母の遺言に「タンス預金300万円は孫3人で分けて」とありましたが、1人あたり100万円だったら税金はかかりませんか?
配信日: 2023.08.24 更新日: 2023.08.25
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
タンス預金も相続税の対象となる
亡くなった方が有していた財産は、たとえタンス預金であったとしても、相続税の課税対象となります。つまり、母が遺言で彼女の孫に相続させるとしたタンス預金300万円も、相続税の課税対象になるということです。孫3人に300万円を1人100万円ずつ相続させる、という内容だったとしても、その点について変わりはありません。
亡くなる前に財産を譲り渡す通常の贈与であれば相続税は原則としてかからず、年間110万円までであれば贈与税もかかりません(亡くなる前3年以内の贈与を除く)。
しかし、今回の場合、母は遺言で具体的な金額を指定して、彼女の孫にお金を渡しています。この場合、具体的に何円のお金という、いわば特定の財産を譲り渡していることになり、本件は「特定遺贈」となります。特定遺贈を受けた方は、その遺贈の額に応じて相続税を負担することになります。
何円から相続税の対象となる?
相続税は、財産が1円でもあればかかるわけではありません。相続財産が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。
この基礎控除の額は3000万円+(600万円×法定相続人の数)となっています。例えば、母の財産を相続する人が自分1人と自分の子どもたち(母から見た孫3人)の合計4人であれば、基礎控除の額は3600万円となります。なぜなら、ここでいう孫3人は基本的に法定相続人とはならないため、基礎控除の額の計算に含まれないからです。
3人の孫の親(自分から見た兄弟姉妹)がすでに亡くなっており、その孫がおのおの自身の親に代わって相続人となっている場合(いわゆる代襲相続)は別ですが、そうでない場合、孫は法律上の相続人ではないため、基礎控除の額は増えないのです。
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相続税がかかる場合の手続きは?
もし、相続財産の額が、タンス預金含めて3000万円+(600万円×法定相続人の数)を超えているときは、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、亡くなった方の住所地の所轄税務署への相続税の申告と納税が必要です。各相続財産を得た方の住所地ではなく、亡くなった方の住所地とすることに注意してください。
10ヶ月というと長く感じられるかもしれませんが、決して余裕があるとはいいきれません。相続手続き以外にも、葬儀の手配や遺品の整理、お墓の手続きなどを、日常生活と並行して進めていかなければなりません。悠長にしていると、期限ぎりぎりとなってしまう可能性もあります。
タンス預金の存在が発覚したら、タンス預金含めて相続税について考えること!
タンス預金は必ずしも非課税ではなく、他の相続財産と含めて相続税の課税対象となります。
贈与税の場合は1人当たり年間110万円まで非課税になりますが、今回の事例にあるように、相続人ではない孫であっても、遺言で財産を受け取るとなると相続税の対象となります。相続税は3000万円+ 600万円×法定相続人の数の範囲内であれば非課税ですが、それを超えると申告と納税手続きが必要になります。
「もしかして相続税が発生するのか」と心配になったときは、念のために、亡くなった方の住所地を管轄する税務署に確認することをおすすめします。
出典
国税庁 相続税の申告のしかた
執筆者:柘植輝
行政書士