成年後見制度はひどい? 概要から手続きの流れ・費用について解説

配信日: 2024.04.01

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成年後見制度はひどい? 概要から手続きの流れ・費用について解説
「成年後見制度」は、認知症などで判断能力が低下した本人に代わり、財産の適正管理や被害の回避および身上監護の充実を目的とした安心の制度です。一方で、成年後見制度は融通が利かず親族に優しくない「ひどい制度」だといわれることもあります。
 
制度をよく理解しないまま利用してしまい「こんなはずじゃなかった」と後悔しても、制度の特徴として途中で成年後見を解除することはほとんどできません。
 
この記事では、まず、成年後見制度の概要を紹介し、成年後見制度がひどいといわれる理由およびトラブル事例や制度利用の判断基準についても解説しています。
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現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

2種類の成年後見制度の概要と相違点とは?

法定後見制度と任意後見制度の違いについて解説します。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、自身の財産や健康についての自己判断が困難になった成年者を、本人に代わって財産の管理や法律行為を行える後見人を選任することによって、図表1のようにその人を法的に保護するための制度です。

図表1


※法務省 成年後見制度 成年後見登記制度より引用

この制度は、おもに認知症を患った高齢者や判断能力が低下する障害をもつ人など、法的手続きや契約手続きに関する適切な判断や遂行が1人で困難な方が対象になります。事故や病気などにより一時的に判断力が低下した人にも適用される場合もあります。

成年後見人は、本人の財産を本人の利益が最優先になるよう適切に管理し、詐欺や一方的に不利になる契約を取り消すなどで本人を保護します。

成年後見制度には、以下の図表2のように「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。

図表2


※法務省 成年後見制度 成年後見登記制度より引用

成年後見制度(1)法定後見制度

法定後見制度では、本人の判断能力の程度に応じて、図表3のように「後見人・保佐人・補助人」のいずれかを家庭裁判所の審判で決定します。

図表3

後見 保佐 補助
対象者 常に判断能力が欠けている 判断能力が著しく不十分 判断能力が不十分
申立者 本人、配偶者、4親等内の親族、検察官、市町村長など
成年後見人等の同意を要する行為 成年後見人の同意を得ていても、本人が行った法律行為は、後で取り消せる 借金、訴訟行為、相続の承認や放棄、新築や改築など 同左

ただし、補助人の同意権や代理権を本人が認めている場合

取り消せる行為 契約などの法律行為

ただし、本人への悪影響が少ないと思われる日常生活の行為は除く

借金、訴訟行為、相続の承認や放棄、新築や改築など 同左
成年後見人等 財産に関する全ての法律行為 申立の範囲内で家庭裁判所が定める行為

ただし、保佐人の同意権や代理権を本人が認めている場合

同左

ただし、補助人の同意権や代理権を本人が認めている場合

※法務省 成年後見制度 成年後見登記制度を基に筆者が作成

法定後見人は本人の判断能力が低くなってから選任するものであり、判断能力があるうちにあらかじめ自分の意思で選んでおくことはできません。

法定後見人は、以下の図表4、5のように令和4年12月末時点では成年後見人の約80.9%は親族以外から選任され、親族以外の約63.9%の場合で弁護士や司法書士など法律知識や経験をもった専門家が選任されています。なお、後見人の選任時に家族が裁判所に後見人を推薦することはできますが、あくまでも裁判所による選任のため、希望通りになるとは限りません。

図表4


※裁判所 成年後見関係事件の概況 ―令和4年1月~12月―より引用

図表5


※裁判所 成年後見関係事件の概況 ―令和4年1月~12月―より引用

また、親族以外から成年後見人が選任された場合には、その方へは毎月2~6万円の報酬を、本人が亡くなって成年後見が終了するまで支払い続けなければなりません。

成年後見制度(2)任意後見制度

任意後見制度とは、本人に十分な判断能力がある時点で、あらかじめ将来の認知症などに備えて任意後見人の指定や委任する内容を公正証書による方法で契約しておきます。そして、本人の判断能力が低下した時点から、任意後見人は契約内容にしたがって本人からの委任内容を遂行する制度です。

つまり、本人が契約できないほど判断能力が低下してしまってからでは利用できない制度です。

任意後見の効力は本人の判断能力低下とともに自動的に発効するのではなく、任意後見受任者(任意後見を頼まれた人)から家庭裁判所への申立によって「任意後見監督人(任意後見人の委任遂行を見張る人、親族でない第3者なることが多い)」が選任された時点から発効します。

そのため、任意後見人は本人の判断能力低下が確認でき次第、直ちに家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申し立てた方がよいでしょう。

任意後見人を誰にするかは、本人が自由に決めることができ、また任意後見人も効力発生前までなら自由に辞任できます。

法律の専門家などが任意後見監督人になった場合には報酬を支払うのが一般的ですが、報酬額は家庭裁判所が事案に応じて決定します。委任者本人の財産の額や監督事務の内容その他の諸事情を考慮して総合的に判断して決定し、委任者の財産から支払われます。

2つの成年後見制度の相違点について

法定後見制度と任意後見制度の違いは図表6の通りです。

図表6

法定後見制度 任意後見制度
制度の趣旨 ・本人の判断応力が低下してから利用
・家庭裁判所が選任した成年後見人などが本人を法律的に守る制度
・3種類(後見、保佐、補助)ある
・本人の判断能力が低下する前に利用
・あらかじめ本人が委任相手と委任内容を決めておき、認知症などの将来に備える制度
申立方法 ・家庭裁判所へ後見開始を申立てる ・本人と任意後見人とで公正証書による任意後見契約を締結
・本人の判断能力が低下したら、受任者が家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申立てる
申立人 ・本人、配偶者、4親等内の親族、検察官、市町村長など ・本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見人になる方など
後見人の権限 ・「後見、保佐、補助」に応じた範囲で代理する
・本人の法律行為を取り消す
・任意後見契約に定めた範囲内で代理する
・任意後見人には本人の法律行為の取消権がない
後見監督人の選任 ・家庭裁判所の判断に任せ、必ず選任されるわけではない ・必ず選任する

※法務省 成年後見制度 成年後見登記制度を基に筆者が作成

成年後見制度のメリット

成年後見制度のメリットを4つ紹介します。

成年後見制度のメリット(1)財産の浪費を抑制できる

例えば、子どもと離れて暮らしている認知症を患う親の場合には、適正な判断ができず浪費がひどくなる場合があります。また、同居する親族が親の財産を勝手に私的に流用していることもあります。しかし、成年後見制度なら出費内容や金額のチェックなどの抑止機能が働き、成年後見人しか出金できなくすることも可能であるため、横領の被害も抑止できます。

成年後見制度のメリット(2)本人の法律行為を取り消せる

判断能力を欠いて、不要なものを購入したり、詐欺まがいの内容だと分からず契約した場合でも、成年後見人なら本人が勝手に行った法律行為を本人に代わって取り消して、被害を回避できます。

成年後見制度のメリット(3)介護などの身上監護ができる

介護施設探しから施設とのやり取りおよび介護契約の締結、その他身の回りの細々とした準備を本人に代わって行えるため、療養や居住環境を適切に整えてあげられます。

成年後見制度のメリット(4)不動産の売却や遺産分割協議ができる

不動産の売却や遺産分割協議などの契約行為は判断能力が低い場合、適法に行えません。制度を利用すれば、終活の一環としての資産整理や相続税の申告や納税のための遺産分割協議を本人に代わって行えます。

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成年後見制度のデメリット

成年後見制度のデメリットを3つ紹介します。

成年後見制度のデメリット(1)手続きに手間と時間がかかる

成年後見制度は申立てもすぐには利用できず、申立から利用開始まで2~4ヶ月かかるのが一般的です。また、場合によっては本人の判断能力に関する医師の鑑定書やその他の書類をたくさん集める必要があるなど、成年後見制度の要件を満たすために手間と時間がかかります。

成年後見制度のデメリット(2)手続き費用や成年後見人などへの報酬が必要

成年後見制度を利用するためには家庭裁判所に対して申立手続きが必要で、申請費用や書類を揃える費用がかかり、場合によっては医師の鑑定料がかかることもあります。また、成年後見人や成年後見監督人への報酬が毎月かかり、成年後見制度が消滅する本人の死亡時点までずっと続くという報酬問題もあります。

