更新日: 2023.09.30 その他相続
相続した土地を分割して売却したら、突然「逮捕」もあり得るって本当?
なぜ、相続した土地を分割して売るだけで「逮捕」という話になるのでしょうか。土地を相続する可能性のある方に知っておいてほしい、不動産売買のルールについて解説します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
不動産を売買するときには宅建業の免許が必要なのか
ただ単に1回きり、土地や建物といった不動産を売却するだけであれば、特別な許可なく自由にできます。
しかし、不動産の売買を「業として(簡単にいうと事業として)行っている」と判断されると、宅地建物取引業(宅建業)に該当するとして、宅地建物取引業の許可が必要になってしまいます。この許可が必要かどうかは一概に不動産の価格だけでは決まらず、売買に至った経緯や売買の頻度などが判断基準となります。
不動産は数百万円どころか、1000万円以上も当たり前、場合によっては億を超えることもあり、トラブルの対象になりやすいものです。そのため、一定の条件に該当する場合は許可が必要ということになっています。
宅建業許可が必要なところ、それを知らずに違反すると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、場合によってはその両方が科されるなど、とても重い罰則を科される可能性もあり注意が必要です。参考までに、令和4年において宅地建物取引業法(宅建業法)違反で摘発された件数は、11件となっています。
相続した土地を分割して売却することで、逮捕されることはあり得るのか
それでは、相続した土地を分割して売却することが、なぜ宅建業法違反に該当するのか、考えていきましょう。
細かい要件はあるものの、主に問題となりやすいのが「業に該当するか」、特に「反復継続性を有しているか」という点でしょう。反復継続性とは、不動産を繰り返し売買することを指す言葉です。
正直これについて明確な基準があるわけではなく、個別具体的な事情により判断するところがありますが、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」によれば、たとえ1回の売却であっても、区画割りして複数の者に対して行われる場合は「反復継続性があり、売買が業として行われている」とみなされることがあります。
また、自ら土地の購入者を募集して一般消費者に販売する行為は、事業性が高いともされています。その点を鑑みると、相続した土地を分割して売却する行為は、宅建業法違反により逮捕されてしまう可能性もなくはありません。
ただし、相続した物件の取引や相続税の納税のための売却は、事業性が低いともされています。画一的な基準がない以上難しい問題ではありますが、逮捕もありうるということも考慮して、売却を考えるべきです。
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相続した土地を分割して安心して売るなら?
相続した土地をどうしても分割して安心に売りたいというのであれば、不動産会社を通じて売却することをおすすめします。不動産会社を通じての売買であれば、宅建業法違反に問われることもありません。
ここで、気になるのが手数料です。不動産会社に依頼する以上、そこには一定のお金が発生しますが、無制限に高い手数料が生じるというわけではなく、一定の計算式によって上限が定められています。具体的には、下記の計算式によって、不動産の価格に応じた上限額が設定されています。
・200万円以下の部分…価格の5%+消費税
・200万円を超え400万円以下の部分について…価格の4%+消費税
・400万円を超える部分…価格の3%+消費税
例えば、1000万円の不動産を売った場合、手数料は最大39万6000円程度かかる可能性があります。なお、実際の手数料については地域や不動産会社によって異なります。そのため、いくつかの不動産会社に相談をしておくことをおすすめします。
まとめ
相続した土地を分割して売却すると宅建業法違反となり、逮捕されたり罰金が科されたりする可能性もあります。この点は個別具体的な事情を加味するため、判断が難しい部分もあります。
相続した土地を分割して安心して売りたいのであれば、最寄りの宅地建物取引業協会や、一定の報酬はかかるものの不動産会社へ相談することをおすすめします。
出典
国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方
警視庁 令和4年における生活経済事犯の検挙状況等について
国土交通省告示第四百九十三号
全宅連 都道府県宅建協会・不動産無料相談所一覧
執筆者:柘植輝
行政書士