相続税の相談は誰にすべき? おすすめの相談先と費用やメリット・デメリットも解説
配信日: 2024.02.08 更新日: 2024.06.17
本記事では、「相続税」の相談を誰にすべきか、無料で相談できる相談先、相談先ごとのメリットやデメリット、更には相続税申告の際に知っておくべきポイントまでを、分かりやすく解説します。
相続税に関する疑問や不安を解消し、スムーズな手続きを支援するためのガイドとして、ぜひご活用ください。
監修:板山 翔(いたやま しょう) / 税理士
平成28年に日本初のオンライン専門の税理士事務所を開業。
塾講師歴7年、大手WEBメディアで連載を持つなどの異色の経歴を持つ。
5人以下の小さな会社の経営者へ向けて、様々なメディアで情報を発信しており、YouTubeチャンネル「税理士ショウの超わかりやすいビジネスQ&A」は動画9本で登録者1,000人を超えるなど急成長している。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
相続税とは?
相続税とは、ある人が亡くなった際に、相続人が相続する財産(遺産)が一定の金額以上あった場合に課税される国税です。そして相続税は家庭裁判所で相続放棄した人を除き、相続人全員が申告義務を負い、相続開始日を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告して納税しなければなりません。
また、相続税は被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する税務署に申告します。
相続税がかかる人、かからない人
相続税は一定の金額以上の相続財産がある場合に課税されます。平成28年~令和3年までの相続税申告件数と、日本国内の死亡数、死亡数に対する申告件数の割合は次のとおりです。
図表1
年度 | 死亡者数(万人) | 相続税申告件数(万件) | 割合 |
---|---|---|---|
平成28年 | 130 | 13.6 | 10.46% |
平成29年 | 134 | 14.3 | 10.67% |
平成30年 | 137 | 14.9 | 10.88% |
令和元年 | 138 | 14.7 | 10.65% |
令和2年 | 137 | 15.3 | 11.17% |
令和3年 | 144 | 16.9 | 11.74% |
※国税庁 相続税 申告 課税状況、総務省統計局 人口の推移と将来人口の数値を基に作成
申告期限、統計の取り方で前後しますが、概ね10%~11%の方について相続税の申告がされている計算です。平成27年に相続税の大改正により基礎控除額が引き下げられ、それ以前は約4%の方が相続税の課税対象だと言われていましたので、近年は10人に1人は相続税の申告が必要と聞くと、意外と多い印象でしょうか。
相続税の基礎控除、いくらから相続税がかかるか
すでに少し先述した通り、相続税には「基礎控除」があります。
基礎控除の計算は、3000(万円)+600(万円)×相続人の人数=基礎控除、となり、「プラスの財産(不動産、現金、預貯金)」から「マイナスの財産(住宅ローンなど)と葬儀費用」を差し引いた正味の相続財産から基礎控除を引いてもお金が残っていると、相続税の申告が必要となります。
相続税の相談先5選
相続税の相談先というと、税務署と税理士を挙げる人は多いかもしれません。「税務署はしっかりと税金を徴収する国家機関なので、相談をしても大丈夫だろうか? 」「税理士は難しい試験に合格した税務の専門家なので、相談料も高額? 」といった心配があるでしょう。
ここでは、相続税について実際にどんなところで無料相談を利用できるか、解説します。
相続税の相談先(1)国税局電話相談センター
国税局電話相談センターでは、国税局の職員が各種国税について電話相談を受け付けています。特に予約等は不要で、国税についての一般的な内容の相談ができます。
税務署も同じですが、節税についての提案や、どういった遺産分割方法が相続税を抑えられるか、といった節税方法についての質問には回答してくれません。更に、小規模宅地の特例や配偶者控除などが使える状況だとしても、原則は「こういった特例や控除が使えますよ」と教えてくれません。
節税対策が知りたい、どうすれば節税できるかの提案をして欲しい方は税理士へ相談することを強くおすすめします。
相続税の相談先(2)税務署
税務署では、国税局電話相談センターの電話相談では不十分だったり、書面等で個別に具体的な相談をしたい場合には、窓口での無料相談を受け付けています。事前に電話予約が必要ですが、税務署職員が対応してくれます。
なお、管轄の税務署での相談となりますので、電話をかける前に国税庁の公式サイトで調べておきましょう。被相続人(亡くなった方)の住所地が遠方でどうしても管轄の税務署で相談できない場合には相続人の自宅近くの税務署で相談を受けてくれる場合があります。
相続税の相談先(3)税理士事務所
「税理士は相続税が何億円とかかる資産家しか相手をしていないので、相続税がかかるかどうかの我が家の相談には乗ってくれないだろう。まして、相談料もさぞ高額なハズ! 」と思っていませんか?
