更新日: 2023.07.29 贈与

親に援助を頼まれた! 贈与税はかかるの?

親に援助を頼まれた! 贈与税はかかるの?
毎年、年金は物価スライドなどによって支払額が改定されますが、令和5年度の年金額は少し増額されました。ただ、この増額によっても、立て続けの物価高による影響はカバーしきれていないのが現状であり、年金生活者にとっては厳しい生活が続くでしょう。
 
年金生活者である親から援助を頼まれることも今後はあるかもしれません。こんな場合に、親には贈与税がかかるのか、親子間で支援をした場合の取り扱いを知っておきましょう。
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

どんな時に贈与税はかかるのか

親から援助を頼まれた場合、どんな援助にすればよいのでしょうか。「一時的にお金を援助するのか」、それとも「毎月いくら」という形にするのか、すぐには決められないかもしれません。援助はしたいものの、援助をすることで親が贈与税を支払うことはあるのでしょうか。
 
贈与税がかかるのは、次の場合です。「贈与税は、1人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります」(出所:国税庁)
 
つまり、1月から12月までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかからないということです。一時金で100万円、もしくは月々5万円など、どちらの方法をとっても110万円以下ですので、贈与税はかからず、もちろん贈与税の申告も不要となります。
 

税金上の扶養にしてもらうという選択肢

親に援助を頼まれたとき、贈与税以外に知っておきたいのは「扶養」の知識です。単に、お金を援助するのか、それとも子どもの扶養に入るという選択肢をとるかを選べます。
 
ただ、注意しないといけないのは、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」という言葉は同じ意味ではないということです。ここで、税法上の扶養について説明しておきましょう。
 
もともと、親族を扶養していると「扶養控除」という税控除ができます。原則として、扶養される親の所得金額が48万円以下であれば、38万円の控除金額を子の所得から引くことができます。さらに、老人(12月31日時点で70歳以上)が扶養親族ということになれば、10万円プラスの48万円を控除できます。
 
ただ、この「所得控除」というメリットは、援助する側である「子の税金が下がる」という意味ですから、親側が受けられる税法上のメリットではありません。ただ、子が支払う税金が下がれば、親へも援助しやすくなるでしょう。
 

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扶養には社会保険という選択肢もある

社会保険上の扶養にする条件ですが、原則として130万円(60歳以上の年金所得がある方は180万円)未満、かつ被保険者の年間収入の2分の1未満であることです。
 
税金のように1月1日から12月31日までという範囲は決まっておらず、社会保険上の扶養に入れようとする時点で、これから130万円(もしくは180万円)未満の収入が見込まれるという条件を満たせば社会保険上の扶養になることができる、すなわち、健康保険料を自分で支払わなくて済むようになります。
 
社会保険料が節約できれば、親の生活も少しは楽になるはずです。ただ、実際に援助をしていないのに、名目上、扶養に入れるということはできません。援助をしているかどうか、健康保険組合などや日本年金機構から扶養についての調査が行われることもありますので、実態を合わせることが必要です。
 

ライフプランから見た親への援助

親から援助を依頼された場合、すぐに「いいよ」といえる方も多くはないでしょう。子の世帯も、教育費がかかったり、住宅ローンを抱えていたりと、お金のかかる時期であることも多いからです。ただ、すぐにお金の援助ができなくても、できる援助はあります。例えば、社会保険上の扶養に入れたり、家計の見直しを一緒に行ったりするということです。
 
今回もし援助を始めて、ずっと継続することとなれば、子の家計にも影響を及ぼすこととなります。これまで計画的にできていた貯蓄ができなくなったり、子の老後資金が不足したりすることも考えられます。
 
「今」援助を依頼しないと本当に親は生活できないのか、親の家計が厳しくなった原因は何なのか、一緒に確認し、家計の見直しをすることは、目に見えないものの援助の1つといえるでしょう。
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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