更新日: 2023.08.07 その他相続

「遺産を1円も渡したくない!」相続人から外れてほしい身内を除外することはできる?

執筆者 : 菊原浩司

「遺産を1円も渡したくない!」相続人から外れてほしい身内を除外することはできる?
相続の際、特定の相続人に遺産を渡したくないといった場合、そうした身内を相続から除外することは可能なのでしょうか?
 
また、配偶者といった特定の相続人に財産を遺すには事前にどういった準備が必要なのでしょうか? 解説していきます。
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

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相続人からの除外は難しい

相続では、配偶者や子どものほか両親と兄弟姉妹などが法定相続人となる場合があり、遺言書がない場合は各法定相続人に相続財産を一定の割合(法定割合)で受け取る権利が生じます。
 
しかし、法定相続人の中には故人にとって親しい方もそうでない方もいます。そして親しい方に可能な限り多くの財産を遺してあげたいということもあるでしょう。
 
特定の法定相続人を相続から除外するには、遺言書または生前に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
 
しかし、ただ申し立てれば法定相続人から除外されるというわけではなく、申し立てが認められるには故人への虐待や侮辱などの重大な非行行為があった場合などの特段の理由が必要となります。
 
また、法定相続人の除外が認定されるケースは少ないため、実際には相続から除外するよりも相続財産を渡したい相続人に確実に渡せるように準備していくことが大切です。
 

特定の相続人に遺産を遺すには?

相続では、死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、相続順位に従い、上の順位の相続人がいない場合、下の順位の相続人が、配偶者と一緒に相続人になります。
 
相続の順位は1位が故人の子ども、2位が故人の両親、3位が故人の兄弟姉妹となるため、夫婦間に子どもが居らず、故人の両親や兄弟姉妹が健在の場合、遺言書による指定がなければ配偶者に相続財産がすべて渡らず、故人の家族・親族が相続してしまう可能性があります。
 
また、子どもがいる場合でも親子関係がうまくいっていない場合は、相続によって財産を分割するためマイホームの売却を迫られるなどして居住を続けることが困難となってしまうかもしれません。
 

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遺言書で相続人を指定した場合は?

こうした事態を避けるには遺言書で配偶者に財産を相続させる意思表示をすることが重要ですが、故人の子どもや両親には遺留分が生じるため、遺言書を用いても全部を相続させることができない場合もあります。
 
故人の相続財産は遺族が以後の生活を営むための大切な資産です。遺留分によって目減りしてしまうと以後の生活が困難になる恐れがあります。法定相続人の遺留分に備えるには、事前に贈与するなどして相続財産を減らしておくことが有効です。
 
しかし、相続の際に故人が所有していたマイホームと現預金を分割する際、配偶者がマイホームを相続すると現預金の相続額が減ってしまう恐れがあります。そこで、マイホームに配偶者居住権を登記しておけば、配偶者はマイホームの所有権を相続しなくとも一定期間居住可能になります。
 
この配偶者居住権は、夫婦の一方が亡くなった場合に,残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、亡くなるまでまたは一定の期間、無償で居住することができる権利です。
 
配偶者居住権は、建物の価値を「所有権」と「居住権」に分けて考え、残された配偶者は建物の所有権を持っていなくても、一定の要件の下、居住権を取得することで、亡くなった人が所有していた建物に引き続き住み続けることができます。また、配偶者居住権の相続税評価額が低ければ配偶者が現預金などを多く相続できる可能性があります。
 
配偶者居住権は建物の耐用年数と配偶者の居住期間の設定によって、効果が異なるため税理士などの専門家に相談してから使用されることをおすすめします。
 

まとめ

相続の際、配偶者の他に故人の子どもや両親・兄弟姉妹にも相続権が生じます。遺言書で配偶者にすべてを遺すとしても故人の子どもや両親の遺留分を犯すため、結局は財産が分散してしまう可能性があります。
 
相続財産が分散してしまうと、配偶者などの近しい遺族の生活費が不足してしまうかもしれませんし、遺産分割のためマイホームからのを転居を余儀なくされる恐れもあります。
 
財産をしっかりと相続させるには事前の準備が欠かせませんが、特定の親族を法定相続人から除外することは実際には難しくなっています。
 
特定の法定相続人を除外するのではなく、親しい方に多くの財産がわたるよう、遺言書や生前贈与、マイホームへの配偶者居住権の登記などを用いて対策を立てていくようにしましょう。
 
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表

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