更新日: 2023.12.28 その他相続

親から相続した財産を「自分にも分けろ」と夫に言われました。分けるべきですか?

親から相続した財産を「自分にも分けろ」と夫に言われました。分けるべきですか?
親が亡くなって、現金や土地などの資産価値の高い財産を相続した人が、配偶者から「義理の親子なのだから、自分にも財産を分けるべきだ」と言われることがあるようです。
 
もし、親から相続した財産について、夫が自身の取り分を主張してきた場合は、どのように対応すればいいのでしょうか。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

法律上は相続財産を自身の配偶者に分ける必要はない

相続によって財産を取得できる人は、法律で決まっています。亡くなった人の配偶者は常に相続人となり、さらに、下記の順位で最も高い人が、配偶者と共に相続人となります。
 
なお、同順位が複数人いる場合は、全員が相続人として法定相続分を均等に分けます。


(1)死亡した人の子ども(亡くなっていれば孫、孫が亡くなっていればひ孫)
(2)死亡した人の父母(亡くなっていれば祖父母)
(3)死亡した人の兄弟姉妹(亡くなっていればおい・めい)

ここでいう子や父母などには、結婚により生じた親族関係は含めません。従って、自身の親から相続した財産について、夫が「亡くなった妻の親とは義理の親子である」という理由で取り分を主張しても、相続人ではありませんので、相続財産を受け取ることはできません。
 
また、「相続人の配偶者だから」と主張されたとしても、相続財産は受け取った相続人固有の財産となるため、法律上は分ける必要はありません。
 
ただし、夫が死亡した人と養子縁組をしている場合は、子として相続権を有します。相続人となる「死亡した人の子ども」には、実子と養子の両方を含むからです。
 

相続した財産を渡す場合は贈与税がかかる可能性がある

相続によって夫は財産が受け取れなくても、妻が相続した財産を夫へ贈与することはできます。しかし、妻が財産を夫に贈与した場合、受贈者となる夫には贈与税が生じる可能性があります。
 
夫婦間であっても、年間で110万円の基礎控除を超える財産の贈与は、贈与税の課税対象となります。
 
例えば、妻が相続した財産のうち150万円を夫に贈与した場合、夫婦間の贈与は一般贈与財産に該当し、110万円の基礎控除を差し引いたあとの課税価格は40万円です。200万円以下の課税価格に対しては10%の税率が適用されるため、夫は4万円の贈与税を支払うことになります。
 
ここで気になるのは、妻が相続税を納めているケースですが、その場合でも贈与税は発生します。相続税は相続で発生する税金、贈与税は贈与によって発生する税金であり、それぞれ発生原因が異なるからです。
 

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離婚時の財産分与でも相続財産は対象外

夫婦が離婚をする際に、婚姻中に築いた財産の分配や、離婚の原因を作ったことに対する損害賠償、また離婚後の生活保障などを加味して財産分与が行われることもあります。
 
仮に離婚時に夫から財産分与の請求があり、自身の財産を分与することになっても、親から相続した財産はその対象外となります。なぜなら財産分与は、夫婦が婚姻生活の中で築いた共有財産で行われるからです。
 
相続によって取得した財産は、夫婦の婚姻生活とは関係なく形成された個人の特有財産となります。
 
例えば、離婚時に1000万円の財産があり、2分の1ずつの割合で分けるように財産分与をするケースで、そのうち200万円は妻が親から相続した財産であれば、800万円を基準にして、400万円ずつ財産分与をします。
 

まとめ

親から相続する財産は相続人固有の財産であり、法律上は、相続人ではない夫に渡す必要はありません。また相続財産を夫に贈与すると、贈与税が発生することもあります。離婚時の財産分与の対象にもなりませんので、安易に夫に渡すべきではないでしょう。
 
相続財産については、夫の理解を求めて、自身で大切に管理することをおすすめします。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)
No.4132 相続人の範囲と法定相続分
No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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