平成13年の報酬規定の廃止と広告自由化により、税理士事務所もテレビCMを流したり、SNSやインターネットでも広告を行うようになり、新規顧客の獲得のために相続税の無料相談を行っている事務所もあります。よくあるケースとして、初回相談無料で、次からの具体的な相談や相続税の試算に報酬が必要になる、といった流れがあげられます。
無料相談をうたっている税理士事務所は公式サイトでも無料相談の案内をしているので、街中で看板や広告を見かけた事務所があれば公式サイトを調べて無料相談ができそうな場合には予約を入れてみましょう。
また、相談料の有無に関わらず、相続税の相談は初回では終わることはありません。税理士が出し惜しみするわけでなく、不動産や預貯金に関する資料、相続人を確定させる戸籍謄本などの裏付けがあった上でないとできない節税方法の提案も存在します。初回の相談ではおおよそ相続税がかかるかどうか、そして節税方法の簡単な提案、といったものだと考えておきましょう。
相続税の相談先(4)税理士会の主催する無料相談会
税理士会は税理士が所属を義務付けられている団体で、全国に15の団体があります。この税理士会も地域のために定期的に無料相談会やセミナーを開催し、税理士が持ち回りで参加しています。開催場所は市役所や区役所の部屋を借りていたり、セミナールームだったりと様々です。
この無料相談会に参加する税理士は、顧客獲得のチャンスと思って来ている税理士や、義務感で出ている税理士など、様々です。
税理士に相談するのは初めてで緊張するとか、税理士事務所に行くのは面談の後で断りにくそう、と心配な方は税理士会主催の相談会ならば、税理士とは別に税理士会のスタッフがいるので「やっぱり他を探してみよう」とか、「ゆっくり考えてからにしよう」と思った場合には税理士会のスタッフに言えるので、おすすめです。
相続税の相談先(5)無料セミナー
相続税に関する無料セミナーでも、相続税の無料相談を受けられることがあります。相続税に関する無料セミナーは都市部に多く、主催者は税理士事務所、税理士会だけでなく、司法書士や弁護士と税理士が共同開催したり、節税対策の賃貸物件建築の営業をしたいハウスメーカーや不動産業者が税理士をゲストに開催していることもあります。
相続税以外の営業活動を避けたい場合などは、セミナーの広告や案内状をよく見て、場所だけでなく主催者・協賛会社をチェックしましょう。主催者や協賛会社でハウスメーカー、不動産会社の名前がある場合には、不動産活用などの営業があると思って臨みましょう。
図表2
相談方法 | 事前予約 | 相談の応対者 | 相談費用 | 相談内容 | |
---|---|---|---|---|---|
国税局電話 相談センター |
電話 | 不要 | 国税局職員 | 無料 | 一般的な内容 |
税務署 | 面談 | 必要 | 税務署職員 | 無料 | 個別具体的な内容も可能 |
税理士事務所 | 電話・面談 | 事務所によりますが、原則必要 | 税理士 | 事務所による | 個別具体的な内容も可能、節税提案もしてくれる |
税理士会の 無料相談会 |
面談 | 原則必要 | 税理士 | 無料 | 個別具体的な内容も可能、税理士によっては節税提案もしてくれる |
無料セミナー | 面談 ※注1 |
セミナーによる | 税理士、その他 ※注2 |
無料 | 個別具体的な内容も可能、税理士によっては節税提案もしてくれる |
筆者作成
※注1 セミナーによっては無料相談会のない、セミナーだけのものもあります
※注2 弁護士、司法書士等が主催の場合に他の士業資格者が相談を受ける場合があります
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相続税の相談先ごとのメリット・デメリット
相続税の相談先によっては、節税対策は聞けなかったり、費用を支払えば相続税額をキッチリ試算してくれることもあります。それぞれの相談先ごとの、メリット・デメリットをお伝えします。
国税局電話相談センターで相談するメリット・デメリット
