更新日: 2023.06.13 葬儀

家族葬 経験者が語る注意点とは?

執筆者 : 宮﨑真紀子

家族葬 経験者が語る注意点とは?
「葬儀は身内だけで執り行いました」という、家族葬のお知らせを目にすることがあるかもしれません。簡単そうに思える葬儀の様式ですが、経験者に取材をすると、簡単ではない盲点がいくつかあるようです。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

そもそも家族葬とは?

「高齢化が進み喪主がすでに現役を退いていることが多いので、葬儀の規模が縮小されてきています。会社関係などの参列者は少なくなりましたね。この商売も尻つぼみです」という話を、葬儀屋の担当者に取材し聞いたのは十数年前。この頃はまだ参列人数が減ったとはいえ、いわゆる一般葬が主流でした。
 
その後、新型コロナの影響で人が集まることができなくなりました。それだけでなく移動も制限されましたので、冠婚葬祭の行事は次々と延期や中止に。親族間のお付き合いが希薄になったのは、新型コロナの影響も大きいのではないでしょうか。
 
もろもろの理由があって、昨今は家族葬が増えたと考えられます。家族葬に定義はないようですが、家族と近親者で執り行う少人数のお葬式のことです。基本的な流れは一般的な葬儀と同じですが、少人数なので形式にこだわらずに故人を見送ることができます。どの範囲の人に連絡して参列してもらうのか等を含め、家族の思いが反映されます。
 
「葬儀費用が抑えられるので家族葬にしたい」という考え方もあります。確かに参列者が少ないと、料理や香典返しなどに掛かる費用は少なくなります。ですが葬儀屋の担当者は、「香典も少なくなることに注意が必要」といいます。
 

実は大変だったという話 ~当日編~

先日、筆者のもとにご相談に来られたAさんから、家族葬の実体験を聞きました。
 
2022年末に義母を96歳で亡くされました。義父は十数年前に他界しています。
 
少し前から介護施設に入居されており、すでに近所づきあいや親戚づきあいから遠ざかっていたこともあり、葬儀は家族葬で行うことになりました。“身内だけでお別れしたい”と、家族葬の中でもコンパクトな葬儀を選んだそうです。人数は10人程度のタイプということで、親戚にも夫婦でなく代表者1人で参列してほしい旨の連絡をしたそうです。
 
自宅で葬儀当日を迎えたのですが、訃報を聞きつけたご近所の方などから供花やお供えなどが次々届けられたそうです。会館と違い受付係の準備もしていません。対応に追われている間に届けられた供花の中には、送り主の名字しか分からないものもあったそうです。
 
送り主にしてみれば「気持ちだけ届けたい」という思いでしょうが、受け取った側としては、そうはいきません。「生前お世話になったに違いないので礼儀を尽くしたい」と、送り主を追跡するのに苦慮したそうです。
 
参列者を家族と近親者に限定することで、もろもろに気遣うことなく弔いに専念できると思って決めた家族葬でしたが、旧来の一般的な葬儀以上に大変な1日になったとAさんはおっしゃっていました。
 
葬儀によっては「御香典・御供花はご辞退します」と告知されることもあるでしょう。「事前にお供え等に関する決め事や線引きを確認しておくことが大切」と、葬儀屋の担当者は話していました。
 

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実は大変だったという話 ~後日編~

Aさんの場合、参列者の人数を絞ったことで、後日「お仏壇にお線香をあげさせてください」という弔問客の来訪が続々あり、その対応も大変だったそうです。事前に連絡があるものの、スケジュール調整や準備が必要です。
 
弔問客も1人ではなく、数人のグループで自宅に来ることもあります。普段は夫婦2人で暮らしている自宅です。「椅子の数が足りなくて、5人のお客人を迎えるのに大急ぎで買いに行った」と、Aさんはおっしゃっていました。
 
他にはこのような例もあります。ご相談者Bさんの事例をご紹介します。
 
「故人の遺志もあって家族葬にしました」とBさんは親戚から連絡を受けたそうです。Bさんは遠方に住んでいることもあり、この連絡を受けた際にその親戚の気遣いを感じたのですが、故人と親しかった他の親戚の中には「どうして事前に知らせてくれなかったの?」という声もあったそうです。
 
故人ととても親しい間柄であったために、最期の見送りがかなわなかったことを残念に思う気持ちが勝ったのだろうとBさんは話しました。
 
一般のお葬式? それとも家族葬? ……選択肢が増えて悩ましくもあります。可能であればメリット・デメリットを経験者から聞いて、知っておくことは大切だと筆者は思います。
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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