更新日: 2023.10.19 その他相続
急死した父の借金が1500万円? 息子の自分はどうすべき?
そして、親の相続手続きにあたって、借金があることに初めて気づくといった事例もめずらしくありません。もし、急死した父に1500万円の借金があったことが発覚した場合、息子である自分はどうすべきなのでしょうか。
自分自身の生活を守りつつ、トラブルに発展しないよう慎重に検討し、対応したいものです。本記事では、家族構成やその他の財産状況に応じた解決策について解説します。
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP🄬認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
「相続放棄」で相続しないという選択
借金が残っていた場合に思いつくのは「相続放棄」かもしれません。相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立て、相続人としての地位を放棄することで、借金の返済義務はなくなります。
相続財産は、自宅や金融資産などプラス財産だけでなく、借金など負債のマイナス財産も含みます。そのため、「すべての相続財産を引き継がない」という意思表示により、借金を負わないかわりに、プラスの財産も引き継げなくなります。
思わぬ借金が発覚することもありますが、家族の知らない資産の存在もあり得ます。相続放棄をするかどうかは、被相続人(亡くなった方)の財産を十分把握したうえで検討すべきでしょう。
なにもしなければ「単純承認」
相続が発生した場合、何もしなければ「単純承認」したことになります。遺言書があれば、記載の内容にしたがって被相続人(亡くなった人)の財産は引き継がれますが、遺言書がない場合には、他の相続人と「遺産分割協議」を行い、分割します。
前述のとおり、借金も被相続人の財産であるため、すべての財産を把握したうえで、プラスの財産からマイナス財産を差し引き、残った財産を相続人で引き継ぐことになります。もし、プラスの財産総額よりも負債(借金)が上回る場合には、相続人が自分の財産のなかから負担しなければなりません。
相続人が1人である場合には負担は大きくなりますし、複数人の場合にはそれぞれの生活環境や価値観が異なるため「もめる」原因になりかねません。
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「相続放棄」では、借金は消滅しない
相続には、原則的な「単純承認」、限定的に引き継ぐ「限定承認」、すべてを引き継がない「相続放棄」の3つの方法があります。被相続人の遺(のこ)した財産に借金があった場合、このうちどの選択肢が最適かは、財産状況、相続人の数や事情によって異なります。
前述の「相続放棄」では、放棄した当人は相続人ではなくなるものの、借金自体がなくなる訳ではありません。返済義務は、他の相続人に引き継がれることになります。「相続放棄」は、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内であれば、単独で家庭裁判所に申し立て、手続きをできます。
また、相続人全員で申し立てることも可能です。その場合、借金の返済義務は、次順位の相続人に引き継がれます。第1順位の配偶者と子が相続放棄した場合、第2順位の親、親がいなければ第3順位の兄弟姉妹、すでに他界している場合にはその子である甥(おい)や姪(めい)に順位が移行します。
なお、相続放棄した第1順位の子の子(被相続人にとっての孫)は相続人にはなりません。相続放棄によって相続人となる場合、家庭裁判所からの通知もないため、債権者からの督促で相続人であること、借金返済の義務があることを知ることにもなりかねません。家族・親族間でトラブルに発展する可能性あり、特に慎重な対応が必要です。
まとめ
相続が発生した場合、特に、突然の出来事である場合には、葬儀や公的機関への届け出などに追われ、平常心ではいられないものです。さらに、被相続人に借金があることが発覚した場合には、戸惑い、どうしたらよいのか悩むことでしょう。それでも、軽はずみな行動は避け、まずは、すべての財産を把握することです。
例えば借金が1500万円であったとしても、金融資産や自宅売却で返済できれば債務は消滅し、親族への影響を回避できます。法定相続人が複数いる場合には、全員で話し合うことが大切です。そのうえであれば、自分(自分たち)にとって、どの方法が最適なのかが判断できるでしょう。
「借金があるから相続放棄」といった軽はずみな行動により後悔するケースが多く見られます。基本的には「借金は返済する」ことを前提に話し合いたいものです。財産の把握や相続人間または債権者とのコミュニケーションを円滑にすすめるためには、弁護士等の専門家の力を借りることをおすすめします。
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士