父親が「4000万円の財産」と「1500万円の借金」を残して亡くなりました。「相続税」は何円かかりますか?
配信日: 2024.03.04
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
相続税は3600万円以上相続財産がある場合にかかる可能性がある
相続税には「基礎控除」という概念があります。基礎控除とは、課税対象となる財産の価格から差し引かれる控除です。簡単に言ってしまえば、基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。
この基礎控除は「3000万円+法定相続人の数×600万円」という金額になります。つまり、3600万円以上の相続財産がない限り相続税は発生せず、逆に3600万円を超える場合には相続税が発生する可能性がある、ということになります。
例えば「父親が4000万円の財産を残して亡くなり、相続人は自分一人」というような場合、基礎控除の額は3600万円であることから、課税対象となる財産は400万円となり、相続税がかかります。
なお参考までに、相続税の税率は、取得する財産の金額が1000万円以下の場合は10%となるため、上記の場合における相続税額は40万円となります。
※出典:国税庁「No4155 相続税の税率」
実際には、負債も考慮した上で相続税は決まる
相続税は「基礎控除の額を超えたから」といって、すぐにかかるわけではありません。課税対象となる遺産の額を算出する際は、遺産の中に借金など負債(非課税財産に関するなど一定のものは除く)が含まれていれば、それらの額を差し引くこととされているからです。
例えば前項の例のように、遺産が4000万円あり、相続人が自分一人だったとしましょう。本来であれば、基礎控除3600万円を超える部分、つまり400万円の部分に相続税がかかります。しかし、債務があれば遺産総額からその額を差し引いて計算することができます。
今回の場合だと遺産総額は4000万円ですが、債務として1500万円差し引かれるので実際相続するのは2500万円です。これは基礎控除3600万円に満たないので相続税はかからないといえるでしょう。
※出典:国税庁「No4126 相続財産から控除できる債務」
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相続税が発生する場合は「相続放棄」を考えるのも手である
遺産の額から負債の額を差し引いた額がプラスとなり、相続税がかからないからと、負債の額の割合が大きい状況で相続すると、後悔する可能性もあります。
なぜなら、遺産の額自体は高くとも、現金化が難しい場合もあるからです。
例えば、不動産や美術品などが多くを占めており現金など換金性の高い財産が少ない場合は、負債を返すのに苦労することも考えられます。不動産や美術品は額こそ高価ですが、なかなか買い手が見つからないこともあるからです。
そうなると、遺産で負債を返そうにもそれができず、自身の手持ちから返済していかなければなりません。
そうなってしまわないためにも、換金性の高い遺産の額を負債が上回り、その負債の返済が難しい場合は、「相続放棄」をすることも手であるといえます。
相続放棄とは、相続人としての権利義務の承継を拒否する手続きであり、遺産を受け取れない代わりに負債を相続せずに済みます。
相続放棄は複雑な制度であるため、詳細については家庭裁判所へ相談してみることをおすすめします。
まとめ
「4000万円の財産と1500万円の負債がある」という場合、相続人の数にもよりますが、最低でも基礎控除3600万円に負債1500万円を加えた、5100万円までであれば、相続税がかかりません。
とはいえ、相続税の計算は複雑です。少しでも疑問や不安があれば、亡くなった方の死亡時の住所地を管轄する税務署へ相談してみるといいでしょう。
出典
国税庁 No.4155 相続税の税率
No4126 相続財産から控除できる債務
執筆者:柘植輝
行政書士