更新日: 2023.10.20 その他相続

相続のルールが大きく変わる! 「相続土地国家帰属制度」「相続登記の申請義務化」について

執筆者 : 新美昌也

相続のルールが大きく変わる! 「相続土地国家帰属制度」「相続登記の申請義務化」について
所有者不明の土地の増加が、社会問題になっています。高齢化が進むにつれ死亡者の数が増加することなどによって、今後ますます深刻化するおそれがあります。また、「土地を相続したものの、手放したい」と考える人もいます。
 
これらの問題を解決(発生予防)するため、「相続登記の申請義務化」「相続土地国家帰属制度」など相続のルールが変わります。この2つについて、主なポイントを解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

相続土地国家帰属制度の概要

2023年(令和5年)4月27日、相続や遺贈(相続等)により取得した土地を手放し、国庫に帰属させることができる「相続土地国家帰属制度」がスタートしました。この制度は、所有者不明土地の発生を予防し、土地の管理不全化を予防するために創設されました。
 
国への管理コストの転嫁であったり、土地管理をおろそかにするモラルハザード(悪い事態から免れるための対策をしたことで、かえって注意しようとする意識が薄れ、結果として悪い事態を招くこと)が発生するおそれを考慮したりして、一定の要件を設定し、法務大臣が要件について審査を実施し、承認されたものが国庫に帰属させることができます。
 
相続土地国家帰属制度を利用するには、(1)承認申請、(2)要件審査・承認、(3)負担金の納付が必要です。負担金の納付により、相続した土地が国家に帰属します。申請時には、審査に要する実費等を考慮して政令で定める審査手数料(一筆1万4000円)の納付が必要です。
 
また、この制度を利用するには、土地に対する厳格な条件があります。どのような土地でも国が引き取ってくれるわけではありません。まず、申請が直ちに却下される土地があります。
 


(1)建物や通常の管理または処分を阻害する工作物等がある土地
(2)土壌汚染や埋設物がある土地
(3)危険な崖がある土地
(4)権利関係に争いがある土地
(5)担保権等が設定されている土地
(6)通路など他人によって使用される土地

などです。これらの土地は、法令で定められた通常の管理または処分をするにあたり、過分の費用または労力を要するからです。また、審査の段階で不承認となる土地もあります。例えば、「一定の勾配・高さの崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地」などが該当します。
 
制度の利用に際しては、土地の性質(宅地、田・畑、森林など)に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金の納付が必要です。負担金は20万円以上必要になります。
 
このように、不要となった土地を手放したいと思っても簡単にはいきません。費用もかかります。土地を手放したい場合は、低い価格であっても売却したほうが有利かもしれません。
 

相続登記の申請義務化

所有者不明の土地が多いと、公共事業や防災・復興事業等に支障を生じます。また、所有者が不明だと、所有者の探索に時間と費用がかかり、土地取引にも支障が生じます。
 
令和3年の国土交通省の調査によると、所有者不明土地の割合は24%あり、その原因は相続登記の未了が62%、住所変更登記の未了が34%となっています。
 
相続登記未了の割合が多いのは、相続登記が現行では任意なので、申請しなくても不利益を被ることは少ないからです。そのため、手間と費用をかけて相続登記を行う動機がなかったのです。
 
そこで、所有者不明の土地が発生することを予防するために、2024年(令和6年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されることになります。2026年4月までに、「所有不動産記録証明制度の創設」「住所等の変更登記の申請義務化」「職権による住所変更登記」等も行われます。
 
相続登記の申請義務化の概要は、以下のとおりです。


(1) 相続や遺贈によって不動産(土地・建物)を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記(名義変更)の申請をしなければなりません。

(2) 遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割の成立日から3年以内に、相続登記をする必要があります。

※早期の遺産分割が難しい場合には、「相続人申請登記」という簡便な手続きを法務局でとることによって義務を果たすことができます。

(3) 施行日前の相続でも、未登記の場合は、義務化の対象(3年間の猶予期間がある)となります。

(4) 正当な理由なく義務に違反した場合は、10万円以下の過料(行政上のペナルティー)の適用対象となります。

(5) 価額が100万円以下の土地に係る相続登記等について、登録免許税の免税措置を受けることができます(令和7年3月31日まで)。

不動産を相続したら、あるいは相続した土地のある方は、可能な限り早く登記の申請をしましょう。
 

出典

一般財団法人国土計画協会 所有者不明土地面積の将来推計(所有者不明土地問題研究会)
法務省 相続土地国庫帰属制度について
法務省 不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~
法務省民事局 令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(令和5年9月版)
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

【PR】相続する土地・マンションがあなたの生活を助けるかも?

ライターさん募集