更新日: 2023.06.23 遺言書

手軽に書けるから活用しやすい? 自筆証書遺言の特徴

執筆者 : 井内義典

手軽に書けるから活用しやすい? 自筆証書遺言の特徴
自身の財産のことについて遺言を残しておきたいと思うこともあるでしょう。デジタル遺言制度の導入についても政府で議論がされるなか、現行制度上、ひとりで手軽に書けると言われる自筆証書遺言があります。
 
しかし、自筆証書遺言を作成するにあたっては、その注意点もしっかり確認したいところです。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

要式を守らないと無効

遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。自筆証書遺言は、その全文、氏名、日付を自筆で書き、押印することによって作成する遺言です。自分ひとりで作成できますが、民法で定められたこの要式を守っていないと無効になってしまいます。
 
自筆証書遺言という名前から、自筆で書くことが求められています。パソコンなど活字での作成は認められません。ただし、添付する財産目録についてはパソコンでの作成も認められています(※各ページに自筆の署名と押印は必要)。
 
氏名については、当然誰の遺言であるかを明らかにする必要があるため、基本的に戸籍上の氏名を書きますが、本人であると特定できる名前であれば、本名でないペンネームなども認められています。
 
日付は、作成日を明らかにするために記すもので、作成日がない場合も無効となります。「〇年〇月吉日」という書き方は、吉日は人によって何日か異なり、具体的な日付が特定できないため認められません。一方、「〇年〇月末日」はその月の最終日であることによって日付が特定できるので認められることになっています。
 
押印については、印鑑が実印である必要はなく、認印でも構いません。また、指印でもよいことになっています。一方、花押は不可という最高裁判所の判例もあり、押印として認められないものは使用できません。
 

遺言について撤回や訂正をする場合

遺言というものは、作成した本人の死亡によって効力が生じます。その前、つまり本人が存命中であれば、いつでもその内容を自由に撤回できます。撤回する権利を放棄することもできません。作成後、【図表1】のようなことがなされた場合、その部分は撤回したものとみなされることになっています。
 


 
自筆証書遺言は自分で作成できることから、書いた遺言書について後から加除訂正(文字の追加・削除)できることになっています。加除訂正をした旨を付記して署名し、当該箇所に押印することによって可能です。
 
しかし、あまりにも訂正が多いと読みづらくなってしまうかもしれませんので、遺言の読み手のことを考えて作り直したほうがよい場合もあるでしょう。
 

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改ざん、紛失リスクにも備えておく

自筆証書遺言は作成した人が亡くなったあと、家庭裁判所の検認が必要となっていますが、存命中、作成した遺言書を適切に管理しておく必要があります。秘密証書遺言や公正証書遺言のように作成の際の証人も不要である一方、改ざんや紛失のリスクがありますので、その点に気をつける必要があります。
 
ただし、「自筆遺言書保管制度」により、作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらうこともできます。同制度を活用する場合、先述の民法上の注意点以外に、同制度独自の注意点もありますので、確認したうえで活用するとよいでしょう(【図表2】)。
 


 
以上のとおり、自筆証書遺言で遺言を残すのであれば、その特徴をよく把握し、作成ルールもしっかり守ったうえで作成しましょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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