更新日: 2023.12.22 贈与

73歳の父が「年金だけ」では暮らせないので、年間120万円援助しています。これも「贈与税」の対象ですか?

執筆者 : 柘植輝

73歳の父が「年金だけ」では暮らせないので、年間120万円援助しています。これも「贈与税」の対象ですか?
高齢者の貧困が社会問題となっている昨今、子が親の生活費を援助するケースもあるようです。しかし、親に対してお金を渡す行為は贈与に当たります。もし、自分の親に生活費の資金援助をした場合、それは贈与税の課税対象になるのでしょうか。年金だけで暮らせない、73歳の父親を援助する例を基に、考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

原則として生活費としての援助は贈与税がかからない

原則として、贈与税は親子間であっても生じ得ます。具体的には、1年間で贈与を受けた財産の合計額が110万円を超えた場合には、贈与税が発生します。
 
しかし、贈与税には一定の例外事由が定められています。その一つに、生活費に充てるために扶養義務者から受け取った財産があります。扶養義務者とは、ある人が自力で生活できないときに、その人を経済的に支援する義務を負う人です。
 
扶養義務は親子や兄弟姉妹間など近しい親族の間で発生するものです。多くの方は扶養義務について、親から子へ発生するものと思っているかもしれませんが「子から親へ」という場合でも扶養義務は生じます。
 
扶養義務に基づく生活の援助は「何円までであれば贈与税が非課税となる」という金額は具体的に決まっていません。
 
そのため、年間で200万円でも300万円でも、それが生活援助に通常必要と認められる金額であれば、贈与税の対象とはなりません。当然、離れて住む父親に年間で120万円を支援しても、贈与税は発生しません。
 
なお、扶養を受ける側に年金収入があっても、それだけでは生活できない場合は、贈与税の対象となることなく、生活費の援助を受けることができます。
 

生活費として使われていない場合は、贈与税が生じる

仮に生活費として贈与をしていた場合であっても、贈与税が発生する場合もあります。それは、生活費として贈与されたお金が、実際には生活費として使われていなかった場合です。生活費であることを理由に贈与税を免除されるには、それが都度「生活費」として消費されることが必要であるからです。
 
例えば、子から親に対して120万円を生活費として贈与した場合であっても、親がそれを貯蓄していたとしたら、贈与税の課税対象となりうるということです。
 
また、数年分といったように生活費をまとめて贈与した場合は要注意です。その場合、使われていない部分は「都度生活費に充てられていない」として、贈与税が発生してしまいます。
 
そのため、多少手間がかかったとしても、毎月の生活費となる金額分を都度贈与するべきです。
 

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親に生活費を援助するのであれば、扶養に入れることも検討するべき

援助している73歳の親の年金収入が158万円以下で、他に収入がなければ、親を扶養親族とすることで、自身の所得税や住民税の負担を減らすことができます。
 
全国健康保険協会「被扶養者とは?」によると、年金収入が180万円未満であり、かつ、年金収入が自身の援助額より少ない場合においては、自身が勤務先で健康保険に加入していれば、親をその扶養に入れることができます。それによって、親が支払う国民健康保険料を削減することができます。
 
また、国税庁「扶養控除」によると、税制上の扶養や社会保険(健康保険)上の扶養については同居が要件とされていません。そのため、収入が一定額以下の親へ子が常に送金しているなど「生計を一にしている」と認められれば、別居していても親を扶養に入れることが可能です。
 

まとめ

生活費として親にお金を援助する場合、年間120万円であっても贈与税は、原則、かかりません。また、73歳である親の年金収入が158万円以下であれば、税制上の扶養と社会保険上の扶養に入れることができ、自身や親の負担をより軽くすることもできます。
 
とはいえ、税や社会保険に関する仕組みは複雑です。税については税務署へ、保険については加入している健康保険組合へ、詳細を確認するようにしてください。
 

出典

国税庁 No.1180 扶養控除
全国健康保険協会 被扶養者とは?
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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