法務省 成年後見制度について

 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

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