更新日: 2023.09.25 その他相続
子どもへの財産分与をしたくないです… 生前にやるべきことは何でしょうか?
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
遺言だけでは財産分与を拒否できない
子どもに財産分与をしないということを遺言に記載すれば、その子どもに財産をわたさなくて済むと考えるかもしれませんが、そう簡単ではありません。
法律的には被相続人の子どもには相続権があり、かつ遺留分という最低限の遺産割合をもらえる権利があるため、遺言でその権利を奪うことはできません。
遺留分とは?
遺留分とは、被相続人(亡くなった人)の法定相続人に最低限保障される遺産取得分をいいます。被相続人の子どもや配偶者などの近親者は、相続財産を取得する権利を持っており、この権利は遺言によっても無効にはできません。
遺留分が認められる相続人
亡くなった方の配偶者や子どもや孫、ひ孫などの直接の子孫(直系卑属)、親や祖父母、曽祖父母などの直接の先祖(直系尊属)の方々について遺留分が認められています。
したがって、遺言に子どもへ財産分与をしないように記載したとしても、子どもは遺留分をもらう権利があるので、遺言では財産分与を無効にできません。
遺留分の割合
遺留分は、「法定相続割合の2分の1もしくは3分の1」と定められています。遺留分の割合については、相続人の血縁関係や組み合わせによって変わってきます。
例えば、相続人を子ども2人(兄、弟)と配偶者とした場合に、遺留分については、法定相続割合の2分の1であり、図表1のようになります。
【図表1】法定相続割合と遺留分
相続人の廃除をすれば財産分与拒否が可能
相続人の廃除
いままで見てきたように、遺言では、子どもには相続権があり、遺留分については相続されてしまうため、財産分与を拒否することはできません。
どうしても親子関係が破綻した子どもに自分の財産を残したくないのであれば、相続人の廃除という制度を活用することで、相続人が持っている相続権だけでなく遺留分についての権利も剥奪できます。
廃除の手続きと条件
具体的な手続きとしては、遺言をする方がお住まいの地域を管轄する裁判所に申し立てを行い、そこで「相続人の廃除」が認められる必要があります。
ただし、次の条件が必要です。
1. 相続人が被相続人に対して虐待・重大な侮辱を加えたとき
2. その他の著しい非行があったとき
したがって、ただ単に仲が悪いだけやしばらく会っておらず疎遠になっているだけなどの場合には、廃除の条件を満たしていないとのことで認められない場合がありますので留意をする必要があります。
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まとめ
子どもに自分の財産を相続させたくない場合には、遺言書に、その旨を記載するだけでは対応が不十分です。つまり、相続人である子どもには相続権があり、かつ最低限相続することができる遺留分については、相続する権利が残るからです。
その遺留分も含めた権利を剥奪するためには、家庭裁判所に「相続人の廃除」を申し立て、認められる必要がありますが、認められるための条件があり、その条件をクリアする必要があります。
実際に「相続人の廃除」の申し立てをして、相続権を奪うのは容易ではないので、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー