更新日: 2023.05.12 遺言書

遺言書はやっぱり必要! 作成で注意するべき点は? 書き換えられるって本当?

遺言書はやっぱり必要! 作成で注意するべき点は? 書き換えられるって本当?
相続にまつわる争いを回避する手段として、遺言書の作成が重要視されています。
 
本稿では、ある夫婦の事例をみながら、家族にメッセージを伝える手段としての遺言書の有効性について考えます。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

義理の妹に、夫の財産はあげたくない

A(夫)さん・B(妻)さん夫婦には子どもがいません。先日、Aさんの母親が亡くなりました。Aさんには妹が1人います。父親は10年前に他界しており、当初は同居している妹が母親の面倒を見る予定でした。その約束もあり、父親の相続時には妹が相応の財産を受け継いでいます。
 
Aさんは自分が離れて暮らしているので、その遺産分割に納得していました。母親が元気なうちはよかったのですが、介護が必要になった頃から妹の態度が急変してしまいました。連絡が取れないことも増え、介護施設の手続きなどはAさんが行いました。もろもろの相談する機会もなく、その後Aさんの遠距離介護が数年続くことになりました。
 
そして今回、母親の相続となりました。相談者はBさんです。遺産分割に口を出す立場ではないものの、妹さんの態度には腹立ちを隠せません。兄妹が相続の話し合いをしている横で、Bさんには将来の懸念材料が浮かびました。Aさんにもしものことが起きて相続となった場合には、相続財産はどうなるのかということです。
 
民法では、図表1のように法定相続分が決まっています。両親が他界し、子のないAさん夫婦の場合は、第3順位となる妹も法定相続人となります。
 
「夫婦で築いた財産を理不尽な妹にあげたくない」というのがBさんの思いです。「今から将来に先立ち、そうなった場合は相続放棄してもらう方向で確証を取り付けておくほうが安心ではないか」という相談でした。
 
【図表1】
 

 

夫に遺言書を作成してもらう

Bさんには、Aさんに遺言書を作成してもらうように提案しました。Bさんに全財産を残す内容にしておけば、Bさんも安心です。
 
一般的に、遺言書作成の注意点として、遺留分に関する配慮が必要です。相続人の1人に相続財産のすべて残す内容では、ほかの相続人に不公平感があります。相続人が妻と息子2人の場合「妻にすべてを残し2人の息子はゼロ」ならまだしも、「妻と長男に残し、次男はゼロ」なら異議申し立てがある可能性が高まります。
 
図表1を参照してください。本来なら次男の相続分は4分の1です。図表1の脚注にあるように、次男は4分の1の2分の1にあたる、8分の1の遺留分の侵害額請求ができます。請求するか否かは次男の自由ですが、父親の遺言書の内容が、かえって争族の火種になってしまう可能性があるのです。
 
Aさんの場合、妹さんは相続財産の1/4が法定相続分ですが、遺留分はありません。請求されて遺言書の内容が変わることになりません。
 
遺言書では、相続財産の割り振りばかりに目が行きがちですが、付言事項(※)も重要です。その内容に至った自分の思いや、妹さんへの感謝の気持ちなどの配慮が記されていれば、妹さんも納得されるかもしれません。
 
(※)付言事項:法的な効力はありませんが、本文の補足説明的な役割を果たすものです。財産配分の理由や家族への感謝の気持ちを書く場合が多いです。
 

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夫の気持ちを尊重することも重要

今回の案件では、Bさんの気持ちはよく分かります。ですが、夫であるAさんの気持ちは少し違うかもしれません。
 
妹との関係性はBさんとは異なることに理解が必要です。わがままや身勝手であっても、そこは血を分けた兄妹です。Aさんの気持ちを尊重する必要があるでしょう。
 
また、遺言書は何度でも書き換えることが可能で、日付の新しいものが優先されます。今の気持ちや状況は、5年後では違っているかもしれません。折々で更新することも念頭に遺言書の作成に着手してみると、家族の関係性を再確認できるかもしれません。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4132 相続人の範囲と法定相続分

 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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