遺言によって遺贈を受けた。これって絶対に受け取るべき?放棄することはできないの?

配信日: 2018.09.02 更新日: 2019.01.10

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遺言によって遺贈を受けた。これって絶対に受け取るべき?放棄することはできないの?
日本の相続制度は被相続人(亡くなった人)の意思が尊重されるような仕組みになっています。
 
その一方で、財産をもらう側の意思はどうなるのでしょうか。
 
「与えたい」という被相続人の意思と「受け取りたくない」という受け手の意思が対立してしまった場合、どちらの意思が最終的に優先されるのでしょうか。
 
柘植輝

Text:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

遺贈は拒否できる?できない?

「畑は知人であるBさんに遺贈する。」
 
Aさんの父が遺した遺言の一部にそのような一文が存在していました。
 
ところが、Bさんに畑を受け取る意思はまったくなく「非常にありがたいことなのですが、私に畑は荷が重すぎます。」とAさんの父からの遺贈を拒否する意思を示していました。
 
それに対し、Aさんは「遺言書に記載がある以上、Bさんが受け取るべきではないか。」とBさんに遺贈を受け入れるよう促しました。さて、BさんはAさんの父からの遺贈を受け入れ、畑を受け取らなければならないのでしょうか。
 

遺贈は放棄することができます

遺言によって財産を譲ることを「遺贈」と呼び、遺言によって財産を譲る方を「遺贈者」受け取る側を「受遺者」と呼びます。
 
今回の事例でいえば、遺言によって財産を譲ろうとしているAさんの父が遺贈者です。
 
そして、遺言によって財産を譲られる側のBさんが受遺者となります。さて、ここで結論といきましょうか。
 
結論として受遺者であるBさんはAさんの父からの遺贈を拒否することができます。
 
そして、遺贈を拒否することを「遺贈の放棄」といいます。なぜ遺言が存在するにもかかわらずBさんは遺贈を放棄することができるのでしょうか。
 
それは、民法986条にて次のように定められているからです。
 

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受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。(1項) 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。(2項)

では、上記の条文を今回の事例に当てはめ、簡単にわかりやすく読み替えてみましょう。
 
すると次のような内容になります。
 
Bさんは、Aさんの父の死亡後、いつでも、畑の受け取りを拒否することができる。(1項)
畑の受け取りは、Aさんの父が死亡したときにさかのぼり拒否されたことになる。(2項)
 
以上の理由により、Bさんは遺贈を放棄することができるのです。
 

放棄の意思はどう示す?

遺贈の放棄は受遺者の意思表示のみによって効果が発生します。
 
なぜなら、遺贈の放棄に特別の様式が定められていないからです。
 
この場合の意思表示の相手方としては、遺贈義務者(遺贈の内容を実現させる義務のある人)などで、放棄についての同意までは必要とされていません。
 
ただし、遺贈義務者などから相当の期間を定めて催告があったものの、その期間内に意思を示さないでいると、遺贈を承認したとみなされることに注意してください。(民法987条)
 

遺言だけがすべてではない

日本の相続制度において、被相続人の意思は充分に尊重されています。
 
しかし、それが絶対というわけでもありません。
 
遺贈があったとしても、受遺者は絶対にそれを受け入れなければならないわけでなく、遺贈を放棄し、財産を受け取らないという選択も可能です。
 
とはいえ、遺贈を受け入れるかどうか催告があったにもかかわらず、長期間返答をしないままでいると、遺贈を承認したとみなされ、放棄の認められないこともあります。
 
自分に遺贈のあったことを知ったときは、結論を先延ばしにするのではなく、できるだけ早く決断を下すようにしましょう。
 
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士

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