更新日: 2023.12.22 その他相続

空き家の税金を払いたくありません。相続放棄をすれば払わなくて済みますか?

執筆者 : 吉野裕一

空き家の税金を払いたくありません。相続放棄をすれば払わなくて済みますか?
地方にいる両親が他界し、実家が空き家になるという問題が増えているようです。実家を相続しても住む予定がなく、売却をしようとしても買い手がつかず、困り果ててしまった、ということもあるかもしれません。
 
今回は「実家の相続が発生したときに相続放棄をすれば、空き家に対する税金の支払いは必要ないのか」という質問に答えていきます。
吉野裕一

執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)

夢実現プランナー

2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている

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2023年3月までは責任関係が複雑

2023年3月末までは、実家に住んでいた親が他界して空き家の相続が発生した場合、相続人全員が相続放棄をした場合でも、最後に放棄した相続人は管理義務を負うことになり、空き家の管理を「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」行わなくてはいけませんでした。
 
誰も管理しなくなると、老朽化が進んだことによる倒壊の危険や、動物が住み着くなど近隣住民への迷惑になることが考えられるため、それに対する措置でした。
 
管理義務を免れるためには、別の相続人にお願いをして引き受けてもらう、もしくは新しい所有者を見つける必要があります。しかし、新しい所有者をすぐに見つけることは難しい場合もあります。
 

図表1

 
また、相続放棄を行うケースとして、亡くなった被相続人に空き家などの財産のほかに借金がある場合などが考えられます。
 
空き家を相続放棄した場合は、その借金も相続しなくてもよいことになります(なお、自身が相続放棄をして他の相続人が空き家を相続したとしても、他の人による管理が開始されるまでは、図表1のように自身が管理義務を負います)。
 
その相続人が空き家の管理を開始すると、現金化して借金の返済に充てることが可能となります。しかし他の相続人全てが相続放棄をすると、管理義務を負った相続人は自由に売却できず、裁判所に行って権限外行為の許可を得る必要があります。
 
債権者など利害関係者がいる場合は、利害関係者が裁判所に相続財産管理人の選任を要請することにより、相続財産管理人が空き家や土地などの売却を行い、債権者に返済する義務が生じます。
 
このように2023年3月末までは、1人でも相続人がいれば、たとえ遠方に住んでいて相続放棄もしている場合でも、相続財産の管理を行う必要がありました。
 
しかし、遠方で自らの家庭もある人にとっては、管理を行うのも一苦労でした。
 

2023年4月からは責任を明確に

2023年4月からは、民法第940条に「現に占有しているときは、」という1文が追加されました。この1文が入ったことで、相続放棄をした場合、遠方にいた相続人は空き家の保存義務(同改正で、管理義務から保存義務に変更)を負う必要がなくなりました。
 
一方で、相続人が被相続人と同居していた場合は、相続放棄をしたとしても保存義務を負うことになります。
 
ただし、相続人全員が別の場所に住んでいた場合、まったく管理する人がいなくなってしまうことになります。管理する人がいないと、やはり家屋の老朽化や動物が住み着くなどの恐れが生じます。
 
そのため検察官や(借金がある場合は)債権者が申請人となり、家庭裁判所に相続財産清算人(同改正で相続財産管理人から変更)の選任を申し立てすることになります。
 
相続財産清算人は、相続財産を売却して債権者に債務の清算を行うことができます。売却も難しいようであれば、空き家を解体したうえで実家の土地を国庫に帰属させることになります。
 

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まとめ

今回は、改正のよる責任関係の明確化について説明しました。所有者が他界して空き家となった相続財産の相続放棄を行った場合、固定資産税の支払いは必要なくなります。
 
相続人が複数いる場合で、相続放棄をしない相続人がいる場合には、その相続人が管理を行えば済みます。しかし、全ての相続人が相続放棄した場合は、利害関係者や検察官が家庭裁判所に申請し、相続財産清算人を選任することになり、最終的には相続財産を国に帰属させることが可能となります。
 
相続の際に負債と財産の両方がある場合には、両方を相続もしくは相続放棄を行う必要があります。そのため相続時に、他の財産や空き家の売却などによる現金化ができないかも、検討する必要があるでしょう。
 

出典

国土交通省:空き家の現状と課題
民法:第940条
 
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー

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