更新日: 2024.04.22 遺言書

公正証書遺言とは? 作成手順や必要書類、費用、メリット・デメリットを解説

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

公正証書遺言とは? 作成手順や必要書類、費用、メリット・デメリットを解説
「公正証書遺言」とは、遺言者の最後の法律行為であり、その意思を正確かつ確実に伝える手段です。この記事では、公正証書遺言の意義、必要な手続きと書類、そして作成にかかる費用について詳しく解説しています。
 
相続に関する紛争を避け、遺言者の意思をしっかりと実現するための強力なツールとして、公正証書遺言の作成が推奨されています。
 
遺言の作成手順から保管方法、更には専門家に依頼する際のメリットとデメリットなど、公正証書遺言に関することについて解説していますので、遺言書作成を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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公正証書遺言とは?

公正証書遺言は、遺言を遺す人が公証人に口頭で説明し、公証人がパソコンで文章を作成し、遺言者と立会人2名が同席して、原則、公証人役場で作成します。
 
作成された公正証書遺言は原本が、遺言者の死亡後50年、証書作成後140年または遺言者の生後170年間まで公証人役場で保存されます。公正証書遺言を詳しく知るために、公正証書遺言の意義、自筆証書遺言との違いと合わせて解説します。
 

なぜ公正証書遺言が必要なのか

公正証書遺言は、公証人が作成する公的書類のため、作成の要件は厳しいものの、法的に正確で、遺言者の意思を明確に伝える手段として最適です。
 
遺言書が効力を発揮するのは遺言者が亡くなった後です。ということは、遺言を書いた本人は既に亡くなってしまっているので、遺言書の内容が曖昧で不正確だったりすると、遺言書で財産を誰がどれだけ受け取れるか分からない、という事態が起こり得ます。
 
しかし、公正性証書遺言の場合には裁判官・検察官・弁護士のOBである公証人が作成する公的書類ですので、法的に無効になったり、内容が曖昧だったり、というおそれはほぼ皆無です。そのため、遺言書を作成する場合には公正証書が推奨されています。
 

公正証書遺言と自筆証書遺言の違い

公正証書遺言と自筆証書遺言の主な違いは、次のとおりです。
 
「自筆証書遺言」は自分1人でどこでも作成できますが、「公正証書遺言」は原則、公証人役場で公証人と立会人2名以上の立会いのもとで作成します。また、遺言の内容は自筆証書遺言の場合には全て遺言者が手書きしなければなりませんが、公正証書遺言は文章を公証人が全て印刷してくれるので、署名と押印をするだけで作成できます。
 
そして自筆証書遺言は作成した原本一部しか存在しませんが、公正証書遺言は遺言者と立会人が署名・押印した原本は公証人役場で保管され、作成時には正本とその写しである謄本が渡されます。正本と謄本には公証人の認証が施され、どちらも遺言書として法的効力を持ちます。
 
公正証書遺言は、遺言者の死後は特に手続き不要で使用可能ですが、自筆証書遺言については家庭裁判所で検認手続きを行う必要があります。
 
表にすると次のとおりです。
 
図表1

自筆証書遺言 公正証書遺言
遺言書作成の要件 遺言者1人で作成できる 公証人と立会人2名が必要
作成場所 どこでも可能 原則、公証人役場で作成。
遺言者が外出できない等の事情のあるときに限り出張してもらえる(出張料が加算されます)
遺言書の複製等 原本のみ(コピー不可) 原本は公証人役場に保管され、公証人が認証した正本・謄本が渡される
遺言者の死後の手続き 家庭裁判所で検認手続きや、法務省の自筆証書遺言保管制度などの利用をしないと、効力が認められない 特に手続き不要で法的効力がある

※筆者作成
 

公正証書遺言の信頼性

公正証書遺言は、遺言としての信頼性が高く、遺言の実行を確実にするための最も強力な形式です。
 
遺言内容に対する紛争が起こった場合においても、公正証書遺言は公的証書としての証拠能力があるために、効力を争ってもまず無効になることはありません。また、法律の専門家である公証人が作成しているため、遺言内容について法的な不備も起こり得ません。このように、公正証書遺言には絶対的な信頼性があります。
 

公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言の作成手順は次のとおりです。
 

STEP1:公証人との初回相談

遺言を作成する前に、公証人役場で公証人と相談を行います。この時点で、遺言制度、必要な書類、手続きの流れ、などについて説明を受けます。なお、公証人役場は全国に約300ヶ所あり、公証人は約500人います。
 
どこの公証人役場で作成するかについては制限がありませんので、最寄りの公証人役場や、勤務先の近くなど、どこでも可能です。ただし、相談をした後にはその公証人役場で遺言書を作成することになるので、遺言書を作成する予定の公証人役場で相談をしましょう。
 

STEP2:必要書類の準備

遺言を作成するためには、遺言者の発行3ヶ月以内の印鑑証明書、資産リスト、不動産の登記事項証明書、評価証明書、などの書類が必要になります。これらの書類は、遺言書を正確に作成するために必要となります。必要書類の詳細は後述します。
 

STEP3:遺言内容の草案作成

遺言者は、自分の意思を反映した遺言の草案を作成します。
 
遺言書に書く内容は法律行為に該当する本文と、法的には効力のないメッセージなどにあたる付言事項に分かれます。本文については法律上書けることと書けないことがあり、たとえば「長男の〇〇は令和××年までに今の配偶者と離婚すること」といった本人の意思に反したような内容は書けません。
 
しかし、付言事項には「家族仲良く暮らしてください」などのお願いや、思い出について書き残すことができます。
 
草案について、公証人からどのように書けば良いかといったアドバイスを受けられるので、最初の相談の際にある程度方向性を相談しておくと、草案作成もスムーズに進めることができます。
 

STEP4:遺言書の草案と必要書類の提出

草案が完成したら、財産リストや不動産の書類と一緒に公証人へ提出します。
 
公証人は提出された草案と提出書類をもとに、法的に有効な形式で遺言書の文章を清書します。民法第962条の2では、「遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。」と規定されており、遺言者が公証人に口頭で遺言内容を説明した上で遺言書を作成する、という規定になっていますが、実務上はあらかじめ書面を公証人が準備しておきます。
 

STEP5:遺言書の作成

遺言書作成当日は、公証役場に公証人、遺言者、立会人2名以上が同席して作成します。この場には相続に関係する可能性のある推定相続人、遺言書で財産をもらう予定の方など、利害関係者が同席できないので、席を外すこととなります。
 
準備ができたら、遺言者本人から公証人に対し、証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げます。
 
公証人は、それが判断能力を有する遺言者の真意であることを確認した上で、あらかじめ準備していた公正証書遺言の原本を、遺言者および証人2名に読み聞かせて、遺言の内容に間違いがないことを確認してもらいます(内容に誤りがあれば、その場で修正することもあります。)。
 
遺言の内容に間違いがなければ、遺言者および証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印します。遺言者は実印で押印し、発行3ヶ月以内の印鑑証明書を添付します。そして公証人も公正証書遺言の原本に署名し、職印を押捺することによって、公正証書遺言が完成します。
 

STEP6:遺言書の保管

公証証書遺言の作成が完了すると、署名した原本は公証人役場に保管されます。
 
これにより、遺言書が紛失または改ざんされるリスクがほぼ無くなります。また、遺言者には原本をコピーして公証人が認証した正本と謄本が渡されます。どちらも法的効力は変わらず、遺言者が亡くなった後にはそのまま使用することができます。
 

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公正証書遺言の作成に必要な書類一覧

公正証書遺言を作成するために必要な書類は次のとおりです。公正証書遺言を作成する際は、遺言者が自分のどのような財産を誰に相続させるのかを明確にして遺言書に記載するので、財産や人を特定するために公的書類を準備します。
 

公正証書遺言の作成に必要な書類1:本人確認書類

遺言を作成する際には、遺言者本人であることを証明するための書類が必要です。通常、この本人確認には印鑑登録証明書を提出します。その上で、遺言書には実印を押印します。
 

公正証書遺言の作成に必要な書類2:財産を与える相手の住民票や、推定相続人の場合は戸籍等

遺言書には誰にどんな財産を遺すか記載しますので、遺言者の死後に誰が見ても分かるように、住民票等の公的書類が必要です。
 
財産を与える相手が推定相続人の場合には、関係性が分かるように「戸籍謄本または抄本」が必要となります。また、推定相続人以外に財産を遺したい場合には、その相手の住民票を提出します。
 

