更新日: 2023.07.21 その他相続

相続した「土地」を放棄できる「相続土地国庫帰属制度」がスタート。費用負担はどのくらいある?

執筆者 : 小山英斗

相続した「土地」を放棄できる「相続土地国庫帰属制度」がスタート。費用負担はどのくらいある?
相続した土地を利用する予定がなかったり、管理することが負担になったりしている場合、その土地を手放したい人もいるかと思います。この記事では土地を手放す方法の1つとして、相続土地国庫帰属制度について解説します。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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相続土地国庫帰属制度とは

「相続土地国庫帰属制度」とは、相続または遺贈(遺言による特定相続人への財産譲渡)により土地の所有権を得た相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させる(土地を国に引き渡す)ことができる制度です。この制度は2023年4月27日に施行されました。
 
相続した土地に買い手がつくようであれば売却することも可能ですが、必ずしも買い手がつくとも限りません。
 
また、不要な土地であれば、相続時に「相続放棄」する方法もありますが、相続放棄は他の資産も含めて全て放棄する必要があり、不要な土地だけを放棄することはできません。相続土地国庫帰属制度は、相続した不要な土地の処分に有効な方法の1つです。
 

この制度を利用できる人

この制度を利用できる人は、相続または遺贈により土地の所有権を得た相続人です。本制度の開始前に取得した土地についても利用することができます。
 
兄弟など複数の人たちで相続を受けた、共同所有の土地についても利用可能ですが、その際には共有者全員での申請が必要になります。
 

この制度を利用できる土地

相続した土地全てが、この制度を利用できるわけではありません。法令が定める「引き取れない土地の要件」に当てはまらない土地のみ、国に引き渡すことができます。国が引き取れない土地は、通常の管理や処分をするに当たり、多くの費用や労力が必要になるからです。
 
引き取れない土地として以下のような、「申請段階で却下となる土地」や「該当すると判断された場合に不承認になる土地」の要件があります。
 


出典:政府広報オンライン 相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」
 

相続土地国庫帰属制度を利用する際の費用負担

この制度を利用する際には「審査手数料」と「負担金」が費用としてかかります。審査手数料は申請の際にかかる手数料で、1筆(登記上の土地の個数の単位)の土地ごとに1万4000円の費用がかかります。
 
負担金は土地の種目や属している区域などに応じた、標準的な管理費用を考慮して、その10年分に相当する額として算出されます。
 
負担金は、面積にかかわらず1筆ごとに20万円が基本です。また、同じ種目の土地が隣接している場合は、負担金の合算を申請することが可能です。その場合の負担金は、2筆以上でも1筆分の20万円が基本となります。
 
ただし、市街化区域や用途地域に指定された地域にある宅地や農地、あるいは森林などは、その土地面積に応じて負担金が算出される場合もあります。その算定式は以下のとおりです。
 


出典:法務省 相続土地国庫帰属制度の負担金
 

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まとめ

相続土地国庫帰属制度は、管理も大変で売却もしにくい土地を処分できるメリットがある一方で、国に引き取ってもらう際に費用負担が発生するというデメリットもあります。
 
さらには、国が引き取り可能な状態の土地とするため、例えば、建物の撤去などの工事費用が必要となる場合もあるかもしれません。具体的な対応をする際は、税理士など専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。
 

出典

政府広報オンライン 相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」
法務省 相続土地国庫帰属制度の負担金
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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