更新日: 2023.08.12 相続税

【相続税対策】 病院や老人ホームで亡くなった場合、「小規模宅地の特例」を受けられる?

執筆者 : 新美昌也

【相続税対策】 病院や老人ホームで亡くなった場合、「小規模宅地の特例」を受けられる?
敷地面積が小さい居住用宅地や事業用宅地を相続した際、一定の条件を満たすと宅地の評価額が20%になる特例があります。居住用小規模宅地の特例は、被相続人(亡くなった方)が居住していた宅地等を相続することが必要です。
 
被相続人が病院や老人ホームで亡くなった場合、被相続人が居住していた宅地等として、特例を受けることができるのか解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

居住用小規模宅地の特例とは

居住用小規模宅地の特例とは、個人が相続や遺贈によって取得した財産のうち、被相続人が居住していた宅地等を、配偶者や同居していた子ども等が相続した場合、面積330平方メートルまで、相続税の課税価格に算入すべき価額が80%減額になる制度です。
 
たとえば、相続開始の直前において居住していた家屋の敷地(面積300平方メートル、評価額3000万円)を相続した場合、相続税の課税価格に算入すべき価額は600万円となります。
 
特例を受けるには、取得者ごとに条件が異なります。詳細は国税庁のホームページでご確認ください。
 

(1) 被相続人の配偶者が取得者の場合

無条件で特例を受けることができます。
 

(2) 同居していた親族(子どもなど)が取得した場合

相続税の申告期限まで住み続け、かつ保有を続けることで特例を受けることができます。
 

(3) 上記(1)・(2)以外の親族(別居の子どもなど)が取得した場合

たとえば、亡くなった親がひとり暮らしで、子どもが別居している場合などです。このようなケースでは、相続税の申告期限まで保有を続けることで、居住しなくとも特例を受けることができます。
 
ただし、別居している子どもが自宅を所有している場合や、子どもの配偶者名義の自宅を持っている場合は、特例を受けることができませんので注意しましょう。
 

病院で入院中に被相続人が亡くなった場合

病院で入院中に被相続人が亡くなった場合、特例は受けられるでしょうか。
 
入院は一時的なもので、病気が治れば自宅に戻るのが一般的ですので、入院前の状況で判断されます。
 
つまり、入院前に被相続人が自宅に居住していたのであれば、被相続人の特定居住用宅地として取得者が条件を満たせば特例を受けることができます。
 

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老人ホームに入居中に被相続人が亡くなった場合

老人ホームに入居中に被相続人が亡くなった場合、特例は受けられるでしょうか。
 
老人ホームは病院と異なり、一時的な治療の施設ではなく生活の拠点と考えられますので、被相続人が入所前に居住していた自宅は、特定居住用宅地に当たらないとも考えられます。
 
しかし、介護を受けるために入所している方の中には自宅での生活を望んでいて、いつでも帰れるように自宅の維持管理に努めている方もおり、老人ホームに入所したことをもって、一律に生活の拠点を移したとみるのは実情にそぐわない面があります。
 
そこで、以下の2つの条件を満たせば特例を受けることが可能とされています。

(1) 被相続人が、相続の開始の直前において介護保険法等に規定する要介護認定等を受けていたこと
老人ホーム等に入居等をする時点において、要介護認定等を受けていない場合であっても、その被相続人が相続開始の直前に要介護認定等を受けていれば、特例を受けることができます。
 
(2) その被相続人が老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に入居、または入所していたこと
ただし、特別養護老人ホーム等に入居等後に、事業の用または新たに被相続人等以外の者の居住用に供されている場合を除きます。たとえば、同居していない親族が空き家になった建物に居住した場合には、特例を受けることができません。

以上のように、居住用小規模宅地の特例を利用するためには、いくつかの要件がありますので注意しましょう。
 

出典

国税庁 老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例(平成26年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する場合の取扱い)」
国税庁 No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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