公正証書遺言の作成に必要な書類3:資産の分かる資料と資産リスト

遺言書に記載する資産については、不動産は法務局で取得できる登記記録と、不動産価格が分かる固定資産税評価証明書を提出します。預貯金・株式は金融機関名・支店名・口座の種類・口座番号が分かるように、通帳のコピーや明細書が必要です。
 
誰にどの財産を遺したいのかを整理して、資産リストにしておくと公証人への提出の際に説明がしやすくなり、草案の作成もスムーズに行えます。
 
全ての財産を特定の誰かに遺す場合でも、遺言書が使われる際には遺言者当人は亡くなっており、財産を受け取る人も高齢になっていたりすると、財産の特定(銀行口座や不動産の所在を探す)が難しくなっているおそれがありますので、財産は明記しておいた方が良いでしょう。
 

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公正証書遺言の作成に必要な費用

公正証書遺言の作成には、公証人に支払う手数料がかかります。また、後述しますが弁護士や司法書士に依頼して公正証書遺言を作成する場合には、公証人手数料の他に弁護士や司法書士に支払う費用もかかります。
 

公正証書遺言の作成に必要な費用1:公証人手数料

公正証書遺言作成にかかる公証人手数料は、公証人手数料令という政令で決められています。財産を受け取る人ごとに下記の手数料がかかり、全体の財産が1億円以下の場合には「遺言加算」として1万3000円が加算されます。
 
図表2

目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 1万1000円
500万円を超え1000万円以下 1万7000円
1000万円を超え3000万円以下 2万3000円
3000万円を超え5000万円以下 2万9000円
5000万円を超え1億円以下 4万3000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

※e-Govポータル 公証人手数料令第9条別表に基づいて作成
 

公正証書遺言の作成に必要な費用2:その他の加算

公正証書遺言は既に説明のとおり、原本、正本および謄本を各1部作成し、原本は、法律に基づき公証役場で保管し、正本および謄本は、遺言者に交付されるので、その手数料も必要になります。
 
原本については、その枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書きの公正証書の場合は3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250 円の手数料が加算されます。また、正本および謄本の交付については、枚数1枚につき250 円の割合の手数料が必要となります。
 
また、遺言者が病気または高齢等のために体力が弱り、公証役場に赴くことができず、公証人が、病院、自宅、老人ホーム、介護施設等に赴いて、公正証書遺言を作成する場合には、図表2の手数料の50%が加算され、更に公証人の日当と、現地までの交通費といった出張費も加算されます。
 

公正証書遺言の作成に必要な費用3:立会人費用

公正証書遺言の作成には、立会人が2名以上必要で、自分で手配できない場合には公証人役場で紹介してくれることがあります。その場合には、立会人に日当を支払う必要があります。
 
推定相続人や相続人になる可能性のある方、遺言書で財産をもらう方、それらの人の利害関係者は立会人にはなれません。利害関係のない友人などでも良いのですが、立会人には遺言書の内容を知られることになるので、面識のない第三者を公証人役場で紹介してもらうことが多いようです。
 

公正証書遺言を作成する際の注意点

公正証書遺言を作成する際の注意点は次のとおりです。
 

公正証書遺言を作成する際の注意点1:遺言の内容が法律に合致していること

遺言書でできることは、民法で規定されています。代表的なものとしては遺産分割方法の指定(誰にどれだけ財産を与えるかを指定する)、5年以内の遺産分割の禁止、認知、などがあります。これは遺言書でできることを限定して書いている限定列挙、という記載方法です。この方式で書かれている場合、法律に書いていないことを遺言書で行うことはできません。
 

公正証書遺言を作成する際の注意点2:遺言書には明確で正確な表現を使う

遺言書は、遺言者の意思を明確かつ正確に表現する必要があります。不明瞭な表現をしてしまうと、遺言書を使う際に紛争の原因となることがあります。しかし、公正証書遺言を作成する際には、法律のプロである公証人が文言を作成してくれますので、後々紛争になるような心配はありません。
 

公正証書遺言を作成する際の注意点3:遺言書の保管方法と後継者への情報共有

公正証書遺言を作成すると、原本は公証人役場に保管され、正本と謄本が遺言者に渡されます。
 
封印などは特にされていないので、そのまま保管していると誰でも見ることができてしまいます。理想は、遺言者が亡くなるその日までは誰にも見つからず、亡くなった日に遺言書が発見されることです。しかし、そのようなことは現実的ではありません。
 
実際には、遺言で財産を与える相手(後継者)に封印して渡しておく、貸金庫に保管しておいて自分が亡くなった後に取り出すように、と伝える方法などがあります。貸金庫は相続人全員の立会いが必要な銀行もありますので、できれば後継者に封印して渡しておくのがベストでしょう。
 
また、弁護士や司法書士に預けておき、「自分が死んだら〇〇先生に必ず伝えて」と情報共有しておくという手段もあります。
 
どの方法でも、後継者や弁護士、司法書士が遺言者より先に亡くなることもあるので、100%確実ではありませんが、遺言者が亡くなった後に遺言書が発見できる方法を2つ以上は準備しておくと良いでしょう。
 

公正証書遺言を作成するメリット

公正証書遺言を作成するメリットは次のとおりです。
 

公正証書遺言を作成するメリット1.複雑な内容にも対応できる

寄付行為を行ったり、相続人以外への遺贈、相続人の廃除など、法律上複雑な内容についても、遺言者の希望する草案に従って、公証人が遺言書の文言を作成してくれるので、複雑な内容でも遺すことができます。
 

公正証書遺言を作成するメリット2.法的効力の担保

公正証書遺言は、法的効力が担保されており、原則、記載した内容が確実に実現されます。一度作成しておけば原本は公証人役場に保管されるので紛失や改ざんされる心配はありません。
 
遺言作成時に受け取った正本・謄本も、万が一紛失してしまったとしても、遺言者が存命の間は遺言者の請求により謄本を再発行できます。
 
また、遺言者が亡くなった後に遺言書が見つからなくても、最寄りの公証人役場から過去に遺言書を作成しているかどうかを検索することができ、作成していれば公正証書遺言の謄本を相続人から請求することができます。(※謄本も正本と効力は変わりません)
 

公正証書遺言を作成するメリット3.公正証書遺言の公文書としての効力と紛争防止

公正証書遺言は公文書であり、公文書は文書の成立について真正であるとの強い推定(形式的証明力)が働きます。公正証書遺言は公証人が遺言者の依頼により作成した公文書であり、公正の効力が生じ、反証のない限り、完全な証拠力があります。したがって、遺言書の有効性について争われるおそれはほぼ皆無で、紛争の防止に役立ちます。
 

公正証書遺言を作成するメリット4.手続きの迅速化

公正証書遺言は、自筆証書遺言のように家庭裁判所で検認手続きを行う必要がなく、遺言者が亡くなった後にはすぐに効力が発生するので、名義変更などの手続きを迅速に行うことができます。
 

公正証書遺言を作成するデメリット

公正証書遺言にもデメリットはあります。
 

公正証書遺言を作成するデメリット1.費用がかかる

公正証書遺言の作成には費用がかかります。
 
この費用は、財産の多寡と遺言内容、立会人を依頼するか等によって変わります。しかし、遺言を遺さなかったために相続人同士で調停や裁判になった場合のことを考えると、費用をかけて紛争を防ぐことも1つの解決手段かもしれません。
 

公正証書遺言を作成するデメリット2.各種手続きと時間が必要

簡単な内容であれば思い立った日に作成できる自筆証書遺言と違って、公正証書遺言の作成手続きは戸籍謄本や登記簿などの書類収集、草案の作成、作成日には公証人役場へ行く、と手続きにお金と時間がかかります。
 

公正証書遺言を作成するデメリット3.立会人が2名以上必要

公正証書遺言の作成には、2名以上の立会人が必要です。立会人には要件があり、推定相続人や遺言書で財産を受け取る人、そしてその人たちの家族など利害関係人は立会人になることができません。ご近所の知人・友人などに依頼することもできますが、遺言書の内容を知られてしまうので現実的には難しいでしょう。
 
しかし、公証人役場で立会人を紹介してもらったり、弁護士・司法書士に依頼して公正証書遺言を作成する場合には、その弁護士・司法書士に依頼することもできます。
 

公正証書遺言は専門家に依頼すべき?

公正証書遺言は公証人役場で相談して作成することができますが、弁護士や司法書士といった専門家に相談をして、書類収集や草案の作成、公証人役場とのやり取りを代行してもらうこともできます。勿論、その費用はかかりますが、依頼することによるメリット・デメリットを詳しく解説します。
 

公正証書遺言の作成を専門家に依頼するメリット

公正証書遺言の作成を弁護士・司法書士といった専門家に依頼するメリットは幾つかありますが、大きいものとしては3つあります。それは、「紛争対策・相続税対策など専門家側から提案をしてくれる」「公証人役場との面倒な手続きを全て代行してもらえる」「遺言執行者の依頼ができる」ということです。
 
公正証書遺言の作成について、公証人に相談できると紹介しましたが、基本的には遺言者が遺言書に遺したい内容について公証人がアドバイスをくれるというものなので、積極的に紛争対策や相続税対策などの提案はしてもらえません。
 
しかし、弁護士や司法書士といった専門家に依頼すると、分割方法についての提案や、遺留分対策、相続税対策といった幅広い内容について提案をしてもらえるので、幅広い選択ができます。
 
また、公証人役場へ提出する書類の準備や戸籍の取得、草案の作成、公証人役場とのやり取りも代行してくれます。専門家と面談で遺言書の方向性を決めておけば、依頼者は専門家と電話やメールなどでやり取りして、草案を確認すれば、後はお任せして、遺言作成当日に公証人役場に行くだけとなります。
 
また、立会人の手配も依頼できる上、概要を知っている専門家に立ち会ってもらえるととても安心です。
 
そして一番重要なメリットとしては、遺言執行者の依頼ができることです。遺言執行者とは遺言書に記載された内容を実現する人のことです。遺言執行者の指定は遺言書で行い、相続人を指定しても良いですが、遺留分の請求や紛争のおそれがある場合には弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者にしておくと、遺言内容を確実に実行してもらえます。
 
また、相続人がいないなどの事情で死後の葬儀や供養といった内容(※死後事務と言います)も誰かに依頼しなければならないときは、一緒に依頼できますのでとても頼りになります。
 

自分で公正証書遺言作成の準備をする場合のリスク

自分で公正証書遺言を作成する場合、公証人は基本的に、積極的な提案をしてくれないので、法律上の問題はなくとも、相続税対策や紛争対策が不十分な遺言書ができるおそれがあります。
 

専門家選びのポイント

専門家といっても幅広く、相続においても弁護士・司法書士・行政書士・税理士など職域が分かれています。更に、同じ弁護士でも相続専門の弁護士がいたり、交通事故や債務整理がメインの弁護士、行政書士の場合は更に細分化されていることもあります。
 
公正証書遺言の相談をする場合は、相続についての経験、専門知識、過去の実績を慎重に評価することが重要です。また、遺言執行者になってくれる弁護士や司法書士は、相続に関してかなり積極的に業務を行っているので、遺言執行者を依頼するかどうかは別としても、専門家として安心して相談できるでしょう。
 

公正証書遺言まとめ

公正証書遺言についてのまとめです。
 

公正証書遺言の重要性

公正証書遺言は、遺言者の意思を正確に反映し、その実行を法的に担保する最も確実な方法です。
 
遺言の内容についての紛争を防ぎ、相続手続きをスムーズに進めるために重要な役割を果たします。相続人同士の紛争を予防するためにも、遺言書は公正証書で遺すことを強くおすすめします。
 

公正証書遺言作成のプロセスの再確認

公正証書遺言を作成する際には、公証人または専門家とじっくりと相談し、遺言者自身の思いが実行できるように方向性を決めます。そして、戸籍謄本や財産リストを準備し、草案を作成して公証人役場へ提出します。
 
遺言書作成当日は、公証人役場へ出向き、2人以上の立会人同席で、公証人に遺言内容を伝え、あらかじめ準備されている遺言書へ署名・押印をして完成となります。遺言書が完成したら、原本は公証人役場で保管され、遺言書の正本と謄本を受け取り、大切に保管します。
 
公正証書遺言は作成には手間と時間がかかりますが、後々の紛争を防止するためには最良の方法です。遺言書を検討している方は、まず公正証書遺言での作成を検討してみてください。
 

出典

裁判所 遺言書の検認
法務省 自筆証書遺言書保管制度 11 よくあるご質問
日本公証人連合会 2 遺言
法務省 公証制度について
e-Govポータル 明治二十九年法律第八十九号 民法
e-Govポータル 平成五年政令第二百二十四号 公証人手数料令
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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