更新日: 2024.01.16 その他相続

孫は法定相続人ではないって知っていますか? 孫に相続財産を残す3つの方法

執筆者 : 新美昌也

孫は法定相続人ではないって知っていますか? 孫に相続財産を残す3つの方法
孫(代襲相続人を除く)は法定相続人ではないので、祖父母の財産を相続できません。
 
孫に相続財産を残すためには、「遺言書を作成する」「孫と養子縁組をする」「孫を死亡保険の受取人にする」など生前に準備する必要があります。本記事で、それぞれの方法のメリット・デメリットを解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

遺言書を作成する

孫(代襲相続人を除く)は、法定相続人ではないので、そのままでは孫に相続財産を残すことができません。遺言書を作成することが必要です。遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
 
「自筆証書遺言」は遺言者が遺言書の全文、日付を自署で作成し署名押印して作成します。財産目録については、パソコンやワープロで作成できます。
 
いつでも好きなときに作成でき、遺言の内容を秘密にでき、費用がかからないというメリットがあります。一方、デメリットとしては、紛失や破棄などのリスクがある、検認手続きが必要、日付が入っていないなどの遺言書の不備により無効になるリスクなどがあります。
 
そこで、法務局の自筆証書保管制度を使えば、遺言書の紛失や破棄などのリスクを防ぐことができ、検認も不要です。遺言が無効になるリスクを回避するには、「公正証書遺言」が有益です。「公正証書遺言」は遺言の内容を公証人が筆記します。
 
メリットは、遺言が公証人役場に保管されるので、紛失や破棄などのリスクがありません。法律の専門家である公証人が作成するので、遺言が無効になることがほとんどなく、検認も不要です。デメリットとしては、手間や費用がかかり、証人2人の立ち合いも必要になります。
 
いずれの遺言書作成についても、遺留分(相続人の最低限の取り分)を侵害しないように考慮することが必要です。相続人が遺留分を侵害された場合、その相続人は「遺留分侵害額請求」をすることができ、遺言が希望どおり実現されない可能性があります。
 

孫と養子縁組をする

孫と養子縁組をすることで孫は実子と同じ立場となり、確実に相続財産を受け取ることができます。また、相続税法上、基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人)の法定相続人数に孫養子を含めることができるので、相続税の節税にもなります。
 
ただし、不当な節税を防止する観点から、相続税の計算上、法定相続人の数に含むことができる養子の数には上限があります。実子がいない場合は2人、実子がいる場合は1人までです。
 
被相続人の養子は、一親等の法定血族であることから、相続税額の2割加算の対象になりません。ただし、被相続人の養子となっている被相続人の孫(代襲相続人を除く)は、相続税額の2割加算の対象になりますので留意しましょう。
 

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孫を死亡保険の受取人にする

例えば、祖父を契約者・被保険者、孫を死亡保険金受取人とする生命保険に加入します。死亡保険金は孫の固有の財産であり、遺産分割の対象にもなりません。生命保険を活用することで、孫に確実に現金を残すことができます。
 
ただし、死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象となる点は留意しましょう。また、孫(代襲相続人を除く)は法定相続人ではないので、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使えませんし、相続税額の2割加算の対象です。
 
祖父が資産家である場合、節税を兼ねて高額の生命保険に加入する方法があります。契約者・受取人は孫、被保険者は祖父とする契約形態にします。保険料相当額は、祖父から孫に贈与することで相続財産の減少につながり、相続税の軽減を図ることができます。また、孫が受け取る死亡保険金は一時所得となります。
 
一時所得の金額は、受け取った保険金の額からすでに払い込んだ保険料の額を差し引き、さらに一時所得の特別控除額50万円を差し引いた金額です。課税の対象となるのは、この金額をさらに2分の1にした金額となります。
 
保険料贈与を活用する場合の留意点としては、贈与する保険料相当額と他の贈与財産の合計額が年間110万円の基礎控除を超えた場合に贈与税がかかる点です。
 
また、相続7年以内の保険料贈与相当額は相続財産に加算しなければなりません。なお、生命保険に加入する場合、被保険者の健康状態によっては加入できない場合がありますので留意しましょう。
 
以上、孫に相続するための方法と、それぞれのメリット・デメリットを紹介しました。ご自身の合った対策を考えてみましょう。
 

出典

国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
財務省 身近な税 Q親が亡くなりました。遺産を相続する場合にどのような税金がかかるのですか?
国税庁 No.4170 相続人の中に養子がいるとき
国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
国税庁 No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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