特別受益の金額が相続分を上回ってしまった!この場合、上回る部分を他の相続分に返さないといけない?
配信日: 2018.08.21 更新日: 2019.05.17
では、その際に特別受益の金額が自己の相続分を超えてしまっていたような場合にはどうなるのでしょうか。
相続分を超えた部分について他の相続人に返す必要があると思いますか?それとも、そのまま返さなくてもよいと思いますか?
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
特別受益の金額が相続分を超えていた!
Aさんは母と弟の3人で、父の遺産(現金1000万円)の相続について話し合っていました。
Aさんは過去に家を建てるための援助として父から400万円を受けていました。
これは特別受益に該当するため、特別受益を含めた1400万円を遺産として法定の相続分どおり分けることになりました。(配偶者である母が半分(2分の1)、残りの半分を兄弟でさらに半分(4分の1)ずつ)
そこで、特別受益を含め一旦仮の相続分について計算してみたところ、Aさんは特別受益の金額が相続分を超えており、マイナスになっていることが判明しました。
☆各人の仮の相続分の計算結果☆
・母…700万円(1400万円÷2)
・Aさん…-50万円(700万円÷2-特別受益400万円)
・Bさん…350万円(700万円÷2)
この計算過程を知ったBさんはこう述べました。
「この時点で既に兄さん(Aさん)は相続分がマイナスになっているじゃないか。このマイナス分は僕たちに返還するべきじゃないの?このままだと不公平だと思うよ。」
さて、Aさんは計算過程においてマイナスとなっている50万円について、母とBさんに返還しなければならないのでしょうか。
基本的に超過分の返還は必要なし!
結論から先に述べると、Aさんはマイナスとなっている50万円について母とBさんに対して返還する必要はありません。
なぜなら、特別受益の超過分について返還しなければならないという決まりは法律や判例において存在しないからです。
実際に特別受益のある場合の相続分について定めた民法903条でも、2項において「特別受益が相続分と同等以上のときは相続分を受けることができない」とされているだけで、返還まで必要とはされていません。
これについて、他の相続人からすれば少し不公平に感じてしまうことでしょう。
しかし、返還が必要だとしてしまうと、ただでさえ複雑な相続問題がさらに複雑と化してしまいます。
それだけでなく、特別受益の存在は被相続人が特定の相続人に多く財産を残してあげたいという生前の意思の表れでもあります。
被相続人(今回の事例ではAさんとBさんの父)の意思を最大限尊重しようというのが民法における相続の考え方です。このような理由から特別受益の超過分について返還する必要はないと考えられます。
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遺留分との関係にも注意!
基本的に特別受益の金額が相続分を超過していても、超過する部分について返還する必要はありません。
しかし、場合によっては特別受益の超過分が他の相続人の遺留分(簡単にいうと各個人に保証された最低限の相続分)を侵害していることもあるでしょう。
その場合、遺留分を侵害している範囲において、超過分を返還しなければならない可能性があるため注意してください。
今回の事例においては遺留分についての問題は取り上げませんでしたが、実際の相続では遺留分について問題となることもありえます。
相続人の間に特別受益のある人が存在する場合は一度専門家へ相談するとよいでしょう。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー