更新日: 2023.10.02 その他相続

子どものいない夫婦が亡くなったら、所有マンションはどこへ相続される?

執筆者 : 大竹麻佐子

子どものいない夫婦が亡くなったら、所有マンションはどこへ相続される?
単身世帯、子なし夫婦世帯、子あり同居・別居世帯など生活スタイルはさまざまですが、自分らしく、充実した毎日を過ごせることが何より大切です。そして、自分の亡き後のことについても考えておきたいものです。
 
あまり考えたくないことかもしれませんが、とくに単身や子なし世帯にとっては、財産がどこへ、どのように引き継がれるのかについて知っておくとともに、想いを遺すことも大切です。
 
この記事では、子なし夫婦が自分たちの亡き後、所有マンションが誰に、どのように引き継がれるのかについて解説します。
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP🄬認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

財産は、法定相続人に引き継がれる

個人の財産は、所有者が亡くなると法定相続人に引き継がれます。法定相続人とは、法律(民法)で定められた被相続人(亡くなられた方)の財産を引き継ぐことのできる人のことを言います。
 
被相続人の配偶者は常に相続人となります。夫が亡くなったときに妻がいれば妻は相続人となり、妻が亡くなったときに夫がいれば夫は相続人となります。
 
民法では、法定相続人となる人の範囲と順位、そして、ここでは割愛しますが、相続割合が定められています。第1順位は子であり、子がいなければ第2順位として親などの直系尊属が配偶者とともに相続人となります。さらに第3順位は兄弟姉妹となります。兄弟姉妹も亡くなっていればその子(被相続人にとって甥や姪)が法定相続人となります。
 
子や親(直系尊属)、兄弟姉妹(代襲ふくむ)がいない場合に限り、配偶者はすべての財産を相続します。子なし夫婦の場合、すべての財産を配偶者が引き継ぐと誤解する人も多いですが、第2順位、第3順位が規定されているため、すべてとは限らないことに注意が必要です。
 
相続財産のすべてを配偶者に引き継ぐためには、遺言書に記載する必要があります。亡くなられた人の最期の意思表示は法律よりも優先されます。
 
なお、遺言書がない場合でも、話し合い(遺産分割協議)によりすべての相続人の合意が得られれば、すべての財産を配偶者が引き継ぐことも可能です。いずれにしても、後でもめることのないよう生前の対策をおすすめします。
 

遺された配偶者が亡くなった後は

子なし夫婦で夫婦のうち一方が亡くなり、遺言もしくは遺産分割協議によって配偶者が自宅マンションの所有権をすべて引き継いだ場合でも、遺された配偶者が亡くなると、あらためて相続手続きを行うことになります。
 
この時点で、相続人となるべき配偶者も子もいないため、法定相続人となるのは、第2順位の遺された配偶者の親など直系尊属です。とは言え、年齢によってはすでに他界していることも想定されます。そういった場合には、民法に定める順位にしたがって、第3順位の兄弟姉妹が相続人となり、すでに他界している場合には、その子が代襲します。
 

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法定相続人がいない場合は、国に帰属する

少子高齢化が進み、相続が発生した時点ですでに相続人がいない「相続人不存在」と言うケースも見られます。そういった場合には、利害関係人や検察官が家庭裁判所に申し立てることで、相続財産清算人が選任されます。
 
相続財産清算人は遺産の管理・処分を行ったうえで、相続財産が残った場合には、相続財産を国庫に引き継いで手続きが終了します。つまり、国に帰属するということです。
 
一連の手続きのなかで、特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もあります。
 

想いを遺すための遺言書

相続人不存在の場合のほか、法定相続人となる甥や姪がいる場合でも、どこに住んでいるのか、どんな人物か分からないというケースも珍しくありません。国や疎遠な親族に渡すくらいなら、お世話になった知人や慈善団体への寄附として「遺贈」することも選択肢です。
 
被相続人が遺言書で、特定の人(団体)に対して遺産を贈与(遺贈)する旨が定められている場合には、相続財産はその特定の人(団体)者に帰属することになります。
 
ただし、遺贈は、一方的な意思表示であるため、財産状況や種類によっては。受贈者が拒否する可能性もあります。また、そもそも遺言書が有効でなければ遺贈は無効となるため、慎重に検討し、作成にあたっては注意が必要です。
 
一方で、甥や姪の立場から考えると、疎遠な親戚の相続により負担が生じる可能性も否定できません。いずれにしても、甥や姪が相続人となり得ることを知るとともに、手間をかけないためにも生前に資産整理について考えておきたいものです。
 

まとめ

高齢化が進む一方で、いつ起こるか分からないのが人の死です。年齢の順とは限らないこともふまえ、また、あまり可能性は高くないかもしれませんが、夫婦の同時死亡などもふくめて、複数のパターンで考えておくことも大切です。
 
自分の亡き後のことについては、自分自身でできないからこそ、事前に検討し、準備をしておきたいものです。なお、慈善団体などへの遺贈にあたっては、信頼できる団体かどうかをきちんと見極める必要性とともに、受け入れの可否について事前に相談しておくことをおすすめします。
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP(R)認定者・相続診断士

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