更新日: 2023.07.31 贈与
子どものためにもらったお祝いやお小遣い、子ども用の口座に貯金したら、贈与税が発生する?
本記事では、贈与税をテーマに、子ども用の口座に貯金をしておくときの注意点について、解説します。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
贈与税がかかる場合と課税方法
贈与税については、相続税法に、以下のように規定されています。
(贈与税の課税)
第21条 贈与税は、この節及び次節に定めるところにより、贈与により財産を取得した者に係る贈与税額として計算した金額により、課する。
つまり、贈与税とは、個人が贈与により財産を取得したときに、その財産の金額に対して課される税金ということです。
なお、「贈与」については、民法に、以下のように規定されています。
(贈与)
第549条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
つまり、「贈与」というためには、財産を与える側と受け取る側の、双方の意思表示が必要であるということです。
贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」があります。
暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた残りの金額に課税する方法です。一方、相続時精算課税とは、贈与者ごとに1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額から、特別控除額2500万円を差し引いた残りの金額に課税する方法です。
子ども用の口座に貯金をしておくときの注意点
銀行口座は、子ども名義であっても開設することができます。子どものためにもらったお祝いやお小遣いを、その口座に貯金しておくのも良いでしょう。注意しなければいけないのは、その口座が「名義預金」とならないようにすることです。
名義預金とは、口座の名義人と実際に預金する方(管理する方)が異なる預金(名義だけの預金)のことをいいます。例えば、口座の名義人が子どもで預金する人が親である場合、名義預金とされます。このようなケースは珍しくなく、子どものお金を親が預かって預金する場合や、子どもに将来渡すために子ども名義の口座に親が預金していく場合などが、名義預金とされます。
先述のとおり、贈与税は、1年間で受けた贈与の合計額が110万円以下であれば、原則として課税されません(暦年課税の場合)。子どもにと受け取ったお祝いやお小遣いが年間110万円以下であれば、贈与税の心配をしないのが普通でしょう。注意しなければいけないのは、名義は子どもであっても、預金・管理をしているのが親であれば、その口座は名義預金とみなされることです。
名義預金が問題なのは、その口座の所有者が、その口座の名義人ではなく、その口座に預金している方・その口座を管理している方とされる点にあります。
つまり、親が子どものためにと、子どもの口座に預金をしていったところで、実体としては、親が自分の口座に預金しているとみなされるということです。そして、実際に子どもがそのお金を使う・管理するタイミングで、親から子へ、贈与をしたことになります。このときの預金残高が、贈与税の課税対象となります。
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まとめ
子どものためにもらったお祝いやお小遣いを、子ども用の口座に貯金するとき、場合によっては贈与税が課税される可能性があります。贈与税が課税されるのは、暦年課税の場合、1年間で贈与を受けた財産の合計額が110万円を超えるときです。
ここで注意しなければならないのは、子ども用の口座が名義預金とみなされないようにするということです。名義預金とは、口座名義人と口座管理者・預金者が異なる預金のことをいい、子ども名義の口座は名義預金とみなされやすいといえます。
名義預金の場合、口座の管理者が名義人となったときに、贈与が発生したと考えます。つまり、このときの預金残高が110万円を超えていれば、贈与税の課税対象となります。
子ども用の口座を名義預金とみなされないためには、以下のような実態が必要です。
●子どもが自分用の口座であると認識している
●子どもが自分で預金している
●子どもが口座(通帳や印鑑)の管理をしている
子どもの将来のために、お金を貯金しておきたいという親心は、よく分かります。ですから、贈与税の仕組みや法律をよくご理解いただき、思わぬところで課税されないようにしていただきたいものです。
出典
e-Gov法令検索 「民法」
e-Gov法令検索 「相続税法」
国税庁 「No.4402 贈与税がかかる場合」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー