自宅を妻に贈与しても贈与税がかからない?今のうちに自宅を妻に贈与したほうが良いだろうか?

配信日: 2023.10.19

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自宅を妻に贈与しても贈与税がかからない?今のうちに自宅を妻に贈与したほうが良いだろうか?
75歳になる男性Aさんからの相談です。
 
「長年連れ添った妻に自宅を譲る場合には、贈与税がかからないか少なくて済むと聞いている。自分が亡くなった後で、妻や子どもたちの間で遺産分割のもめごとが起こらないように、今のうちに妻に自宅を贈与した方がよいだろうか。どのような問題があるかアドバイスが欲しい。」と言った内容です。
村川賢

執筆者:村川賢(むらかわ まさる)

一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

早稲田大学大学院を卒業して精密機器メーカーに勤務。50歳を過ぎて勤務先のセカンドライフ研修を受講。これをきっかけにお金の知識が身についてない自分に気付き、在職中にファイナンシャルプランナーの資格を取得。30年間勤務した会社を早期退職してFPとして独立。「お金の知識が重要であることを多くの人に伝え、お金で損をしない少しでも得する知識を広めよう」という使命感から、実務家のファイナンシャルプランナーとして活動中。現在は年間数十件を越す大手企業の労働組合員向けセミナー、およびライフプランを中心とした個別相談で多くのクライアントに貢献している。

贈与税の配偶者控除

配偶者に不動産を贈与する場合には、国税庁が提示する要件を満たしていれば、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで配偶者控除の特例を受けられます。従って、Aさんが次の要件を満たしていれば、妻に自宅を贈与しても評価額2110万円までなら贈与税がかかりません。
 

(適用要件)

1.夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。
2.配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。
3.贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。

※配偶者控除は同じ配偶者からの贈与は一生に一度しか適用を受けられません。

 
この特例を受けるためには、所轄税務署に必要な書類を添えて贈与税の申告書を提出しなければなりません。なお、この特例を受けた控除額は「生前贈与加算」の対象にはなりません。つまり相続時に相続財産として持ち戻さなくてよいのです。
 

自宅を生前贈与する場合のメリットとデメリット

自宅を配偶者に生前贈与するメリットには、以下のような点があります。
 
1.相続時に相続税の課税対象からこの配偶者控除の金額分を減らせます。もし、自宅を除く遺産総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば、相続人は相続税を払わなくて済みます。

2.遺産分割でもめても、配偶者は確実に自宅に住み続けられます。
 
一方、以下のようなデメリットも考えられます。
 
1.生前贈与で自宅を取得した場合は登録免許税が2%かかるのに対して、相続登記の登録免許税は0.4%です。また生前贈与で取得した場合は不動産取得税がかかりますが、相続の場合はかかりません。このように、相続で自宅などの不動産を取得する場合は税制面でいろいろと優遇されていますが、生前贈与ではありません。

2.自宅を配偶者に贈与した後で配偶者と離婚となるケースや、先に配偶者が亡くなるケースも想定されます。そのようなケースでの問題点も考慮しておいたほうが良いでしょう。
 

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二次相続の問題

注意点として、配偶者に自宅を贈与すると配偶者の資産が増えるため、配偶者が亡くなったときに遺(のこ)された相続人に相続税が多くかかる場合があります。つまり二次相続の問題がないか検討する必要があります。
 

配偶者居住権

「自分が亡くなった後も配偶者が一生自宅に住めるように」という趣旨であれば、遺言や遺産分割の際に配偶者に「配偶者居住権」を付けることもできます。
 
配偶者居住権とは、令和2年4月1日に民法改正により創設されたもので、被相続人が亡くなっても遺(のこ)された配偶者が、同じ家に一生もしくは一定期間無償で住み続けられるようにした権利です。
 
しかし、配偶者居住権は複雑な計算式から導き出される評価額があり、配偶者は受け取る相続財産の一部としてカウントしなければなりません。また、子など他の相続人が同じ住居建物の所有権を持つ場合ではトラブルが生じやすい、第三者から権利を守るための設定登記が必要など、いくつか留意すべき点があります。
 

終わりに

相続に関しては、遺言書にそれぞれの相続人が受け取る遺産内容と金額を書いておくことで、遺産分割のトラブルを回避できることが多いと思います。
 
しかし、自宅のほかに金融資産が少なく遺産分割が難しい場合などでは、生前に配偶者へ自宅を贈与しておくことが相続トラブル回避の一つの方法となるでしょう。詳しくは、相続に詳しい税理士や弁護士などに相談することを推奨します。
 

出典

国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
 
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

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