更新日: 2023.11.23 贈与
ガソリンも劣化すると聞いたので、劣化前に息子に譲りたいのですが、これにも「贈与税」は発生しますか?
とはいえ、誰かに無償でもお金や物を譲れば贈与税が発生します。そこで、「まとめ買いしたガソリンを劣化前に息子に譲る」という場合において、贈与税が発生するか考えてみます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
贈与税の法的性質
お金や物を無償で受け渡す際に発生する税金があります。それは贈与税です。しかし、私たちが日常生活していく中で、贈与税が発生した、または納税したという話は聞いたことがない、といった方が大多数でしょう。
それもそのはずで、贈与税は贈与により受け取った財産が年間で110万円を超えた場合に発生するからです。この110万円は「基礎控除」と呼ばれる控除で、その額の範囲内であれば贈与税がかからないことになります。
つまり、贈与を受けた財産が110万円以内であれば控除の範囲内で非課税となり、それを超えた部分が一定の税率に従い課税対象となる、という具合です。当然、ガソリンについても1年間で贈与を受けた価格が110万円を超えれば、受け取った方には贈与税が発生します。
仮に、ガソリンを成人の息子に200万円分贈与したと考えてみましょう。この場合、一般贈与財産用の計算式が適用されるので、税率は10%となり、9万9000円の贈与税がかかることになります。
贈与価格200万円−基礎控除110万円=90万円(課税部分)
90万円×10%(税率)=9万9000円(贈与税額)
図表
出典:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
現実にガソリンの贈与で贈与税が発生することは考えづらい
ガソリンを子どもに譲る際に贈与税が発生するケースは、現実にはほとんどないでしょう。なぜなら、ガソリンを110万円分も贈与することは並大抵ではないからです。
仮に、ガソリンの価格を1リットル170円であると設定してみましょう。非課税となる110万円分を購入すると、約6470リットルと、膨大な量になります。半分の50万円分であっても、約3235リットルと膨大な量です。これだけのガソリンを購入することも保管することも容易ではないでしょう。
そもそもガソリンは、40リットル以上保管する場合、制限がかかります。具体的には、空地を確保することが求められたり、設備に制限がかかったりして、一般の方はなかなか保管できないようになっています。
そのため、一般家庭に通常保管できる範囲でのガソリンの贈与であれば、贈与税について気にする必要はないでしょう。
なお、ガソリンは保管環境が悪いと、劣化が進み燃焼不良が起こるなど、事故の原因になりかねません。参考までにENEOSは、気温の変化が少ない冷暗所でも半年程度を、保管期間の目安としています。
事件や事故が起こると数百万、場合によっては数千万の被害が出る可能性もあります。半年以上経過し、劣化したと思われるガソリンは使用せず、無償であっても譲らないようにしてください。
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他の財産を贈与している場合は要注意
ガソリンの贈与によって贈与税がかかる可能性があるとすれば、その年中に他の贈与も息子宛てに行っていた場合です。
前述のように、贈与税は年間の贈与が110万円を超えた場合にかかります。例えば、1年間で贈与を複数回行い、ガソリンは1万円分しか贈与していないけれど、その年に金銭での贈与を300万円行っている場合、贈与額は301万円となり、発生する贈与税額は19万1000円です。
ガソリン単体では贈与税が発生しないという場合でも、一度その年中に贈与が発生していないか、確認しておくとよいでしょう。
まとめ
贈与税は、物やお金などの贈与を受けた額が、1年間に合計で110万円を超えた場合に、贈与を受けた方に対して発生する税金です。
当然ガソリンも贈与税の対象になりますが、6000リットルを超えるような超大容量のガソリンを贈与する場合でもない限り、ガソリンのみの贈与で贈与税が発生することは基本的にはないでしょう。
もしガソリンを譲るのであれば、贈与税よりもガソリンの品質など、危険物であることにかんがみ、安全に譲渡するための方法や状態に気を配るべきかもしれません。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
東広島市 家庭でガソリンなどの危険物を保管するときの注意点
ENEOS ガソリン・燃料油
執筆者:柘植輝
行政書士