更新日: 2023.12.27 その他相続

亡くなった父の再婚相手が「遺産1000万円全部もらいます」発言。後妻の方が子より多く受け取れるんですか……?

執筆者 : 柘植輝

亡くなった父の再婚相手が「遺産1000万円全部もらいます」発言。後妻の方が子より多く受け取れるんですか……?
相続を巡るトラブルは複雑化しやすい問題です。それが再婚した親の死後、後妻と子たちの間で起こったとあればなおさらです。実際にそのような場面に遭遇し、困っている方もいることでしょう。
 
そこで、「遺産1000万円全部をもらう」と、後妻が発言したという事例を基に、相続について考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

相続の基本的なルール

相続の基本的なルールとして、相続人になれる人の範囲は決められています。亡くなった人の配偶者は常に相続人となります。そして、下記の範囲にある方の内、最も順番の早い方が配偶者と共に一定の割合で相続することになります。


第1順位 亡くなった方の子(子が既に亡くなっていれば孫、孫も亡くなっていればひ孫)……配偶者と子で、各2分の1の割合で遺産を分配

第2順位 亡くなった方の父母(父母が亡くなっていれば祖父母)……配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1の割合で、遺産を分配

第3順位 亡くなった方の兄弟姉妹(亡くなっていればおいとめい)……配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1で遺産を分配

上記のうち、優先順位が同順位の該当者が複数人存在する場合は、該当者で等分します。例えば、子2人と配偶者が相続人になる場合、配偶者が2分の1、子が各4分の1ずつ等分する、という具合です。
 
上記は「法定相続分」と呼ばれる、民法で決められた取り分です。遺言書があれば、原則、その内容で遺産分配がなされます。また、遺言書がなければ、相続人間で合意した上で、上記とは異なる分配割合で遺産分割をすることも可能です。
 

後妻の一存で遺産分割は決まらない

有効な遺言書が存在しない場合、法定相続分で決めるか、それとも任意の割合で遺産分割をするかは、当事者間で話し合って決定します。そのため、後妻が「遺産1000万円を全額もらう」と発言しても、他の相続人が同意しない限り、そのとおりにはなりません。
 
この場合、現実的には法定相続分どおり、500万円を後妻が相続します。そして残りの500万円は、子全員で均等に分配することになるでしょう。
 
なお、遺産分割において後妻であるか、子と血のつながりがあるかどうかは関係ありません。法定相続分どおりであれば、後妻であったり子との血縁がなかったりしても関係なく、配偶者である後妻の相続分は2分の1です。
 
もし、後妻が「自分が1000万円を全額もらう」と言い張って引かない場合は、家庭裁判所にて「遺産分割調停」の申し立てを行うことで、司法の力を借りて解決することが可能です。
 
詳細については、相手(この場合は後妻)の住所地を管轄する家庭裁判所、または相手方と合意で定めた家庭裁判所へ相談してください。
 

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遺言書があった場合はどうなる?

遺言書があり、そこに1000万円全額を後妻に相続させる旨の記載があった場合は、どうでしょうか。この場合も、1000万円全額が後妻の財産となるわけではありません。なぜなら、「遺留分」という制度があるからです。
 
遺留分とは、亡くなった方の相続人(兄弟姉妹を除く)に保障された、最低限の相続分です。遺留分は、子が相続人に含まれている場合、全体の2分の1です。つまり、今回のケースでは500万円が子全員の遺留分総額として保障されます。そのため、相続人間で合意がない限り、遺産の全額が後妻に行くことはありません。
 
なお、遺留分は「遺留分侵害額の請求調停」という手続きで主張していくことになります。詳細については、相手(この場合は後妻)の住所地を管轄する家庭裁判所、または相手方と合意で定めた家庭裁判所へ相談してください。
 

まとめ

亡くなった父の後妻が「1000万円の遺産全額を自分がもらう」と主張しても、遺産分割は法定相続分または相続人間の合意に従ってなされるため、そのとおりにはなりません。
 
また、仮に全額を後妻へ相続させる旨の遺言があったとしても、遺留分が存在します。子がしっかりと権利を主張すれば、子より後妻が多く遺産を受け取るということはないでしょう。
 
いずれにせよ、相続は親族間のトラブルが起こりやすい問題です。必要に応じて、家庭裁判所へ調停を申し立てるなどして、外部の力を借りて解決することをおすすめします。
 

出典

国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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