更新日: 2023.07.25 その他相続

夫が47歳で急逝。義母が「遺産全部もらいます」と宣言してきましたが、妻の私は立場が弱いのでしょうか…?

夫が47歳で急逝。義母が「遺産全部もらいます」と宣言してきましたが、妻の私は立場が弱いのでしょうか…?
夫が急逝したとき、問題となるのが相続です。十分な相続対策ができていない状態で急逝すると、夫の肉親との間で相続争いが起こる可能性もあります。
 
そこで、夫が47歳という若さで急逝し、義母に相続財産のすべてを渡すよう要求されたAさんの事例を基に、相続について考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

義母に財産が渡ることは、基本的にはない

法律で相続人となれる方の範囲は決まっています。これを法定相続人といいます。そして、妻は必ず相続人となると定められています。
 
そして、妻とともに相続人となるのは原則として子(子が亡くなっていれば孫、孫も亡くなっていればひ孫)であり、義母(つまり亡くなった夫から見た親)ではないのです。親の相続順位は第二順位であり、子に劣後します。つまり、義母が財産を相続できるのは子がいない場合です。
 
今回の相談者であるAさんの家族構成は以下です。

・妻
・子
・義父母

Aさんの家族構成の場合、子がいる以上義母は相続人とはなり得ません。配偶者は常に相続人となりますし、配偶者とともに相続人になるのは、その時点で相続順位が一番高い人です。すると、親である義母よりも相続順位の高い子が、相談者であるAさんとともに相続人となるわけです。
 
義母が「遺産全部もらいます」と主張したところで、義母には財産を受け取る権利はありません。つまり、Aさんは義母に遺産を一切渡す必要はないのです。
 
なお、配偶者の相続分(法定相続分)は遺産全体の2分の1とされており、配偶者は相続財産の半分を受け取ることができます。そして残りの半分は同じく法定相続分が2分の1とされている子にわたります。
 

遺言書の存在は重要である

今回の事例において、遺言書は存在していませんでした。しかし、もし遺言書があり、義母に相続財産を相続させる旨が記載されていれば、義母も相続財産を受け取る権利が生じます。
 
例えば、「相続財産のうち〇〇は、義母に相続させる」という記載があれば、その財産については義母に渡す必要があります。また、「遺産の半分を義母に相続させる。」などと相続割合で記載してあるような場合は、義母も相続人となって一緒に遺産分割をすることになります。
 
いずれにせよ、遺言書があれば、その内容次第で結論も変わってしまうのです。遺言書は亡くなった方の最後の意思表示がなされたものであり、そこで相続財産の帰属を自由にさせることができるようになっています。
 

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遺言書があったとしても全額は義母に渡らない

仮に遺言書に「義母に全財産相続させる」と記載があったとしても、実際に義母が遺産を全額受け取ることは難しいでしょう。なぜなら、法律には遺留分という規定があり、相続人には最低限の相続分が定められているからです。その点、妻が相続人となっている場合の遺留分は、法定相続分の2分の1とされています。
 
それを、各相続人に法定相続分で分配します。今回の事例で遺留分について考えると、妻と子は、遺産全体の4分の1の遺留分をそれぞれ有するということです。
 
つまり、本事例において義母に全財産相続させる遺言があったとしても、遺留分によって義母は2分の1までしか遺産を得ることができないことになります。遺留分は遺言書によっても排除できない強力な効果を持っているからです。
 
ここで、「義母には遺留分がないのか?」と疑問が湧くでしょう。もちろん義母にも遺留分はあります。しかし、遺留分を行使できるのは、その時点で相続人となっている方です。今回の事例において相続人は妻と子であり、義母は相続人ではなく、義母には遺留分はありません。
 

相続において妻の立場は非常に強い

相続において、配偶者たる妻の立場は非常に強くあります。常に相続人となれ、かつ、遺留分も確保されることから、基本的に夫が47歳という若さで急逝し、義母から財産を渡さないといわれようと、相続財産を受け取ることができます。
 
相続は法律が複雑で、親族間でトラブルになりやすい問題です。また47歳という若さでも亡くなるリスクはあり、それに伴う遺族の相続トラブルが発生することもあり、人ごとではありません。
 
自分たちに相続の話はまだ早い、関係ないとは考えず、行政書士など専門家へ相談の上、遺言書を作成し、相続トラブルを防げるようにしておくことをおすすめいたします。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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