成年後見制度のデメリット(3)親族を成年後見人に選任してくれない

成年後見制度は本人の利益や被害抑止を最優先にしているため、親族であっても本人を欺いて被害を与えるかもしれないという可能性から制度設計がなされています。そのため、成年後見人や成年後見監督人には親族よりも弁護士や司法書士などの専門家が選任されることが圧倒的に多いのが現状です。

親族が中心になって財産管理ができない不便さや、10万円を超える出費は原則として家庭裁判所の承諾を要するという煩雑さが、この制度を使う意欲を削いでいる場合があります。

成年後見制度を利用する際の手続きの流れと費用

成年後見制度の家庭裁判所への申立手続きに要する費用は図表7の通りです。

図表7

申立に要する費用
申立手数料 収入印紙800円

ただし、保佐・補助の代理または同意権付与の申立をする場合には各800円を追加

登記手数料 収入印紙2600円(任意後見は1400円)
送達・送付費用 郵便切手3000円~5000円
鑑定費用 鑑定を実施する場合には5~10万円

ただし、上記は目安金額であり、鑑定人によって異なる

※厚生労働省 成年後見制度の現状を基に筆者が作成

法定後見制度の申立の流れと費用

法定後見制度の申立の流れは下記のとおりです。

●申立てる家庭裁判所を確認する

●医師の診断書や鑑定書その他の必要書類を集める

●申立書類を作成する

●家庭裁判所へ申立てる

●家庭裁判所で審理され法定後見人が選任される

●家庭裁判所から法務局へ後見登記が依頼される

●法定後見がはじまる

なお、成年後見人などへ毎月支払う報酬額は図表8の通りで、本人が亡くなるまでずっと支払い続けることになります。ただし、親族が成年後見人に選任された場合には報酬をなくすことができます。

図表8

報酬の算定条件 報酬月額
基本報酬 成年後見人が管理する財産額
1000万円以下
月額2万円
1000万円超~5000万円以下 月額3~4万円
5000万円超~ 月額5~6万円
付加報酬 (1)身上監護等に特別困難な事情があった場合

(2)成年後見人が特別な事務を行った場合

(1)基本報酬額の50%の範囲内で相当額の報酬を付加

(2)相当額の報酬を付加することがある

※厚生労働省 成年後見制度の現状を基に筆者が作成

任意後見制度の申立の流れと費用

任意後見制度の申立の流れは下記のとおりです。

●任意後見人になってほしい人を選ぶ

●任意後見人に委任したい内容を決める

●契約書を公正証書で作成する

●公証人から法務局へ後見登記が依頼される

●本人の判断能力が低下した段階で、家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申立てる

●任意後見監督人が選任され、任意後見がはじまる

なお、「公正証書で任意後見契約書を作成する費用」は図表9のとおりです。

図表9

費用項目 金額その他
公正証書作成手数料 ・1万1000円(1契約ごと)
・証書の枚数が4枚を超えるなら1枚ごとに250円を加算
収入印紙 ・2600円
登記嘱託手数料 ・1400円
書留郵便料 ・重量によって変動(法務局への公正証書の郵送代)
正本謄本の作成手数料 ・証書の枚数×250円

※日本公証人連合会 公証事務 4任意後見契約を基に筆者が作成

成年後見制度がひどい制度といわれる理由

成年後見制度がひどい制度といわれる理由を6つご紹介します。

成年後見制度がひどい制度といわれる理由(1)家族が後見人を指定できない

法定後見の申立書にある「成年後見人の候補者を記載する欄」には、後見人になってほしい家族の名前を書くことができます。しかし、ここに家族の名前を記載しても裁判所が家族を後見人に選任するとは限りません。

実際に裁判所が成年後見人として選任するのは、ほとんどの場合が家族以外からであり、その多くは弁護士や司法書士といった法律の専門家や社会福祉士などが占めているのが現状です。

成年後見制度がひどい制度といわれる理由(2)後見人を簡単に変えられない

法定後見制度では申立は原則として取り下げられず、後見人が選任されると後見人に何か義務違反などがない限り、本人が亡くなるまではその成年後見人を解任することはできません。つまり、成年後見人は「希望した者が選ばれなかった」「親族と相性が合わないので変えてほしい」などの理由で変更することはできません。

成年後見制度がひどい制度といわれる理由(3)後見人へ毎月報酬を支払う

成年後見人や成年後見監督人に弁護士や司法書士などの専門家が選任されると、報酬の支払いが必要になります。

なお、月額報酬の目安は成年後見人で2~6万円、また成年後見監督人や保佐人および補助人で1~3万円であり、本人が生きて後見が続く限りこの報酬が毎月かかります。また、介護などの身上監護で特別困難な事情があった場合には、上記基本報酬額の50%の範囲内の報酬を付加する場合もあります。

成年後見人などへの報酬は、原則として被後見人の財産から捻出するため、成年後見制度の利用で本人の財産が目減りする可能性があります。専門家が財産管理に携わる安心感はありますが、本人の財産から捻出する報酬がどれほどかを事前に計算しておく必要があるでしょう。

成年後見制度がひどい制度といわれる理由(4)財産は家族の自由にできない

後見が開始すると、本人の財産は本人のため以外の用途で金銭を支出できなくなります。そして、日常的に本人の身の回りの世話をする家族であっても本人の財産を扱えず、成年後見人と家庭裁判所だけで財産を管理します。

本人のためになる用途とは、本人の生活費、医療費、介護費用などであり、資産の収益運用や生前贈与も原則として認められません。したがって、相続税の節税対策の一環である生前贈与や資産の再編成および生命保険の加入や不動産収益事業は、相続人の利益になる行為であり直接本人に寄与しない用途だとして認められないのです。

また、家族を後見人にできるとして判断能力があるうちに任意後見人を選任しても、実際には家庭裁判所が選任した任意後見監督人が付いて、財産目録や通帳のコピーなどを提出するなど家庭裁判所へ年に1度は報告する必要があります。つまり、後見制度はどれを選んでも家庭裁判所の管理下に置かれることになり、財産の管理の自由度がほとんどないのが現状です。

成年後見制度がひどい制度といわれる理由(5)手続きに手間と費用がかかる

成年後見制度の申立を自分で行うなら、家庭裁判所手続きの実費は約2万円です。しかし、本人の判断能力を鑑定する必要がある場合や専門家に手続きを一任する場合には、数十万円もの費用がかかり、さらには毎月の報酬として本人の財産額に応じて月々数万円を延々と支払わなければなりません。

節約のために自分で手続きをするにも、財産管理、身上監護、任意後見監督人や家庭裁判所とのやり取りなど後見人の役割は多岐にわたります。手続きの大変さを知らない他の親族から財産を独り占めしているかのようにいわれ、ストレスを感じるなどその負担は決して軽くはありません。

成年後見制度がひどい制度といわれる理由(6)成年後見制度は解除できない

成年後見制度は、裁判官や複数医師の立ち会いで本人が解除を希望する意思表示を示せば解除できますが、認知症が進行した方の意思能力が回復することは考えにくいため、実質的には1度利用すれば本人が亡くなるまで続く制度だといえます。

昨今は、地域包括支援センターや介護施設および金融機関や保険会社ならびに不動産会社などから成年後見制度の利用を勧められる機会が増えています。しかし、制度のリスクや費用と手間などの注意点を十分に理解せずに開始してしまえば、制度を途中解約できずに後悔することになるかもしれません。

成年後見制度で実際にあったトラブル事例

成年後見を利用して実際にあったトラブル事例を6つご紹介します。

成年後見制度のトラブル事例(1)突然親と面会できなくなった

法定後見の申立は4親等内の親族であれば単独で行えるため、財産の流失を恐れた誰かが勝手に後見制度を開始してしまう場合が考えられます。その結果、意見が合わない親族が任意後見人に選任され、対立する親族を親と面会させないなど、後見制度が悪用される可能性があります。

成年後見制度のトラブル事例(2)法定後見人に本人の預貯金や年金を取り上げられた

後見人は、本人の財産を同居親族であっても明確に切り離して管理します。例えば、夫に後見人を付ければ、夫の預貯金も年金も後見人名義の口座で管理され、同居親族の生活に充てることができなくなります。