●電話で予約不要なので、自宅や職場からでも気軽に相談できる
●無料で利用できる
●国税局の職員が対応してくれるので、安心
●営業されることがない
●昼休みの時間帯や、電話が混雑しているとつながりにくいことがある
●一般的な内容だけなので、込み入った内容だと相談できないことがある
●電話相談できる時間は年末年始を除く平日の8時30分~17時00分だけなので、日中仕事で電話できない人には難しい
●平日のみで時間が限られている
税務署で相談するメリット・デメリット
●基本的に税務署に赴いての面談なので、具体的・正確な情報が得られる
※電話相談の場合は国税局の電話相談に回される
●無料で相談できる
●営業されない
●個別のケースに対する具体的なアドバイスが限られる場合がある
●節税についての提案はもらえない
●相談時間は平日のみで事前予約が必要
●直接税務署に出向く必要がある
税理士事務所で相談するメリット・デメリット
●専門的で個別具体的なアドバイスが得られる
●個別の事情に合わせた対応が可能
●追加料金が発生することが多いですが、自宅に出張して相談してくれる税理士もいる
●相談に費用がかかることがある
●税理士によっては、高圧的で喋りにくかったり、質問しにくい人もいるが選べない
●営業されるとその場で断りにくい。
税理士会の主催する無料相談会で相談するメリット・デメリット
●専門家のアドバイスを無料で受けられる
●何度でも参加できるので、複数の専門意見を聞くことができる
●開催日が限られているので、相続が発生した後の相談は何回も行くのは難しい予約が必要な場合が多い
●複数回参加する場合、同じ税理士に当たるとは限らない。(メリットになることもあります)
無料セミナーで相談するメリット・デメリット
●最新の情報を得られることが多い
●質問コーナーなどがあれば、他の参加者の情報が聞けることがある
●土地活用など、自分で気になるテーマのセミナーを選んで参加できる
●個別の相談には向かない
●開催場所や時間が限られる
●営業されて、断りにくい雰囲気になるかもしれない
費用のかからない相談先、結局どこに相談するのがベスト?
結局、相続税の申告が必要であれば最終的には税理士へ依頼することになりますが、無料相談の段階では状況によって、相談先を考えるのが良いです。
相続税について無料で相談にのってくれる相談先はいくつかあります。税務署と国税局電話相談センターは無料で相談できますが、既にご紹介のとおりメリットデメリットがあります。ここでは、それぞれの状況・段階に応じて無料相談の相談先を解説します。
相続税について何となく知りたい方におすすめの相談先
相続税についてぼんやりしていて、基礎控除とかもよく分からない、という場合にはまずインターネットで相続税について調べましょう。今は基礎控除について簡単に説明してくれているサイトもありますので、そういったところで相続税についての知識をつけましょう。
相続税について少し知っているが、自分の知識と考え方が合っているかどうか知りたい方におすすめの相談先
インターネットや本で相続税についての知識はあるものの、自分や自分の親の相続税についての考え方が合っているか気になる、知りたいことがある、という場合は国税局電話相談センターに電話相談してみましょう。
平日限定ではありますが、予約不要で気軽に電話相談できるので、ちょっとした疑問解決にはおすすめです。
相続税がかかるかもしれないので心配な方におすすめの相談先
親が亡くなって相続税がかかるかもしれない、まだ亡くなっていないけど相続税がかかるなら準備をしておきたい、という方は、税務署・税理士・税理士会の無料相談を利用しましょう。
相続税がかかる可能性があるのならば、自己判断せず、できるだけ早い段階で相談しておきましょう。もしも相続税がかからないことが分かればそれで良いですし、相続税がかかるのであれば、申告の準備や、生前であれば節税対策に進むことができます。無料相談は、家系図を書いたり、遺産をリストアップするなど事前準備をして参加すると、相談がスムーズに行えます。
