更新日: 2023.07.06 相続税

実家の遺品整理で「旧1万円札」や「高級品」が出てきた! これって税金申告が必要?

執筆者 : 大竹麻佐子

実家の遺品整理で「旧1万円札」や「高級品」が出てきた! これって税金申告が必要?
相続税申告も終わり、実家の遺品整理をしていたら多額の現金が出てきた、という話はよくあることです。とくに「旧1万円札」や「高級品」である場合には、終わったはずの遺産分割協議や税申告に影響することも想定され、どうしたらよいのか迷うかもしれません。
 
このような場合に、再び申告をする必要があるのでしょうか。もし、申告の必要があるのにそのままにしていた場合には、どのような問題があるのでしょうか。2024年からデザインが刷新される新紙幣の発行を前に、トラブルの回避策についても解説します。
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP🄬認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

新たに発見された個人の財産は税申告が必要?

結論から言うと、後から発見された「旧1万円札」や「高級品」は、相続税の対象となる財産ですので、申告の必要があります。トラブルに発展することを回避するためにも、隠すべきではありません。
 
まずは、ほかの相続人と情報を共有し、話し合いましょう。とくに「お金の問題」は、その後の人間関係にも大きな影響を与えることがあります。そのうえで、申告した相続税に変更がある場合には、適切に「修正申告」を行います。
 

本来申告すべき納税額よりも少なく申告していた場合

本来申告すべき納税額よりも少なく申告していた場合には、本来の税額に加えて、「過少申告加算税(税率10~15%)」が発生しますが、自主的に修正申告した場合には免除されます。
 

申告期限までに申告していなかった場合

申告期限までに申告していなかった場合には、本来の税額に対して「無申告加算税(15~20%)」が加算されますが、自主的に期限後申告をすれば、加算税は5%に軽減されます。
 

意図的に税申告を偽っていた場合

気をつけるべきは、意図的に隠した場合です。税務調査で発覚した場合には、本来の納税額に加え、ペナルティーとして「重加算税(35~40%)」が追徴課税されます。
 

さらに、延滞税も加算される

税務調査は、申告書提出から1~2年後に行われることが多いため、納税が遅れたことによる「延滞税」が日数に応じて加算されます。
 

親族間でもめないために…

遺産分割協議が終了すると、税の申告とともに、遺産は、相続人それぞれの単独所有に帰属します。
 
相続人全員の同意のもと、遺産分割協議のやり直しを本来はすべきであるものの、すでに確定したものを覆すのは容易ではありません。新たに発見された相続財産についてのみ再度協議を行い、財産を引き継ぐ相続人が修正申告を行うのが現実的かもしれません。
 
遺産分割協議の際に、後になって発見された財産についての取り決めをあらかじめ設けておくことも可能です。トラブルにならないための遺産分割協議書を作成するためには、行政書士、司法書士、弁護士などの専門家への相談、依頼をおすすめします。
 

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遺された家族が困らないように、もめないように対策しておく必要性

相続が発生した場合、自宅などの不動産や預金通帳、有価証券などは比較的把握しやすいものの、思わぬ場所から、「旧1万円札」や「高級品」に限らず故人の財産が見つかることは、よくあることです。
 
とは言え、相続財産の総額、さらに相続税額に影響を与えるような価値のあるものに対しては、遺された家族が困らないよう、また、もめないよう生前に対策をしておくことが大切です。
 

2024年から新デザインの紙幣へ

故人の遺した財産は、たとえ少額であっても、相続が発生した時点では「すべての相続人の共有財産」となります。「タンス預金」と呼ばれる現金も同様です。
 
こうした現金には、日本銀行が発行する紙幣と国が発行する硬貨がありますが、2024年度の上半期をめどに、1万円札、5千円札、千円札が約20年ぶりに新しいデザインとなります。デザイン変更の理由として、財務省では以下のとおり説明しています。


「国民の皆様にお金(紙幣や貨幣)を安心して使っていただくために最も重要なのは、偽造されたお金が出回らないようにすることです。万が一、偽造されたお金が広く出回ると、国民の皆様が手に取ったお金を信用できなくなったり、場合によっては被害を受けたりしてしまいます。(以下省略)(令和3年12月20日)」(※1)より引用

新しい紙幣では、高精細の「すき入れ(すかし)」や最新技術を用いた「ホログラム」を導入により偽造の防止とともに、漢数字(壱萬円)でなくローマ数字(10000円)とすることで外国人にも分かりやすい「ユニバーサルデザイン」を意識しています。なお、500円硬貨についても、紙幣の改刷に合わせて新しくなります。
 

増加する「タンス預金」?

新しい紙幣となることには、前述の公表されている理由とは別に、「タンス預金のあぶり出し」があることも推察されます。日銀(日本銀行)の資本循環統計(※2)によれば、個人の現金保有残高は2022年末時点において109兆円にのぼっています。
 
この数字には、個人事業主の事業資金も含まれているものの、一部では「相続税逃れ」を目的とした現金を指摘する声もあります。ある程度の現金を手元資金として保有することは、とても意味のあることです。
 
ただし、自然災害や盗難リスクといった安全性、そして、その後のトラブルをふまえると過度な「タンス預金」は避けるべきとも言えます。
 
旧紙幣でも法令に基づく特別な措置がない限り、使用することはできます。ただし、キャッシュレス決済が進むなか、自動販売機などでは使用できないことも多く、また、金融機関へ持ち込むことで資産隠しが発覚することも想定されます。
 
そう考えると、新しい紙幣の発行を機に、消費することで経済を活性化させたい、という国の思惑も納得感があります。
 

自分自身を守るために…

相続人にとって税務調査は、税申告からある程度の時間が経過した後に、突然やってくるものですが、実は、担当者は時間をかけて調べ、相当の確信をもって税務調査が行われるとも言われています。
 
申告しなかったことに対して、不安な毎日を送ることは精神的ダメージを負うことになりますので避けたいものです。また、相続発生時の故人を中心とした親族状況にもよりますが、他に相続人が存在する場合には、伝えなかったことに対する罪悪感や発覚した際のその後の関係性にも影響を与えることがあります。
 
自分自身を守るためにも、新たな遺産が見付かった場合は、隠すことは避けるべきでしょう。
 

まとめ

遺産を遺す側は、トラブルを避けるためにも、エンディングノートや遺言書などで、現金の保管場所をふくめ財産を明記し、あとになって家族が困ることのないよう整理しておくことをおすすめします。
 
そして、相続が発生し、ひと通りの手続き等が終わった後に出てきた故人の財産については、相続人で話し合い、適切に申告することをおすすめします。
 
いずれにしても、あらかじめ、事前にできることは対策しておくことが大切です。そして、「隠す」ことは得策ではないことに、留意しておきたいものです。
 

出典

(※1)財務省 なぜ紙幣や貨幣のデザインを変えるのですか
(※2)日本銀行 資金循環統計(速報)(2022年第4四半期)統計データ 金融資産・負債残高表(1)全体表
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士

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