つまり、今まで、妻は夫の財産や年金で扶養されて生活してきたとしても、後見制度が発効後は夫の年金で生活できなくなるなど家族の生活を一変させる可能性があります。

成年後見制度のトラブル事例(3)家族への生前贈与が難しい

これまで度々親族へお祝いをする習慣があった方でも、成年後見人が付くと生前贈与は原則として認められなくなります。進学資金や結婚祝いおよびマイホーム資金などの生前贈与は本人に直接利益がある行為ではないため、適切な財産の用途でないと解されてしまいます。

これにより、相続税の節税準備である生前贈与や生命保険の加入および不動産投資事業なども行えなくなります。

成年後見制度のトラブル事例(4)法定後見人が何も仕事をしない

法定後見人の中には、報酬を受け取りながら後見人としての仕事を何もしない人がいる場合があります。後見人の報酬は業務量ではなく本人の財産額に比例するため、資産を現金化して預貯金を増やしたり、本人の身辺介護をする親族の出費を無駄遣いだとして厳しく抑制するなど、財産を目減りさせない管理に執心する後見人がいます。

しかし、後見人や後見人監督人の仕事の質を一般人が判断するのは難しく、報酬だけが目当ての悪質な後見人でも簡単に解任できないという制度上の問題もあります。

成年後見制度のトラブル事例(5)後見人や後見監督人の報酬が高額すぎる

後見人や後見監督人には月々数万円の報酬を支払いますが、本人の資産額が大きい場合には月々の報酬も高額になるのが一般的です。しかも、報酬は本人が亡くなって後見が終了するまで支払い続けなければならないため、多額の報酬を支払い続けることは大きな負担になります。

成年後見制度のトラブル事例(6)後見人の横領リスクがある

図表10は、後見人等による不正事例です。

図表10


※裁判所 後見人等による不正事例

成年後見制度では、後見人が財産を使い込むなどの不正がときどき起こります。件数も被害額も少なくはなりましたが、制度を利用した横領事例が一定の確率で起こることは否めません。

成年後見制度を使うべきか否かの判断基準

成年後見制度が向いている方とそうでない方の判断基準について解説します。

成年後見制度を使うべきケース

成年後見制度が向いている方は下記の状況です。

●介護施設や医療機関の契約を代行したい

●詐欺被害を未然に防ぎたい

●本人が行った契約を取り消せる状態にしたい

●遺産分割協議などの相続手続きを行いたい

●一部の親族の勝手な財産の浪費を防ぎたい

●法律の専門家に財産の管理を任せたい

 

成年後見制度を使うべきでないケース

成年後見制度が利用すべきでない方は下記の状況です。

●財産の管理や使用を同居親族だけで決めたい

●成年後見人の報酬などのコストを抑えたい

●財産を親族へのお祝いや資金援助で使いたい

●生前贈与その他の相続対策に取りかかりたい

●家族信託など別の方法で財産管理をしたい

 

成年後見制度を理解し、代替制度と比較検討しよう

成年後見制度は、判断能力が低下した本人のために信頼できる成年後見人が財産を保全する安心の制度です。しかし、安全が優先されるあまり融通が利かず使い勝手が悪い面があります。

また、手続き開始から制度利用まで数ヶ月かかり、いったん開始した後見は本人が死亡するまで終わりません。本人が生活資金を援助して扶養していた方であっても、制度開始に伴って本人の預貯金が自由に利用できなくなるため、生活が一変する可能性があるのです。

さらに、手続き自体の費用は少額ですが、専門家が成年後見人や成年後見監督人に選任された場合の長期間の報酬負担など、事前に十分理解して家族信託などの代替制度と比較して慎重に検討しましょう。

出典

法務省 Q3~Q15 「法定後見制度について」
法務省 成年後見制度・成年後見登記制度 成年後見制度 成年後見登記制度

裁判所 成年後見関係事件の概況 ―令和4年1月~12月―
日本公証人連合会 公証事務 4任意後見契約
厚生労働省 成年後見制度の現状
裁判所 成年後見人等の報酬額のめやす
裁判所 後見人等による不正事例

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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