また、相続税の申告期限は相続開始日の翌日から10ヶ月以内ですので、既に相続が始まっていて相続税申告が必要かもしれない場合は、できるだけ早く相談を開始してください。
相続が既に始まっている方で相続税の申告を自分で行いたい方におすすめの相談先
相続税申告が必要なことは把握しており、これから自分で相続税申告を行う方は、管轄の税務署にできるだけ早く相談に行きましょう。特例や控除は自分で調べないと税務署からは教えてもらえませんが、こちらから質問すれば回答してくれますので、該当する特例や控除の要件等はしっかりと調べておきましょう。また、相続税の申告までに何度も管轄の税務署に通う必要がありますので、平日に時間を取れるかどうかも考えておきましょう。
自分で相続税を申告をするリスクは次の項目で説明していますので、そちらも参照してください。
相続が既に始まっていて、税理士に相続税の申告を頼みたい方におすすめの相談先
既に相続が始まっていて、税理士に相続税に申告を依頼したい方も、時間があれば無料相談会を上手に活用しましょう。
相続税の申告は税理士との連絡を何度も取り合いながら進めることになりますので、信頼関係を結べるかが大切です。税理士事務所の無料相談を利用して、その税理士と合うかどうかを考えるのも良いですし、一度相談してその後営業されると断りにくいという方は税理士会の無料相談会に参加しましょう。
税理士会の無料相談会ならば、その場で依頼しなくても良いですし、万が一断りにくい状況になっても税理士会のスタッフから断ってもらうこともできるでしょう。
相続税の生前対策を相談したい方におすすめの相談先
具体的に相続税の生前対策を相談したい方は、税理士事務所や税理士会の無料相談会、無料セミナーで相談しましょう。特に無料セミナーは税理士が登壇して話す場合が多く、参加前にテーマも分かっているので、興味のある内容のセミナーを選んで参加し、相談会があれば積極的に予約をして相談をしてみましょう。
税務署でも節税の相談ができる?
税務署で「税金を減らす方法」、「どの方法が得するか」を聞いても教えてくれません。何故なら、税務署は相続税の申告に対して合っているか間違っているかを判断する機関であり、相続税に関するコンサルを行うところではないからです。
特例や控除を使って相続税の節税をしたい場合には、原則、税理士に相談しましょう。
どうしても自分で相続税の申告をしたいから税務署に相談したい場合は、特例や控除を受ける要件をしっかり調べて、ご自身の状況に合致するかを判断し、その上で税務署に「現在の状況はこのとおりなので、小規模宅地の特例が使えると思いますがどうでしょうか? 」と相談しましょう。
税務署は、節税方法の提案はしてくれませんが、「その控除や特例が使えるよね? 」ということについては判断してくれますので、上手に質問しましょう。
しかし、自分で税務署に相談して相続税の申告をする場合の注意点が2点あります。
1点目は、相談はあくまで相談であり、最終的には申告後に税務署が判断します。
2点目は、申告後の修正や税務調査は自分で対応することとなります。
簡単な書面の修正で終われば良いですが、税務調査の場合、調査官は税金のプロで、しかもあらゆる情報を事前に調べてからやって来るので、素人では太刀打ちできず、言いなりになってしまいます。また、その時点から税理士に依頼しても、税理士は自分で作成した申告書でないので断られるか、受任してくれても報酬が高額になる場合が多いです。自分で相続税の節税、申告を行う方は、このようなリスクと費用を比較して選択しましょう。
相続税の相談先まとめ
相続税の相談先は、個々のニーズや状況に応じて選ぶことが大切です。無料で相談できる場所もありますが、より専門的なアドバイスが必要な場合は、専門家に相談することを検討しましょう。
出典
国税庁 令和3年度 2 直接税
総務省統計局 第2章 人口・世帯 2- 1人口の推移と将来人口
国税局 税についての相談窓口
日本税理士連合会 税理士会の相談会に行ってみる
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部